9回 尼崎の税理士が解説 | 相続税・空き家特例:同一被相続人からの相続財産は1回のみの適用です

9回 尼崎の税理士が解説 | 相続税・空き家特例:同一被相続人からの相続財産は1回のみの適用です
目次

はじめに

相続した空き家を売却する際、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下「空き家特例」)を活用することで、最大3,000万円の特別控除を受けることができます。

しかし、この特例には重要な制限があります。それは「同一の被相続人から相続した財産について、この特例は1回しか適用できない」という制限です。

今回は、土地を分割して複数年にわたり売却するケースを例に、この制限について解説いたします。

事例の概要

相続人Aさんが被相続人から居宅(建物と土地)を相続しました。その後、以下のような売却を行いました。

  • 今年:土地の2分の1を2,000万円で譲渡し、空き家特例を適用
  • 翌年:残りの土地2分の1を譲渡予定

このような場合、翌年の譲渡について空き家特例を適用することはできるのでしょうか。

空き家特例の重要な適用制限

空き家特例の適用要件の中に、次のような規定があります。

「同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと」 (租税特別措置法第35条第3項、国税庁タックスアンサーNo.3306)

この要件が意味することは、一度でもこの特例を使ってしまうと、同じ被相続人から相続した財産について、再度この特例を適用することはできないということです。

本事例における適用の可否

今年の譲渡(土地2分の1)

Aさんは今年、土地の2分の1を譲渡し、空き家特例を適用しました。他の要件を満たしていれば、この適用は可能です。

翌年の譲渡(残りの土地2分の1)

翌年に残りの土地2分の1を譲渡する場合、Aさんは既に今年、同じ被相続人から相続した財産について空き家特例を適用しています。

したがって、翌年の譲渡については、空き家特例を適用することはできません

実務上の重要なポイント

分割売却を検討する際の注意点

相続した不動産を複数回に分けて売却することを検討している場合、初回の売却で空き家特例を適用してしまうと、2回目以降の売却では特例が使えなくなります。さらに後で税金が有利になるように今年と翌年の選択変えもできません。

売却計画の重要性

空き家特例を最大限活用するためには、以下のような検討が必要です。

  • 一度にまとめて売却するか、分割して売却するか
  • 分割売却する場合、どの年にどの部分を売却するのが有利か
  • 他の特例(相続税の取得費加算など)との組み合わせ

相続開始から3年以内という期限

空き家特例は、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することが要件となっています。分割売却を検討する場合も、この期限内に完了させる必要があります。

他の注意事項

売却代金の合計額が1億円を超える場合

なお、空き家特例には「譲渡対価の額が1億円以下であること」という要件もあります。

複数回に分けて売却する場合、それぞれの売却代金の合計額で判定されます。初回の売却時点では1億円以下で特例を適用できても、後日の売却により合計額が1億円を超えた場合は、修正申告が必要となる場合がありますので注意が必要です。

まとめ

空き家特例は、同一の被相続人から相続した財産について、1回しか適用することができません。

相続した不動産を分割して売却する場合、初回の譲渡で特例を適用してしまうと、2回目以降の譲渡では適用できなくなります。

相続不動産の売却を検討される際は、売却方法や時期について事前に十分な検討を行い、税務上最も有利な方法を選択することが重要です。


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