非上場会社の株式評価は、相続税や贈与税の申告において非常に重要です。今回は、その代表的な評価方法である「類似業種比準価額」について、配当・利益・純資産という3つの比準要素を中心に、実務のポイントを交えて解説します。
類似業種比準価額とは
類似業種比準価額とは、評価対象の会社と事業内容が似ている上場会社の株価を参考にして、非上場株式の価値を算定する方法です。具体的には、以下の3つの要素を比較して計算します。
- 配当金額
- 利益金額
- 純資産価額
業種目の決定手順
正確な評価のためには、まず適切な業種目を決定する必要があります。
1. 売上高の把握
評価会社の直前期以前1年間の取引金額(売上高)を確認します。
2. 業種分類の確認
日本標準産業分類に基づき、小分類、中分類、大分類のいずれに該当するかを確認します。
3. 取引金額の割合判定
各業種の取引金額割合を計算し、最も割合が高い業種を確認します。
- 50%を超える業種がある場合 → その業種を業種目とします
- 50%を超える業種がない場合 → 最も割合が高い業種を業種目とします
4. 業種目の選択
納税者は、より有利な評価となる業種目を選択することができます。
- 小分類の業種目 → 中分類の業種目も選択可能
- 中分類の業種目 → 大分類の業種目も選択可能
類似業種の比準要素(A・B・C・D)
A. 類似業種の株価
課税時期の属する月以前3か月間の各月の類似業種株価のうち、最も低い株価を使用します。ただし、納税者の選択により、前年平均株価や前2年間の平均株価を使用することもできます。
上場株式の相場が上昇すると、評価対象会社の評価額も比準して上昇する傾向にあります。
B. 類似業種の1株当たり配当金額
直前期末以前2年間の経常的な配当金額を基に算定した1株当たりの年平均配当金の合計額を、標本会社数で除して求めた金額です。
C. 類似業種の1株当たり年利益金額
直前期末以前1年間における税引前当期純利益額を基に算定した1株当たりの金額の合計額を、標本会社数で除して求めた金額です。
D. 類似業種の1株当たり純資産価額
直前期末の純資産の部を基に算定した1株当たりの金額の合計額を、標本会社数で除して求めた金額です。
※これらの数値(A・B・C・D)は、国税庁長官が定めて通達されています。
評価会社の比準要素
ここからが実務上、最も重要なポイントとなります。評価会社の配当・利益・純資産をどのように計算するかを詳しく見ていきましょう。
ⓑ 評価会社の1株当たり配当金額の計算
計算方法
直前期末以前2年間の剰余金配当の合計額の2分の1に相当する金額を、直前期末の発行株式数(50円換算)で除して計算します。
計算式
配当金額 = (直前期の配当 + 直前々期の配当) ÷ 2 ÷ 50円換算発行株式数
重要ポイント
- 特別配当・記念配当の除外
- 特別配当、記念配当など、将来継続しないと予測される配当は除外します
- 経常的な配当のみを対象とします
- 端数処理
- 10銭未満の端数は切り捨てます
- 発行株式数の計算
- 50円換算発行株式数 = 資本金等の額 ÷ 50円
- 実際の発行株式数ではなく、資本金額を50円で割った数値を用います
ⓒ 評価会社の1株当たり利益金額の計算
計算方法
直前期末以前1年間の法人税の課税所得金額を基礎として計算します。
計算式
利益金額 = 法人税の課税所得金額 ± 調整項目 ÷ 50円換算発行株式数
調整項目の詳細
- 非経常的な利益の除外
- 固定資産売却益
- 保険差益
- その他の臨時的な利益
- 加算する項目
- 益金に算入されなかった剰余金の配当等(所得税額相当額を除く)
- 損金算入された繰越欠損金
選択可能な方法
納税者の選択により、直前期末以前2年間の利益額の平均を使用することもできます。利益が大きく変動している場合、この選択が有利になることがあります。
端数処理
- 1円未満の端数は切り捨てます
ⓓ 評価会社の1株当たり純資産価額(帳簿価額)の計算
計算方法
評価会社の直前期末の資本等の金額と利益積立金額の合計額を、50円換算発行株式数で除して計算します。
計算式
純資産価額 = (資本金等の金額 + 利益積立金額) ÷ 50円換算発行株式数
重要ポイント
- 帳簿価額ベース
- この計算では帳簿価額を使用します
- 時価評価ではありません
- 端数処理
- 1円未満の端数は切り捨てます
類似業種比準価額の計算式
最終的な類似業種比準価額は、以下の算式で計算されます。
類似業種比準価額 = A × [(ⓑ/B + ⓒ/C × 3 + ⓓ/D) ÷ 5] × 斟酌率
この算式では、利益金額が3倍のウェイトで評価される点が特徴です。
実務上の重要ポイント
1. 配当政策の影響
配当を多く出している会社ほど評価額が高くなります。相続対策として、計画的な配当政策を検討することが重要です。
2. 利益のコントロール
利益金額は3倍のウェイトがあるため、評価額への影響が最も大きくなります。非経常的な利益の除外や、2年平均の選択などを戦略的に検討する必要があります。
3. 純資産の管理
帳簿価額ベースでの純資産が評価に影響します。過大な内部留保は評価額を押し上げる要因となります。
4. 業種目選択の重要性
納税者に有利な業種目を選択できるため、複数の業種目で計算し比較検討することが重要です。特に複数の事業を営んでいる会社では、この選択が評価額に大きく影響します。
5. 株価の時期選択
課税時期の属する月、前年平均、前2年平均のうち、最も低い株価を選択できます。市場の動向を見ながら適切な時期を選択することが可能です。
評価額を下げるための対策
配当面での対策
- 特別配当を活用し、経常配当を抑える
- 無配や低配当政策の検討
利益面での対策
- 非経常的な利益を明確に区分
- 2年平均の活用(利益が減少傾向にある場合)
- 適正な役員報酬の設定
純資産面での対策
- 過大な内部留保の見直し
- 適正な配当政策の実施
まとめ
類似業種比準価額の計算では、配当・利益・純資産という3つの要素を適切に算定することが重要です。特に利益金額は評価額への影響が大きいため、慎重な検討が必要となります。
非上場株式の評価は専門的な知識と経験が必要な複雑な手続きです。適切な評価と効果的な相続対策を行うためには、早めの準備と専門家への相談が重要です。
当事務所では、30年以上の豊富な経験を活かし、お客様の状況に応じた最適な評価方法と相続対策をご提案いたします。非上場株式の評価や事業承継でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な税務アドバイスではありません。実際の税務処理については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
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