みなし大法人が株主にいたら要注意 中小法人に該当しても中小企業者の特例が使えないケース | 尼崎の税理士が解説

みなし大法人が株主にいたら要注意 中小法人に該当しても中小企業者の特例が使えないケース | 尼崎の税理士が解説

令和7年度税制改正 みなし大企業の範囲の見直し 
農林漁業法人への投資円滑化特措法10条の承認会社が所有する農地所有適格法人をみなし大企業から除外→中小企業者として扱うまで解説しています。 法人税法上のみなし大法人の概念は平成22年度税制改正で導入されました。その後、平成28年度税制改正で措法上の中小企業者の定義が改正され、みなし大法人が措法上の大規模法人にもカウントされることが明確化されました。さらに平成29年度改正で適用除外事業者(所得15億円超)が新設され、令和元年度改正でも定義の見直しが行われています。
税理士法人松野茂税理士事務所 


目次

はじめに ~似て非なる二つの概念~

「うちは資本金1億円以下だから中小企業の優遇税制は全部使える」

このように思っている経営者・担当者の方は多いのではないでしょうか。

ところが、法人税法上の「中小法人」と、租税特別措置法上の「中小企業者」は、まったく別の概念です。両者は要件が異なり、適用される優遇税制も異なります。

特に近年、グループ企業の株主構成を確認しないまま申告・申請を行い、税務事故につながるケースが増加しています。

本記事では、「みなし大法人」が株主に含まれるケースに焦点をあて、中小法人に該当するにもかかわらず中小企業者の特例が使えない落とし穴を解説します。


1.中小法人とは(法人税法)

国税庁の定義

▶ 国税庁タックスアンサー No.5432「措置法上の中小法人及び中小企業者」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm

中小法人とは、各事業年度終了時において資本金または出資金の額が1億円以下の普通法人をいいます(法人税法66条)。

ただし、以下に該当する法人は、資本金1億円以下であっても中小法人から除外(みなし大法人)されます。

除外要件内容
①単独完全支配資本金5億円以上の大法人1社に発行済株式の100%を保有されている法人
②複数完全支配資本金5億円以上の大法人複数社に合計100%保有されている法人
③孫会社以下上記①②の法人に100%保有されている法人(連鎖支配も含む)

【②複数完全支配について補足】 条文上は「複数の大法人が持つ株式を仮に1社に集めたとした場合に完全支配関係が成立するとき」というフィクション(みなし規定)で表現されています。複数の大法人がそれぞれ保有する株式を「1社にまとめたら100%になるか」という仮定で判定する立法技術です。実務上は「大法人グループの持分合計が100%=除外」と理解すれば足ります。

条文 3 普通法人との間に完全支配関係があるすべての大法人が有する株式(投資口を含みます。)および出資の全部をそのすべての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においてそのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人(上記2に掲げる法人を除きます。)

<補足> 上記のほか、以下の法人も中小法人から除外されます。

除外要件内容
④投資法人投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資法人
⑤特定目的会社資産の流動化に関する法律に規定する特定目的会社
⑥適用除外事業者前3事業年度の所得金額の年平均が15億円超の法人(令和2年度改正)

⑥の適用除外事業者は見落としやすいポイントです。資本金1億円以下の中小法人であっても、直近3年間の所得平均が15億円を超えると軽減税率・交際費等の優遇が使えなくなります。急成長した企業や利益水準の高い法人では毎期確認が必要です。

▶ 国税庁タックスアンサー No.5432「措置法上の中小法人及び中小企業者」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm

国税庁 中小企業者の判定等フロー 下図 国税庁の判定図一部抜粋

国税庁 中小法人の判定



中小法人に適用される主な優遇措置

優遇措置内容
軽減税率15%年800万円以下の所得に適用(本則23.2%)
交際費800万円年800万円まで全額損金算入
欠損金100%控除繰越欠損金を所得の全額まで控除可
欠損金繰戻還付前1年への繰戻し還付
貸倒引当金法定繰入率による繰入が可能

2.中小企業者とは(租税特別措置法)

国税庁の定義

▶ 国税庁タックスアンサー No.5432「措置法上の中小法人及び中小企業者」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm

中小企業者とは、資本金1億円以下の法人のうち、大規模法人に支配されていない法人をいいます(措法42条の4等)。

「大規模法人」とは、資本金1億円超の法人(および資本金5億円以上の大法人の完全支配子会社)をいいます。

除外要件(ここが重要)

以下のいずれかに該当する場合は中小企業者から除外されます。

除外要件内容
①1/2以上保有同一の大規模法人に発行済株式の1/2以上を直接保有されている
②2/3以上保有複数の大規模法人に発行済株式の2/3以上を保有されている

⚠ポイント:「大規模法人」の定義に「みなし大法人(資本金5億円以上の大法人の完全支配子会社)」も含まれます(措法42条の4⑲第7号)

追加除外要件内容
③通算法人グループ通算制度採用時、グループ内にいずれかの非該当法人がいれば全体が除外
④適用除外事業者前3事業年度の所得平均15億円超の法人
⑤無資本法人で従業員1,000人超NPO・一般社団法人等も従業員数次第で大規模法人に該当

③の通算法人はグループ通算を採用している中小企業グループでは見落としやすい落とし穴です。また⑤は一般社団法人が株主にいるケースのリスクとも直結します。

中小企業者に適用される主な優遇措置

優遇措置内容根拠
経営強化税制(A類型・B類型)即時償却または10%税額控除措法42条の12の4
先端設備等導入計画税制即時償却または7%税額控除措法42条の12の6
中小企業投資促進税制30%特別償却または7%税額控除措法42条の6
賃上げ促進税制(中小向け)最大45%税額控除措法42条の12の5
30万円未満少額減価償却年300万円まで全額損金算入措法67条の5
試験研究費(中小優遇)最大17%税額控除措法42条の4③

3.中小法人と中小企業者の判定基準の違い

中小法人(法法)中小企業者(措法)
資本金基準1億円以下1億円以下
排除される支配法人資本金5億円以上の大法人資本金1億円超の大規模法人
支配割合100%(完全支配)1/2以上2/3以上
みなし大法人の扱い除外基準の対象大規模法人としてカウント ← ここが落とし穴

4.具体的なケース みなし大法人が株主にいると何が起きるか

株主構成の設例


出店 税理士法人松野茂税理士事務所 みなし大規模法人による支配県警の図

(A社40%・B社35%・C社25%の保有関係と、背後にある資本金5億円以上の親会社との完全支配関係を示す図)


株主資本金保有割合備考
A社(大規模法人)1億円超40%措法上の大規模法人
B社(みなし大法人)1億円以下35%資本金5億円以上の大法人の100%子会社
C社(中小法人)1億円以下25%一般の中小法人
対象法人1億円以下判定対象

中小法人の判定

資本金5億円以上の大法人による完全支配(100%)はないため、対象法人は中小法人に該当します

軽減税率・交際費・欠損金等の法人税法上の優遇措置は適用可

中小企業者の判定

措法上の「大規模法人」には、Bのようなみなし大法人(資本金5億円以上の大法人の100%子会社)も含まれます

株主措法上の大規模法人保有割合合計
A社✅ 該当40%
B社✅ 該当(みなし大法人として)35%
合計75%

75% ≧ 2/3(約66.7%)

複数の大規模法人による2/3以上保有に該当 → 中小企業者に非該当


結論:中小法人✅  中小企業者❌ 経営強化税制・先端設備等導入計画・賃上げ促進税制(中小向け)等は適用不可


5.改正経緯と税務事故が増加している背景

平成22年度税制改正

法人税法上のみなし大法人の概念は平成22年度税制改正で導入されました。その後、平成28年度税制改正で措法上の中小企業者の定義が改正され、みなし大法人が措法上の大規模法人にもカウントされることが明確化されました。さらに平成29年度改正で適用除外事業者(所得15億円超)が新設され、令和元年度改正でも定義の見直しが行われています。

改正前は、大企業グループが子会社の資本金を意図的に1億円以下に設定することで、中小企業向けの優遇税制を享受するという租税回避行為が横行していました。これを防止するため、みなし大法人の概念が法法・措法の両方に導入されました。

改正年度内容
平成22年度改正法人税法上のみなし大法人の導入(法法66条の除外規定)
平成28年度改正措法上の中小企業者の定義改正(みなし大法人を大規模法人にカウントする規定)
平成29年度改正適用除外事業者(所得15億円超)の新設
令和元年度改正中小企業者の定義のさらなる改正

税務事故が増加している理由

原因内容
①制度の複雑化法法と措法で判定基準が異なり、混同しやすい
②みなし大法人の認識不足株主の資本金が1億円以下でも大規模法人になるケースを見落とす
③グループ再編の増加M&A・組織再編後に株主構成が変わり、再判定を怠る
④申請書類での見落とし経営強化税制・先端設備等の申請時に株主構成確認が不十分

特に注意が必要なのは、M&A・組織再編後のケースです。 買収後に株主構成が変わった場合、前年まで適用できていた中小企業者の特例が翌事業年度から使えなくなることがあります。変更後の株主構成で毎期必ず再確認することが不可欠です。


6. 令和7年度税制改正 みなし大企業の範囲の見直し

改正の内容

中小企業経営強化税制(措法42条の12の4)および中小企業投資促進税制(措法42条の6)において、みなし大企業から除外される法人の範囲が追加されました。

改正前改正後
農林漁業法人への投資円滑化特措法10条の承認会社が所有する農地所有適格法人も みなし大企業に該当農林漁業法人への投資円滑化特措法10条の承認会社が所有する農地所有適格法人をみなし大企業から除外→中小企業者として扱う

つまり農業法人等が承認会社(農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法の認定会社)の100%子会社であっても、中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制の対象となります。


重要な限定 ⚠

この除外規定が適用されるのは以下の2制度のみです

適用される制度適用されない制度
中小企業投資促進税制(措法42条の6)中小企業技術基盤強化税制
中小企業経営強化税制(措法42条の12の4)特定事業継続力強化設備等の特別償却
少額減価償却資産の損金算入特例(30万円)
賃上げ促進税制(中小企業向け)
その他の中小企業税制

農地所有適格法人の担当をされている税理士の方は、制度ごとに適用可否が異なる点に特に注意が必要です。


改正の趣旨

農林漁業の担い手である農地所有適格法人は、農業の構造改革・法人化促進の観点から政策的に支援されています。一方で、投資円滑化法に基づく承認会社(農林漁業法人への出資を専門とする会社)の傘下に入ると、従来はみなし大企業として中小企業の優遇税制が使えなくなるという問題がありました。今回の改正はこの政策矛盾を解消したものです。


7.現行規定の盲点 一般社団法人を介した完全支配関係に要注意

形式的には適法だが…

以下のような株主構成を考えてみましょう。



支配の連鎖内容
①大法人(資本金10億円)一般社団法人の実質的な支配者(理事の派遣等)
②一般社団法人資本金なし・大法人の支配下にある
③子会社(資本金5,000万円)一般社団法人が100%保有

この場合、形式的な判定は次のようになります。

中小法人の判定(法法66条)

「大法人」=資本金5億円以上の法人

一般社団法人は資本金という概念がありません(資本金ゼロ)。したがって「資本金5億円以上の大法人」に該当せず、一般社団法人による完全支配はみなし大法人の除外規定にかかりません

形式上:子会社は中小法人に該当

中小企業者の判定(措法)

「大規模法人」=資本金1億円超の法人

同様に、一般社団法人は資本金がないため措法上の「大規模法人」にも該当しません

形式上:子会社は中小企業者にも該当


⚠ しかし、このスキームには重大なリスクがあります

現状の取扱い

現時点では、税務当局による明確な否認事例や通達・QAは公表されていません。形式的な要件を満たす限り、中小法人・中小企業者として各種優遇措置を適用している実務が存在します。

にもかかわらずリスクが高い理由

リスク内容
①立法趣旨との矛盾平成22年度改正の趣旨は「大企業グループによる中小優遇の租税回避防止」。一般社団法人を介しても実質は同じ構造であり、趣旨に反することは明らか
②実質主義による否認リスク税務調査において「経済的実質」を重視した否認がなされる可能性がある。特に一般社団法人の理事構成・意思決定が大法人に支配されている場合はリスクが高い
③立法措置の可能性このような一般社団法人を介したスキームは税務当局も認識しており、将来的に規定が整備・改正される可能性が十分にある
④税務調査時の説明責任否認はされなくても、調査の際に詳細な説明を求められ、多大な事務負担が生じるリスクがある
⑤加算税・延滞税リスク将来的に否認された場合、過去に遡って修正申告・更正処分となり、加算税・延滞税が課される

特に危険なケース

【高リスク構造の例】
大法人(資本金10億円)
 ↓ 理事の過半数を派遣・実質支配
一般社団法人(資本金なし)
 ↓ 発行済株式100%保有
子会社(資本金5,000万円)
 ↓
中小企業者として経営強化税制・賃上げ促進税制を適用
 → 税務調査で問題となるリスクあり

顧問先へのアドバイス

このようなスキームを採用している顧問先、またはM&A・組織再編の結果として一般社団法人が株主となっているケースについては、以下の対応を推奨します。

対応内容
①現状確認一般社団法人の理事構成・意思決定が大法人に実質支配されていないか確認
②リスクの説明否認事例はないが、立法趣旨・実質主義の観点からリスクが存在することを説明・記録
③書面添付の活用当事務所が得意とする書面添付制度を活用し、判定根拠・確認事項を明示することで税務リスクを軽減
④将来の改正への備え税制改正の動向を継続的にモニタリングし、改正があれば速やかに対応

「現時点で否認事例がない=安全」ではありません。立法趣旨に反するスキームは常に否認リスクを内包しています。顧問先には率直にリスクを伝えることが税理士の責務です。


8.消費税にも同様の落とし穴がある 特定新規設立法人

消費税においても、同様の考え方で課税事業者となる制度があります。

特定新規設立法人(消費税法12条の3)

新規設立法人であっても、以下の要件を満たす場合は設立初年度から消費税の課税事業者となります。

要件内容
①新規設立法人基準期間がない事業年度(設立1期目・2期目)
②特定要件発行済株式等の50%超を「特定株主グループ」に保有されている
③課税売上高要件特定株主グループに属する者の基準期間相当期間の課税売上高が5億円超

なぜ重要か

資本金1,000万円未満で設立した場合、通常は設立後2期間は消費税免税となります。しかし、親会社や関連会社の課税売上高が5億円を超える場合は、この免税が適用されません。


具体例

ケース内容消費税判定
資本金100万円で新規設立、親会社(課税売上高10億円)が60%保有特定要件①②③すべて該当❌ 免税不可・課税事業者
資本金100万円で新規設立、個人株主100%保有、関連会社なし特定要件非該当✅ 免税事業者(2期間)

グループ会社の設立・M&A後の新会社設立時は必ず確認が必要です。


9.実務チェックリスト

申告・申請前に以下を必ず確認してください。

中小法人の判定

  • □ 資本金(出資金)が1億円以下か
  • □ 資本金5億円以上の大法人による単独100%支配がないか
  • □ 資本金5億円以上の大法人複数による合計100%支配がないか
  • □ 上記の完全支配子会社(孫会社以下)に該当しないか
  • □ 判定時点は事業年度終了時で確認したか

中小企業者の判定

  • □ 資本金1億円以下か
  • 各株主の資本金を個別に確認したか(1億円超か否か)
  • みなし大法人(資本金5億円以上の100%子会社)が株主にいないか
  • □ 大規模法人(みなし大法人含む)の1/2以上保有がないか
  • □ 大規模法人(みなし大法人含む)の2/3以上合計保有がないか
  • □ M&A・組織再編後に株主構成が変わっていないか

一般社団法人が株主の場合(グレーゾーン)

  • □ 株主に一般社団法人が含まれていないか
  • □ その一般社団法人の理事構成・意思決定が大法人に支配されていないか
  • □ 顧問先にリスクの説明・記録を行ったか
  • □ 書面添付による判定根拠の明示を検討したか

消費税(特定新規設立法人)

  • □ 設立1期目・2期目の法人か
  • □ 50%超を保有する株主グループに課税売上高5億円超の法人・個人がいないか

まとめ

中小法人(法法)中小企業者(措法)
判定基準資本金1億円以下+大法人の完全支配なし資本金1億円以下+大規模法人の1/2・2/3未満
みなし大法人除外対象(法法上)大規模法人としてカウント
主な優遇軽減税率・交際費・欠損金設備投資減税・賃上げ税制
見落としリスク比較的低い高い(みなし大法人の取扱いで誤りやすい)

「資本金1億円以下だから大丈夫」という思い込みが、税務事故の最大の原因です。

中小法人と中小企業者は必ず別々に判定し、特に株主の背後関係まで遡った確認を行うことが、申告・申請における税理士としての基本姿勢です。


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本記事は令和7年3月現在の法令に基づいて作成しています。税制改正により内容が変わる場合がありますので、最新情報は国税庁ホームページまたは当事務所までお問い合わせください。

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