速報 令和8年度税制改正 個人事業者・中小法人への影響|尼崎の税理士が解説

速報 令和8年度税制改正 個人事業者・中小法人への影響|尼崎の税理士が解説
目次

はじめに

令和7年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱では、個人事業者に大きな影響を与える改正が盛り込まれました。特に注目すべきは、所得税の各種控除の見直しと、消費税のインボイス関連措置です。

阪神尼崎駅徒歩1分、30年以上の実績を持つ当税理士法人が、個人事業者と法人への実務的な影響を詳しく解説します。

主な改正ポイント

1. 所得税の改正

  • 給与所得控除の見直し
  • 基礎控除等の拡充
  • 青色申告特別控除の拡充・要件追加(令和9年分から)

2. 消費税の改正

  • インボイス「2割特例」終了後の「3割特例」創設
  • 仕入税額控除の経過措置の見直し

各改正の詳細は別のブログで解説していますので、本記事では個人事業者と法人への実務的な影響に焦点を当てて説明します。

「所得税の壁178万円」が意味すること

控除額の内訳

令和8年度改正により、給与所得者の控除額が次のように変更されます。

給与所得控除

  • 従来:55万円→65万円
  • 改正後:69万円(本則)+ 特例5万円 = 74万円

基礎控除

  • 従来:48万円
  • 改正後:62万円(本則)+ 特例加算額

この結果、一定の所得層では合計178万円まで所得税が非課税となる可能性が出てきました。

重要な注意点

基礎控除の特例加算額は、所得階層によって変動します。すべての方が一律「+104万円」になるわけではありません。一定所得層では加算42万円などのケースもありますので、個別の試算が必要です。

個人事業者への影響:専従者給与の見直しチャンス

節税余地の拡大

所得税の非課税枠が拡大したことで、青色事業専従者給与の引き上げによる節税効果が期待できます。個人事業者の場合、会社員のような社会保険加入義務がないため、適切に活用すればダイレクトな減税効果が得られます。
給与には個人事業税がかりません。所得税は超過累進税率なので所得を平均化するだけで大きな節税効果は生じます。

ただし、実務上の3つの壁がある

1. 控除額の正確な理解

「178万円まで非課税だから、専従者給与をそこまで上げれば節税できる」という単純な考えは危険です。基礎控除の特例加算額は所得階層で変わるため、個別のシミュレーションが必須です。

2. 専従者給与の「相当性」という最大の壁

青色事業専従者給与で最も重要なのは、労務の対価として相当な金額かどうかという点です。

税務調査で否認されないためには、以下の観点から説明できる必要があります。

  • 実際の業務量・従事日数
  • 職務内容・責任の程度
  • 専門知識・技能のレベル
  • 同業他社の相場感
  • 他の従業員とのバランス

単に「控除枠が広がったから」という理由だけでは、増額の正当性を説明できません。

3. 届出・変更手続きの厳守

専従者給与を増額する場合は、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を増額後の給与を最初に支給する日までに提出する必要があります。

届出なしの増額や、届出額を超えた支給は、必要経費として認められないリスクがあります。

「社会保険の加入がないのでダイレクト減税」は本当か?

個人事業の専従者は、会社員のような厚生年金・健康保険への強制加入はありません。しかし、以下の点には注意が必要です。

考慮すべき社会保険関連の影響

  • 国民健康保険料の増加(所得に応じて変動)
  • 国民年金保険料(定額だが、世帯構成で影響)

所得税だけを見て最適化すると、思わぬ負担増になるケースがあります。必ず世帯全体でのシミュレーションを行いましょう。 兵庫県の土建組合に加入すると国保は定額なので建設関係者は加入するとよいと思います。

実務上の安全な進め方

ステップ1:実態に基づく妥当な水準の設定

「178万円ぴったり」を目標にするのではなく、まず専従者の実際の業務実態から妥当な給与水準を検討します。

チェックポイント

  • 実際の従事日数・時間
  • 担当業務の内容と責任
  • 業務に必要な知識・技能
  • 同業他社での相場
  • 業務拡大や責任増などの客観的事実

ステップ2:変更届出の準備

増額を決めたら、変更の理由を明確にして記録を残します。

増額理由の例

  • 業務量の大幅な増加
  • 新規事業の立ち上げで責任が増大
  • 専門資格の取得による業務の高度化
  • 同業他社の賃上げ動向に対応

ステップ3:総合的な税負担のシミュレーション

所得税だけでなく、以下の項目も含めて総合的に試算します。

  • 所得税・住民税
  • 国民健康保険料
  • 配偶者控除・配偶者特別控除への影響
  • 扶養の状況変化

法人の場合:配偶者給与の最適設計

第3号被保険者の壁を超える戦略

法人で配偶者に給与を支払う場合、所得税の非課税枠拡大を活用した給与設計が可能になります。ただし、社会保険の影響を十分に検討する必要があります。

第3号被保険者から外れる境界線

130万円の壁(原則) 年収130万円以上になると、配偶者は第3号被保険者の資格を失い、自身で社会保険に加入する必要があります。

106万円の壁(一定規模以上の企業) 以下の要件をすべて満たすと、106万円から社会保険の適用対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上
  • 継続して2か月を超えて雇用される見込み
  • 学生でない
  • 従業員数が一定規模以上の企業

2つの設計アプローチ

Aパターン:積極的に社保加入を選択

配偶者を社会保険に加入させても手取りが増える水準まで給与を上げる設計です。

メリット

  • 将来の厚生年金額が増加
  • 傷病手当金などの保障が得られる
  • 世帯全体の手取り最大化の可能性

デメリット

  • 社会保険料負担の発生
  • 一定の給与水準が必要

Bパターン:扶養内での最適化

130万円未満に抑えつつ、所得税の非課税枠や配偶者(特別)控除を最大限活用する設計です。

メリット

  • 社会保険料負担なし
  • 配偶者控除・配偶者特別控除の維持

デメリット

  • 給与上限の制約
  • 将来の年金額増加なし

法人で配偶者給与を支払う際の税務上の注意点

1. 給与の相当性

配偶者に支払う給与も、実態に基づいた相当な金額である必要があります。

確認すべきポイント

  • 実際の職務内容・勤務時間
  • タイムカード等の勤怠記録
  • 就業規則や賃金規程との整合性
  • 同規模・同職種との比較

過大な給与は、役員給与の認定や寄附金課税のリスクがあります。

2. 配偶者控除・配偶者特別控除への影響

配偶者の所得が増えると、給与支払者側の配偶者控除・配偶者特別控除が減少または消失します。世帯全体での税額を試算することが重要です。

最適な所得分散のシミュレーションが必要

法人の場合、活用できる控除制度は多岐にわたります。

主な控除制度

  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 特定扶養控除

これらを組み合わせて、会社ごとに最適な所得分散のシミュレーションを行うことで、世帯全体での税負担を最小化できます。

当事務所では、ご家族の状況や事業の実態に応じた個別のシミュレーションを提供しています。

法人成りのタイミングに関する重要な変更

2割特例の終了が与える影響

消費税のインボイス制度導入に伴い、小規模事業者を支援する「2割特例」が設けられていました。しかし、この特例の適用期間が令和8年9月30日までとなります。

法人成りのベストタイミング

令和8年9月30日まで

法人成りと同時にインボイス登録を行う場合、設立初年度から2割特例を選択できます。消費税の軽減効果を最大限活用できる最後のチャンスです。第1期目のみ

令和8年10月1日以降

この日以降に法人成りした場合、2割特例の適用を受けられません。消費税面での法人成りのメリットが大幅に減少します。

従来の免税メリットも縮小

以前は、個人事業で2年間免税、さらに法人成りで2年間免税という合計4年間の免税期間を確保できるケースがありました。

現在はインボイス制度の影響で、このような長期間の免税選択は困難になっています。

法人成りを検討中の方へ

令和8年9月末までに法人成りを実行すれば、消費税の2割特例を活用できます。ただし、法人成りには以下の検討事項があります。

総合的な判断が必要な項目

  • 社会保険料負担の増加
  • 法人運営コスト(税理士報酬、登記費用など)
  • 事業承継・相続対策
  • 資金調達の容易性
  • 対外的な信用力

消費税だけでなく、事業全体の状況を踏まえた判断が重要です。

まとめ

令和8年度税制改正は、個人事業者にとって専従者給与の見直しや法人成りのタイミングを検討する重要な機会です。

個人事業者の方へ

  • 所得税の非課税枠拡大を活用した専従者給与の最適化
  • ただし「相当性」と「届出」を厳守
  • 社会保険料も含めた総合的なシミュレーションが必須

法人の方へ

  • 配偶者給与の最適設計による世帯全体での税負担軽減
  • 第3号被保険者の壁を意識した戦略的な給与設定
  • 各種控除制度を組み合わせた所得分散の検討

法人成りを検討中の方へ

  • 令和8年9月末までが2割特例活用の最終期限
  • 総合的な判断が必要(消費税以外の要素も重要)

税理士法人松野茂税理士事務所では、個人事業者・法人の税務相談を承っております

専従者給与の適正額判定、法人成りのシミュレーション、所得分散の最適化など、30年以上の経験を持つ税理士が丁寧にサポートいたします。

  • 所在地:〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅徒歩1分)
  • 電話:06-6419-5140
  • FAX:06-6423-7500
  • メール:info@tax-ms.jp

お気軽にお問い合わせください。


※本記事は令和7年12月19日公表の税制改正大綱に基づいています。詳細は今後の法令・通達等で変更される可能性があります。

事務所概要

税理士法人松野茂税理士事務所
代表税理士:松野 茂
社員税理士:山本 由佳
所属税理士:近畿税理士会 尼崎支部
法人登録番号:第6283号
法人番号:4140005027558
適格請求書発行事業者登録番号(インボイス番号):T4140005027558
所在地:〒660-0861 兵庫県尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F
TEL:06-6419-5140
営業時間:平日 9:00〜18:00

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