定期同額給与の実務で最も誤解されやすいのが、「いつからいつまで同額でなければならないのか」という期間の考え方です。
今回は、定期同額給与において同額が求められる期間について、4月から翌3月決算法人を図解とともに分かりやすく解説します。
基本原則:2つの期間で同額であればOK
定期同額給与は、事業年度全体を通じて同額である必要はありません。
重要なのは、以下の2つの期間それぞれで同額であることです。

① 期首から定時改定まで同額
② 定時改定から期末まで同額
この2つの期間それぞれで同額であれば、①と②で金額を増額又は減額しても定期同額給与となります。
具体例で理解する
【ケース1】期首から増額改定

判定:OK
- ①の期間(4月・5月):50万円で同額 ✓
- ②の期間(6月~3月):60万円で同額 ✓
【ケース2】期首から減額改定

判定:OK
- ①の期間(4月・5月):50万円で同額 ✓
- ②の期間(6月~3月):25万円で同額 ✓
【ケース3】期首に増額、さらに定時改定で増額

判定:OK
- ①の期間(4月・5月):60万円で同額 ✓
- ②の期間(6月~3月):70万円で同額 ✓
重要ポイント
1. 期首改定と定時改定は両立できる
期首から増額または減額し、さらに期首3ヶ月以内の定時改定で再度増額または減額することも可能です。
要件:
- ①期首から定時改定までの各月が同額
- ②定時改定から期末までの各月が同額
この2つを満たせば、①と②で金額が異なっても定期同額給与として認められます。
2. 定時改定は「期首3ヶ月以内」が条件
定時改定として認められるのは、事業年度開始の日から3ヶ月を経過する日までに行われた改定のみです。
3月決算法人の例:
- 期首:4月1日
- 3ヶ月経過日:6月30日
- したがって、6月30日までに改定すればOK
3. 定時改定後の期中改定は原則NG
定時改定を行った後、さらに期中(9月、12月など)で改定した場合、増額分は損金不算入となります。
期首改定のタイミング
期首改定は、正確には「期首に改定」というよりも、前期末の3月に行われた改定が、新年度の4月から適用されるというケースが一般的です。
実務の流れ:
- 3月(前期末)に取締役会で4月からの改定を決議
- 4月(新期首)から新しい金額で支給開始
- これが「期首改定」として扱われる
まとめ
定期同額給与の「同額期間」は以下の通りです。
✓ ①期首から定時改定まで:各月同額であること
✓ ②定時改定から期末まで:各月同額であること
✓ ①と②で金額が異なっても問題なし
✓ 定時改定は期首3ヶ月以内に限定
✓ 定時改定後の期中改定は原則不可
この期間の考え方を正しく理解することで、役員報酬の改定をより柔軟に、かつ適法に行うことができます。
次回予告
次回は「定時改定のタイミング」について、当月改定と翌月改定の違い、支給日との関係など、実務でよくある疑問点を詳しく解説します。
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