「相続税を申告したら、税務調査が来るのでは…」 「うちは税務署に目をつけられるような財産はないはずだけど…」
相続税の申告を終えた後、多くの方が気になるのが「税務調査」です。
実は、相続税は他の税目に比べて税務調査の確率が高い税金です。しかも、相続税の調査は所得税や法人税とは異なる特殊な調査が行われます。
この記事では、相続税の税務調査の実態と、調査の重点項目である名義財産の問題、そして調査を避けるためのポイントを解説します。
相続税の税務調査、実際どのくらい来る?
調査の確率
国税庁の統計によると、相続税の申告件数に対する税務調査の実施割合は**約10〜20%**と言われています。
つまり、5〜10件に1件は税務調査が入る計算です。
所得税や法人税と比べると、相続税の調査率は非常に高い水準です。
なぜ相続税は調査されやすいのか
- 一生に何度もない申告のため、慣れていない人が多い
- 財産の把握漏れが起きやすい
- 金額が大きいため、1件あたりの追徴税額が大きくなりやすい
- 税務署は過去の所得情報や金融機関の情報を持っている
相続税の調査は「特殊」|家族の財産まで調べられる
所得税・法人税との違い
所得税や法人税の調査は、基本的に本人(納税者)の帳簿や資料を確認します。
しかし、相続税の調査は違います。
相続税の調査では、亡くなった方だけでなく、配偶者・子ども・孫など家族全員の財産や通帳が調査対象になります。
税務署は事前にここまで調べている
税務署は調査に来る前に、すでに多くの情報を把握しています。
| 調査対象 | 税務署が事前に把握している情報 |
|---|---|
| 亡くなった方 | 過去の所得、預貯金口座、不動産、有価証券、保険金 |
| 配偶者 | 預貯金口座、収入履歴、資産の動き |
| 子ども | 預貯金口座、住宅購入資金の出どころ |
| 孫 | 教育資金、預貯金口座 |
税務署は金融機関に対して**「預貯金等の照会」**を行う権限を持っています。これにより、亡くなった方だけでなく、相続人や親族名義の口座の入出金履歴まで確認できるのです。
具体的に何を見ているのか
1. 亡くなった方の口座から家族への資金移動
父の口座 → 毎年100万円ずつ子どもの口座へ
→ 贈与として適正に申告されているか?
→ それとも名義預金ではないか?
2. 家族の資産と収入のバランス
専業主婦の妻名義の預金が3,000万円
→ 妻自身の収入では説明できない
→ 夫からの資金移動(名義預金)ではないか?
3. 子どもの住宅購入資金
子どもが5,000万円の住宅を購入
→ 子どもの年収からは無理がある
→ 親から資金援助があったのでは?
→ 贈与税の申告はされているか?
4. 孫への教育資金・贈与
孫名義の口座に多額の預金
→ 祖父母からの資金ではないか?
→ 贈与の実態があるか?
「家族の口座を見られる」ことの意味
つまり、相続税の調査では、家族全員のお金の流れが丸裸にされるということです。
「本人の財産さえ正しく申告すれば大丈夫」ではありません。家族間のお金の動きに不自然な点があれば、そこを突いてきます。
だからこそ、相続税の申告では名義財産の問題が最重要になるのです。
税務調査の最重点項目は「名義財産」
相続税の税務調査で**最も指摘が多いのが「名義財産」**です。国税庁の統計でも、申告漏れ財産の大半を現金・預貯金が占めており、その多くが名義財産の問題です。
名義財産とは
名義財産とは、口座や財産の名義は配偶者や子どもになっているが、実質的には亡くなった方のお金である財産のことです。
「名義預金」「名義株」「名義保険」など、様々な形態があります。
なぜ名義財産が問題になるのか
相続税は「名義」ではなく「実質」で判断されます。
たとえ子ども名義の口座であっても、以下のような場合は亡くなった方の財産として相続税の対象になります。
- お金の出どころが亡くなった方である
- 通帳や印鑑を亡くなった方が管理していた
- 名義人(子ども等)がその口座の存在を知らなかった
名義預金の典型的なパターン
パターン1:子ども名義で積み立てていた預金
父が毎年110万円ずつ、子ども名義の口座に入金
→ 通帳・印鑑は父が保管
→ 子どもはその口座を知らない
→ 名義預金として相続財産に含まれる
パターン2:妻名義だが夫の収入から入金
専業主婦の妻名義の預金が3,000万円
→ 原資はすべて夫の給与・退職金
→ 妻名義でも夫の相続財産となる可能性
パターン3:孫名義の教育資金
孫のために祖父が積み立てた預金
→ 贈与の実態がなければ祖父の財産
名義財産かどうかの判断基準
税務署は以下の点を総合的に判断します。
| 判断ポイント | 名義財産とされやすい | 名義財産とされにくい |
|---|---|---|
| 資金の出どころ | 亡くなった方 | 名義人本人の収入 |
| 通帳・印鑑の管理 | 亡くなった方が管理 | 名義人本人が管理 |
| 届出住所 | 亡くなった方の住所 | 名義人本人の住所 |
| 口座の認識 | 名義人が知らない | 名義人が認識している |
| 入出金 | 名義人が自由に使えない | 名義人が自由に使える |
| 贈与契約書 | ない | ある |
| 贈与税申告 | していない | している |
名義株・名義保険にも注意
預金だけでなく、以下も名義財産として問題になることがあります。
名義株
- 子どもや配偶者名義で保有している株式
- 購入資金が亡くなった方のお金であれば相続財産
名義保険
- 契約者が子どもだが、保険料を親が払っていた
- 保険料負担者=実質的な契約者として判断される
税務調査の対象になりやすい人の特徴
1. 遺産総額が大きい
一般的に、遺産総額が2〜3億円以上になると、調査の対象になりやすいと言われています。
ただし、金額が小さくても「申告内容に不自然な点がある」と判断されれば調査が入ることはあります。
2. 預貯金の動きが不自然
税務署が特に注目するのが預貯金の流れです。
- 亡くなる直前に多額の現金を引き出している
- 長年にわたって定期的にお金が引き出されている
- 残高が生活実態と合わない(収入に対して少なすぎる)
これらは「現金で財産を隠しているのでは?」「名義財産があるのでは?」と疑われるポイントです。
3. 家族の財産が収入に見合わない
前述の通り、税務署は家族の口座も事前に調べています。
- 専業主婦なのに多額の預金がある
- 若い子どもが高額な不動産を購入している
- 孫名義の口座に大きな残高がある
このような場合、「親(被相続人)からの資金移動があったのでは?」と疑われます。
4. 生前贈与が多い
相続開始前**3年以内(令和6年以降の相続は順次7年に延長)**の贈与は、相続財産に加算する必要があります。
特に「贈与のつもりだったが、実は名義預金だった」というケースは非常に多いです。
5. 申告書の内容が不十分
- 財産の内訳が大雑把
- 評価の根拠が示されていない
- 添付書類が不足している
申告書自体の「質」が低いと、「何か隠しているのでは」と疑われやすくなります。
税務調査では何を見られる?
調査の流れ
- 事前準備:税務署は調査前に家族の口座情報等を収集済み
- 事前連絡:税務署から電話で「調査に伺いたい」と連絡
- 日程調整:通常、連絡から2〜3週間後に実施
- 実地調査:自宅等で調査官と面談(1〜2日)
- 質問・資料確認:通帳、契約書、金庫の中身などを確認
- 結果通知:問題なければ終了、指摘があれば修正申告
よく聞かれる質問
- 亡くなった方の職歴、収入の推移
- 預貯金の管理は誰がしていたか(名義財産の確認)
- 家族名義の預金はあるか
- お子さんの住宅購入資金はどうされましたか
- 生前に家族にお金を渡したことはあるか
- 贈与契約書や贈与税の申告はあるか
- 貸金庫はあるか、金庫の中身は
調査官は**「すでに把握している情報」と「相続人の回答」を照らし合わせて**矛盾がないかを確認しています。
税務調査を受けないために|書面添付制度の活用
書面添付制度とは
書面添付制度とは、税理士が申告書の作成にあたって、どのような資料を確認し、どのような判断をしたかを書面で税務署に提出する制度です。
税理士法第33条の2に基づく制度で、申告書の「信頼性の証明」とも言えるものです。
書面添付のメリット
1. 税務調査の前に「意見聴取」が行われる
書面添付がある申告書に対しては、税務署はいきなり調査に入るのではなく、まず税理士に意見を聞くことになっています。
この意見聴取の段階で税務署の疑問が解消されれば、実地調査が省略されることがあります。
2. お客様に直接調査が入らない
意見聴取は税理士が対応します。お客様が税務署とやり取りする負担を大幅に軽減できます。
3. 申告書の質が上がる
書面添付を行うには、税理士が財産を徹底的に確認する必要があります。結果として、申告書自体の質が向上し、そもそも調査対象になりにくくなります。
書面添付に書く内容(例)
- 預貯金について、過去◯年分の通帳を確認し、名義財産がないことを確認した
- 相続人全員の預金口座についても確認を行い、資金移動の有無を検証した
- 生前贈与について、贈与契約書・振込記録を確認した
- 土地の評価について、現地調査を行い、◯◯の減額要因を確認した
このように、**「税務署が調べることを、先に税理士が調べています」**と示すことで、調査の必要性を下げることができます。
当事務所の取り組み|書面添付99%採用
当事務所では、相続税申告において書面添付制度を99%採用しています。
なぜ書面添付を重視するのか
相続税の申告は、ご遺族にとって精神的にも大きな負担です。その上、税務調査が入れば、さらなる時間と労力がかかります。
「申告が終わった後も、税務調査の不安を抱えて過ごす」
そのようなことがないよう、当事務所では書面添付を標準対応とし、税務調査が来ない申告を目指しています。
書面添付のために行うこと
当事務所では、書面添付にあたり以下の確認を徹底しています。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人の預貯金 | 過去5〜10年分の取引履歴を確認 |
| 家族の預貯金 | 配偶者・子ども・孫の口座も確認し、名義財産の有無を検証 |
| 資金移動 | 家族間のお金の流れを把握 |
| 生前贈与 | 贈与契約書・贈与税申告の有無を確認 |
| 不動産 | 現地調査を実施 |
| 相続人へのヒアリング | 全員に財産状況を確認 |
税務署が調査で確認することを、申告の段階で先に確認しておく。これが、調査を受けない申告の基本です。
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 税務調査はいつ頃来ますか?
A. 相続税の申告後、1〜2年以内に来ることが多いです。申告期限から3年を過ぎると時効に近づくため、それまでに調査が入るのが一般的です。ただし、悪質な場合は7年まで遡れます。
Q2. 税務署は本当に家族の口座まで調べているのですか?
A. はい。税務署は金融機関に対して照会をかける権限を持っており、亡くなった方だけでなく、配偶者・子ども・孫の口座まで調べることができます。調査に来る前に、すでにお金の流れを把握していると考えてください。
Q3. 名義預金かどうか、自分で判断できますか?
A. 判断が難しいケースが多いです。「贈与のつもりだった」「子どもにあげたお金」と思っていても、法的には名義預金と判断されることがあります。迷う場合は専門家にご相談ください。
Q4. 名義預金があった場合、どうすればいいですか?
A. 正しく相続財産として申告します。名義預金を隠して申告し、後から調査で指摘されると、重加算税(35〜40%)が課される可能性があります。最初から正しく申告することが重要です。
Q5. 書面添付をすれば絶対に調査は来ませんか?
A. 「絶対」ではありませんが、調査の可能性は大幅に下がります。書面添付がある申告については、まず税理士への意見聴取が行われ、そこで疑問が解消されれば実地調査は省略されます。
Q6. 他の税理士事務所で申告しましたが、家族の口座までは確認されませんでした。問題ありますか?
A. 申告内容が正しければ問題ありません。ただし、税務署は家族の口座情報を把握しているため、名義財産があれば調査で指摘される可能性があります。不安であれば、申告内容の確認(セカンドオピニオン)もお受けしています。
まとめ|家族の財産まで見られる相続税調査に備える
相続税の調査は、他の税目とは異なり家族全員のお金の流れが調べられる特殊な調査です。
税務署は調査に来る前に、すでに多くの情報を把握しています。そのうえで最も指摘が多いのが名義財産です。
税務調査を避けるポイント:
- 家族の財産・口座も含めて名義預金がないか確認する
- 財産を漏れなく申告する
- 専門家に依頼し、申告書の質を高める
- 書面添付制度を活用する
「調査が来てから対応する」のではなく、**「調査が来ない申告をする」**ことが大切です。
相続税のご相談は当事務所へ
当事務所では、相続税申告において書面添付制度を99%採用し、税務調査が来ない申告を目指しています。
被相続人の財産だけでなく、ご家族の口座・資金移動まで確認したうえで、適正な申告書を作成します。
初回のご相談は無料です。「調査が心配」「名義預金があるかもしれない」という方も、お気軽にお問い合わせください。
税理士法人松野茂税理士事務所 〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F 阪神尼崎駅 徒歩1分 TEL:06-6419-5140
事務所概要
税理士法人松野茂税理士事務所
代表税理士:松野 茂
社員税理士:山本 由佳
所属税理士:近畿税理士会 尼崎支部
法人登録番号:第6283号
法人番号:4140005027558
適格請求書発行事業者登録番号(インボイス番号):T4140005027558
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