種類株式の相続税評価を税理士が解説|無議決権株式・配当優先株式・社債類似株式・拒否権付株式の評価方法

種類株式の相続税評価を税理士が解説|無議決権株式・配当優先株式・社債類似株式・拒否権付株式の評価方法

相続税の申告において、取引相場のない株式の評価は非常に重要です。特に種類株式については、その特性に応じた評価方法を正しく理解する必要があります。今回は、実務でよく見られる4つの種類株式について、相続税評価の考え方と注意点を解説します。

目次

種類株式とは

種類株式とは、会社法108条に基づき、議決権や配当などについて普通株式とは異なる内容が定められた株式のことです。事業承継対策や資金調達の場面で活用されることが多く、相続税評価においても特別な取り扱いが必要になる場合があります。

1. 無議決権株式の評価方法

基本的な評価の考え方

無議決権株式は、議決権がないという制限があるにもかかわらず、原則として普通株式と同様に評価します。

つまり、類似業種比準方式や純資産価額方式など、財産評価基本通達185・188等に基づく通常の評価方法をそのまま適用します。「無議決権だから自動的に評価が下がる」というわけではないことに注意が必要です。

選択適用できる5%評価減

ただし、配当優先の無議決権株式については、一定の要件を満たす場合に限り、納税者の選択により5%の評価減を認める特例があります。

5%評価減の主な要件

1. 相続関係・株主構成に関する要件

  • 無議決権株式を取得したのが同族株主であること
  • 同一の相続等により、その会社の議決権付株式も他の同族株主等が取得していること(減額分を加算する先があること)

2. 遺産分割・申告期限までの手続要件

  • 当該会社の株式について、相続税の法定申告期限までに遺産分割協議が確定していること
  • 株式を取得した同族株主全員の同意があること

3. 届出・添付書類の要件

  • 「無議決権株式の評価減の適用に係る選択届出書」を税務署長に提出していること
  • 「取引相場のない株式の評価明細書」に、無議決権株式の5%減額計算の内容と、減額分を議決権株式に加算した評価額の計算過程を記載した書面を添付していること

評価減の仕組みと実務上の留意点

この特例を適用した場合の計算は以下のようになります。

  • 無議決権株式:通常評価額×95%で評価(5%減額)
  • 減額した5%相当額:同一相続で取得した議決権株式の評価額に按分して加算

つまり、株式全体の評価額は変わらず、各相続人間での配分が変わることになります。

実務上のポイント

適用することで各相続人ごとの評価額が変動するため、議決権株式の帰属先や割合を考慮したシミュレーションが必須です。また、申告期限までに分割未了だと要件を満たさないため、分割協議と評価のスケジュールを早めに設計する必要があります。

2. 配当優先株式の評価

配当優先株式の評価では、評価方式によって取り扱いが異なります。

類似業種比準方式の場合

配当優先株式の評価時は、その種類株式(優先株・普通株等)ごとに「1株当たりの配当金額」を分けて計算する必要があります。

優先株のみの配当金や普通株の配当金がある場合、それぞれ実際に支払われた金額を対象株式ごとに考慮し、評価に反映します。

純資産価額方式の場合

純資産価額方式による評価では、配当の多寡や優先株であるかどうかは評価に影響しません

全ての種類の株式について、同じ基準(財産評価基本通達185など)で純資産価額方式を用いて評価します。

このように、配当優先株式は評価方式で取り扱いが異なり、類似業種比準方式では種類別、純資産価額方式では一律扱いとなるのがポイントです。

3. 社債類似株式の評価

社債類似株式とは

社債類似株式とは、複数の種類株式の内容を組み合わせて作った、社債のような性質を持つ株式のことです。

具体的には、以下のような特徴を持つ種類株式を指します。

  • 議決権制限がある
  • 配当が優先的に支払われる
  • 残余財産の分配が優先される
  • 償還条項が付されている

評価方法

社債類似株式は、その性質から社債の評価に準じて、発行価額により評価します。

なお、既経過利息に相当する配当額の加算は行いません。

評価方法の具体例

類似業種比準方式の場合 社債類似株式は、発行価額を株式数で除して1株当たり価額を計算します。

純資産価額方式の場合 社債類似株式の発行価額を負債として扱い、その他の株式の評価では社債類似株式を社債とみなして計算します。

4. 拒否権付株式(黄金株)の評価

拒否権付株式とは

会社法108条1項8号に基づく拒否権が付された種類株式です。

株主総会の決議を拒否できるという大きな権限を持つため、通称「黄金株」と呼ばれています。

評価方法

そんな強力な権限を持つ種類株式ですが、相続税評価においては、拒否権を考慮せず、普通株式と同様に評価します。

つまり、黄金株という特別な権利があっても、相続税評価額には反映されないということです。

まとめ

種類株式の相続税評価は、その種類や評価方式によって取り扱いが大きく異なります。

  • 無議決権株式:原則は普通株と同じ評価だが、一定要件を満たせば5%評価減の選択も可能
  • 配当優先株式:類似業種比準方式では種類別に配当を考慮、純資産価額方式では一律評価
  • 社債類似株式:発行価額により評価
  • 拒否権付株式:拒否権は考慮せず普通株式と同様に評価

種類株式を含む相続税申告では、適正な財産評価が非常に重要です。評価方法を誤ると、過大申告や過少申告のリスクがあります。

税理士法人松野茂税理士事務所では、30年以上の実績を活かし、種類株式の評価を含めた適正な相続税申告をサポートしています。種類株式の評価でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


事務所概要

税理士法人松野茂税理士事務所
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