同窓会や同業者団体、研究会、趣味の会など、メンバー共通の利益を目的とする団体の法人化を検討されている方は多いのではないでしょうか。「人格のない社団」のままでは銀行口座の開設や不動産の登記で不便が生じることもあります。
今回は、共益を目的とする団体の法人化について、税理士の視点から詳しく解説します。
共益型の法人化は一般社団法人がおすすめ
結論から申し上げると、共益を目的とする団体の法人化は「一般社団法人」が最適です。
共益活動は一般社団法人の本来の目的であり、収益事業を行わない限り、消費税・法人税・住民税所得割・事業税は課税されません(ただし住民税均等割は必要です)。
一般社団法人とNPO法人、どちらを選ぶべきか
これは実務で非常に多いご相談です。何十件も見てきましたが、**一般社団法人とNPO法人は「目的が似ているようで、実は運用の負担がまったく違う」**ため、最初の判断を間違えると後で大変なことになります。
シンプルな結論
判断基準は次の3点で十分です。
- 社会的信用・助成金・寄付を重視 → NPO法人
- 自由度・スピード・コスト・内部統制のしやすさ → 一般社団法人
- 税務メリット(非営利型)を確保したい → 一般社団法人の非営利型が最も扱いやすい
一般社団法人が向いているケース
以下に該当する場合は、一般社団法人をおすすめします。
- メンバー間の合意で柔軟に動きたい
- 理事の入れ替えなどガバナンス調整を簡単にしたい
- 会費ビジネス、セミナー、講師派遣、イベントなど収益事業も行う
- 行政の監督を受けたくない
- 報告書類の負担を軽くしたい
- スタートを早く、安くしたい
- 将来、非営利型(法人税法2条9号の2適用)で税務メリットを確保したい
税務・設立手続き・内部統制の観点から、もっとも扱いやすいのが「一般社団法人 非営利型」です。
NPO法人が向いているケース
一方、以下の場合はNPO法人が適しています。
- 行政、自治体、企業協賛から「NPOであること」を要求される
- 公益性を強く打ち出す必要がある
- 助成金・補助金を積極的に取りたい
- 寄付を募る活動が主軸
- 確固たる会員制度とガバナンスを確立したい
信用は高く見られますが、事務負担は圧倒的に重いことを覚悟してください。
認定NPO法人の寄附金控除について
NPO法人を選ぶ大きな理由の一つに「認定NPO法人」へのステップアップがあります。認定NPO法人になると、寄付者が所得税・住民税の寄附金控除を受けられるため、寄付を集めやすくなります。
一方、一般社団法人(非営利型を含む)への寄付は、原則として寄附金控除の対象になりません。寄付を主力とする活動を考えている場合は、この点が重要な判断材料となります。
ただし、認定NPO法人になるためには、PST(パブリック・サポート・テスト)などの厳しい要件を満たす必要があり、取得までに数年かかることも珍しくありません。
実務負担の違い|ここが最大のポイント
NPO法人は「行政の監督」が厳しい
NPO法人には以下の義務があります。
- 所轄庁への「事業報告書」「活動計算書」「財産目録」「社員名簿」を毎年提出(公開義務あり)
- 定款変更のたびに所轄庁の認証・届出が必要
- 理事の選任・解任にも一定のプロセス
- 活動内容は20分野のいずれかに限定
自由度が低く、非営利活動に特化している方向けの制度です。
一般社団法人は極端に自由度が高い
一般社団法人には以下のメリットがあります。
- 所轄庁の監督なし
- 毎年の提出書類なし
- 定款変更は「登記のみ」で完結
- 収益事業の制約なし
- 非営利型にすれば税務もNPOと遜色ない(法人税法2条9号の2)
実務コストが圧倒的に軽く、事業展開しやすいのが特徴です。
税務面の違い
一般社団法人(非営利型)の税務
- 法人税の課税は収益事業34業種のみ
- 会費・寄付・非収益部分は非課税
- 解散時の残余財産は国・地方公共団体・公益法人等へ帰属が必要(法人税法2条9号の2の要件)
NPO法人の税務
- 原則、法人税は「収益事業34業種」のみ
- 寄附金控除(認定NPO)を狙うなら別途厳しい要件あり
税務メリットはほとんど同じです。違うのは、認定NPOを狙えるかどうかだけ。それ以外はNPOである必要は薄いと言えます。
収益事業34業種とは
「収益事業」とは、法人税法施行令第5条で定められた34種類の事業を指します。具体的には以下のような事業が該当します。
- 物品販売業:書籍・グッズの販売など
- 不動産貸付業:会議室の貸出、駐車場経営など
- 請負業:調査研究の受託、講師派遣など
- 技芸教授業:セミナー・研修会の有料開催など
- 席貸業:会場貸出など
これらの事業を行った場合は、非営利型法人であってもその部分については法人税の申告・納付が必要です。ただし、会費収入や寄付金など収益事業に該当しない収入は非課税のままです。
設立手続きと費用の目安
一般社団法人の設立手続き
一般社団法人の設立は、以下の流れで進めます。
- 定款の作成
- 公証役場での定款認証(認証手数料:約5万円)
- 設立登記申請(登録免許税:6万円)
- 法人設立届出書の提出(税務署・都道府県・市区町村)
合計費用の目安は11万円程度です。専門家に依頼する場合は、別途報酬がかかります。
NPO法人との比較
NPO法人は設立時の登録免許税が非課税というメリットがありますが、所轄庁への申請から認証まで3〜4ヶ月かかるのが一般的です。一般社団法人は登記完了まで2〜3週間程度で済むため、スピード重視なら一般社団法人が有利です。
実務経験からの結論
30年以上の実務経験から、私はこう感じています。
9割のケース → 一般社団法人で十分(非営利型)
その理由は以下のとおりです。
- スピード感が違う(登記だけで完了)
- 収益事業との両立が容易
- ガバナンス調整が現実的
- 行政監督がないので後で自由に設計変更できる
- 費用と労力が圧倒的に軽い
残り1割 → NPO法人が「必須」のケース
以下の場合のみ、NPO法人を選択すべきです。
- 助成金がNPO法人限定
- 行政と連携する公的色の強い活動
- 「寄付を集めること」が中心
- 認定NPOにステップアップしたい
判断のための3つの質問
迷ったときは、以下の3つの質問に答えてください。これだけで方向性が決まります。
【質問1】寄付と助成金を主力にしますか?
- YESなら → NPO法人
- NOなら → 一般社団法人
【質問2】事務負担を最小にして、事業展開を柔軟にしたいですか?
- YESなら → 一般社団法人(非営利型)
【質問3】外部の人から「NPOの信用が必要」と要求されますか?
- YESなら → NPO法人
- NOなら → 一般社団法人
共益型一般社団法人の要件
共益活動を行うことを目的とする一般社団法人として認められるためには、以下の7つの要件を満たす必要があります。
- 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること
- 定款等に会費の定めがあること
- 主たる事業として収益事業を行っていないこと
- 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと
- 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと
- 上記1から5及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと
- 各理事について、その理事及びその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること
理事の構成要件
理事は最低3名必要
各理事について「その理事及びその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること」という要件があるため、理事会の設置の有無に関係なく、理事は少なくとも3名以上必要です。
親族等の範囲
親族等には以下が含まれます。
- 当該理事の配偶者
- 当該理事の三親等以内の親族(血族及び姻族)
- 当該理事と婚姻届を提出していないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
- 当該理事の使用人
- 1から4に掲げる者以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産により生計を維持している者
- 3から5に掲げる者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は三親等以内の親族
なお、当該一般社団法人の経営に従事している者は、当該一般社団法人の理事とみなされます。
非営利型一般社団法人の定款ひな形
以下は、税務上の「非営利型一般社団」の要件(法人税法2条9号の2)を満たす定款のひな形です。公証役場で通る水準の内容となっています。
一般社団法人〇〇協会 定款(非営利型)
第1章 総則
第1条(名称) 当法人は、一般社団法人〇〇協会(以下「当法人」という。)と称する。
第2条(事務所) 当法人は、主たる事務所を〇〇県〇〇市に置く。
第3条(目的) 当法人は、〇〇分野における知識の普及、会員及び地域社会の利益向上を図るとともに、公益的な活動を推進することを目的とし、次の事業を行う。
- セミナー、講習会、研修会等の開催
- 調査研究及び資料の収集並びに情報提供
- 地域社会との連携協力
- 会員相互の交流・共益促進活動
- その他当法人の目的達成に必要な事業
第4条(公告方法) 当法人の公告は、官報に掲載して行う。
第2章 社員
第5条(社員の資格) 当法人の目的に賛同する者で、所定の手続きを経て入会を承認された者を社員とする。
第6条(入会) 入会を希望する者は、所定の申込書を提出し、理事会の承認を受けなければならない。
第7条(会費) 社員は、社員総会の決議により定める会費を納入しなければならない。
第8条(退会) 社員は、退会届を提出することにより任意に退会できる。
第9条(除名) 社員が次のいずれかに該当する場合は、社員総会の決議により除名することができる。
- 定款その他当法人の規程に違反したとき
- 当法人の名誉を著しく傷つけたとき
- その他社員として不適当と認められるとき
第3章 社員総会
第10条(構成) 社員総会は、すべての社員をもって構成する。
第11条(権限) 社員総会は、次の事項について決議する。
- 定款の変更
- 役員の選任および解任
- 事業計画および予算
- 事業報告および決算
- 会費の額
- その他理事会が付議した事項
第4章 役員
第12条(役員の設置) 当法人に次の役員を置く。
- 理事 3名以上
- 監事 1名以上
第13条(役員の選任) 理事及び監事は社員総会で選任する。
第14条(理事の職務) 理事は理事会を構成し、当法人の業務を執行する。
第15条(代表理事) 理事会は、理事の中から代表理事を選定する。
第5章 会計
第16条(事業年度) 当法人の事業年度は、毎年〇月1日に始まり翌年〇月31日に終わる。
第17条(剰余金の分配の禁止) 当法人は、いかなる場合も剰余金の分配を行わない。 ※非営利型法人の絶対要件
第18条(残余財産の帰属) 当法人が清算をするときに残余財産がある場合、社員総会の決議をもって、国、地方公共団体、公益社団法人または公益財団法人、一般社団・一般財団で非営利型法人に該当するもののいずれかに帰属させるものとする。 ※ここが最重要:非営利型法人の税務要件
第6章 附則
第19条(設立時社員) 当法人の設立時社員は次のとおりとする。(住所・氏名を記載)
第20条(施行日) この定款は、当法人の成立の日から施行する。
非営利型法人の税務要件チェックリスト
法人税法2条9号の2に基づく「非営利型一般社団法人」の要件を満たしているか、以下のチェックリストで確認してください。
【1号】剰余金の分配禁止
チェック項目
- 定款に「剰余金の分配を行わない」旨の明文規定がある
- 実際に剰余金の分配をしていない
- 会員・社員・理事に利益分配的な金銭給付をしていない
注意点
- 会費を超える金銭給付
- 業務委託費名目での過大な支払い → 「実質的な分配」と判断される危険あり
【2号】解散時の残余財産の帰属先が限定されている
チェック項目
- 定款に「残余財産は国・地方公共団体・公益法人・非営利型一般社団等へ帰属」と明記されている
- 社員・理事・特定者へ帰属させる規定がない
- 分配可能な者の範囲が条文どおりに限定されている
注意点
- 「社員総会が決める」のみはNG(帰属先が限定されないため)
- 社員に分配 → 即アウト(営利法人扱い)
【3号】特定の者に特別の利益を与えない
チェック項目
- 特定の社員・理事・その親族へ利益供与する規定が定款にない
- 過度な役員報酬・高額な業務委託などがない
- 特定企業との癒着(利益誘導)がない
- 規程が合理的で公平
注意点(よくある指摘)
- 理事への高額役員報酬
- 役員関係者の会社へ相場以上の支払い
- 会員の一部だけに経済的利益を供与
【4号】理事のうち3親等内親族が、理事総数の3分の1以下
チェック項目
- 理事総数に対して3親等内親族(配偶者含む)が1/3以下
- 例:理事3名の場合、親族は1名まで
注意点
- 社員総会で形式上3名理事を置いても「実態が親族支配」だとNG
- 実質判断される(役員会議録の内容・議決の実態)
【5号】収益事業が主たる事業ではない
チェック項目
- 主たる収入が寄附金・会費・講座受講料など
- 明らかな営利事業(不動産賃貸、物品販売など)が中心ではない
- 収益事業を行う場合は、法人税申告(収益事業課税)の体制がある
注意点
- 持続的な物品販売
- 不動産賃貸 → 「収益事業」として別途課税されるが、非営利型の資格そのものは通常失われない
【6号】その他、営利を目的としないことが明らか
チェック項目
- 定款の目的が「公益性・共益性」を含んでいる
- 商業的利益追求が主目的になっていない
- 会員の福利厚生や共益活動が中心
- 外形的にも営利目的が見えない(広告ビジネス等が中心でない)
法人化後の税務申告について
非営利型でも申告が必要なケース
非営利型一般社団法人であっても、収益事業を行った場合は法人税の確定申告が必要です。例えば、以下のような場合です。
- 有料セミナーを開催した(技芸教授業)
- 会議室を有料で貸し出した(席貸業)
- 書籍やグッズを販売した(物品販売業)
申告が必要な場合は、事業年度終了後2ヶ月以内に法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の申告書を提出します。
申告不要のケース
収益事業を一切行っていない場合は、法人税の申告は不要です。ただし、法人住民税の均等割(年額約7万円)は非営利型であっても納付が必要ですのでご注意ください。
総合判定のポイント
- 1号・2号は絶対条件(定款で担保)
- 3号〜6号は実態判断
すべての要件をクリアできれば、税務上の非営利型法人として認められ、収益事業課税のみの優遇を受けることができます。
まとめ
業界団体・趣味の会など共益を目的とする団体の法人化は、一般社団法人(非営利型)が最も実務的です。設立が簡単で、行政への報告義務もなく、税務メリットもNPO法人と遜色ありません。
ただし、非営利型の税務要件を満たすためには、定款の作成段階から適切な設計が必要です。特に「剰余金の分配禁止」「残余財産の帰属先限定」「理事の親族要件」については、慎重に検討してください。
また、設立後も収益事業を行う場合は法人税申告が必要となりますので、税務体制の整備も忘れずに行いましょう。
法人化をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
一般社団法人とNPO法人どちらが良い?共益目的の法人化を尼崎の税理士が解説|税理士法人松野茂税理士事務所
一般社団法人とNPO法人どちらが良い?共益目的の法人化を尼崎の税理士が解説|税理士法人松野茂税理士事務所(お問い合わせ)
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