これまでの復習
第1回ブログのポイント
親族外承継では49%まで還元法の適用が可能か?M&A・事業承継の事例解説 M&A 4回目
同族株主のいる会社において、同族株主以外の株主は配当還元法で評価できることを説明しました。具体的には:
- 50%以上の同族株主がいる場合:同族株主以外は49%までの贈与又は相続について配当還元法で評価
- 30%以上の同族株主がいる場合:同族株主以外は29%までの贈与又は相続について配当還元法で評価
重要なポイントとして、同族株主以外が49%から数株を取得することで同族株主が入れ替わる可能性があることを指摘しました。この数株は会社を支配する支配権を取得する価値があり、大きな財産価値を持ちます。しかし、税法上の評価は原則法で評価されることになります。 それまでに配当還元法で贈与した評価にはなんの影響もありません。
第2回ブログのポイント
同族株主でも支配権がなければ配当還元方式で評価できる理由を徹底解説 M&A 5回目
会社の経営を承継していない同族株主が、5%未満で贈与又は相続を受ける場合について説明しました。以下の条件を満たせば配当還元法が適用できます:
- 他に中心的な同族株主がいること
- 自身が中心的な同族株主に該当しないこと
- 役員又は役員見込み者でないこと
【同族株主がいる場合の 原則的評価 配当還元法の フローチャート】

今回のテーマ:配当還元法を活用した相続対策
配当還元法適用の戦略的活用
今回は、同族株主のいる会社において、遺言等を活用して意図的に配当還元法の適用条件を満たす株主を作り出す方法について解説します。
適用の要件
5%未満の株式を贈与又は相続する際に配当還元法を適用するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります:
- 他に中心的な同族株主がいること
- 中心的な同族株主に該当しないこと
- 役員または役員見込み者でないこと
遺言による株式分散の実務
遺言を活用することで、相続時に上記の条件を満たす相続人に対して、5%未満の株式を分散して相続させることが可能です。
中心的な同族株主の定義
中心的な同族株主とは、
同族会社における株主で下記の有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主
- 株主等の一人(評価対象者)
- 並びにその配偶者、直系血族、兄弟姉妹
- 一親等の姻族 具体例(配偶者の父母、配偶者の子、評価対象者の子の配偶者)
中心的な同族株主に該当してしまうと【原則的な評価】となりますので25%未満になるように調整します。
相続人だけの遺産分割では中心的な同族株主に該当させないことは難しい
失敗事例
甲が60%を保有する会社について、以下のような遺産分割を行いました:
- 配偶者:8%
- 長女:40%
- 長女の夫:4%(遺贈)
- 次女:4%
- 三女:4%
甲の会社は長女が承継するため長女に40%、長女の夫には4%を遺贈し、次女と三女は会社の経営から離れます。
各相続人に4%としたのは、配当還元法の適用を意図したものです。しかし、同族株主に該当するため、5%未満の長女の夫、次女、三女が中心的な同族株主に該当してしまい原則評価となります。この失敗事例を参考にします。

判定結果
長女の夫の場合
- 本人:4%
- 配偶者(長女):40%
- 配偶者の母:8%
- 合計:52%→中心的な同族株主に該当(NG)
次女の場合
- 本人:4%
- 母:8%
- 長女(姉):40%
- 三女(妹):4%
- 合計:56%→中心的な同族株主に該当(NG)
三女の場合
- 次女と同じ計算で56%→中心的な同族株主に該当(NG)
この場合、誰も配当還元法を使えません。 このように 遺産分割協議では 直系血族や兄弟姉妹の株式について
株式を合計数して25%以上であると【中心的な同族株主】になりますので配当還元法を使うことはできません。
遺言によって意図的に配当還元法が使えるように株式を分散させることが可能となります。
遺言の具体例:成功事例
配当還元法を可能にする遺言の設計
甲が60%を保有する会社について、以下のような遺言を作成した場合:
- 配偶者:8%
- 長女:4%
- 長女の夫:32%
- 次女:4%
- 次女の夫:4%
- 三女:4%
- 三女の夫:4%
判定結果(5%未満で中心的な同族株主に該当しない場合は配当還元法が可能)

長女の場合
- 本人:4%
- 夫:32%
- 母:8%
- 次女:4%
- 三女:4%
- 合計:52%→中心的な同族株主に該当(NG)
次女の場合
- 本人:4%
- 夫:4%
- 母:8%
- 長女:4%
- 三女:4%
- 合計:24%→中心的な同族株主に該当しない(OK)
次女の夫の場合
- 本人:4%
- 配偶者である次女:4%
- 配偶者の母 8%
- 合計:16%→中心的な同族株主に該当しない(OK)
三女の場合
- 次女と同じ計算で24%→中心的な同族株主に該当しない(OK)
三女の夫の場合
- 次女の夫と同じ計算で16%→中心的な同族株主に該当しない(OK)
結果
長女は中心的な同族株主に該当して原則的評価
母は8%なので原則評価
残りの4%を取得した次女、次女の夫、三女、三女の夫の4名(4%×4名=16%)<25% 中心的な同族株主に該当しませんので【その他の株主】として 配当還元法が適用できます。
遺言の注意点
遺言で株式を分散させすぎて【中心的な同族株主】が一人もいないようにしてしまうと上のフローチャートのように
4%未満の同族株主はすべて原則的な評価になってしまいますので注意してください。
配当還元法を活用するための遺言作成のコツ
このように、遺言を利用して5%未満で分割するコツは、相続人には5%未満にすることと、相続人のうちの一人を会社の承継者とした場合には、その相続人以外者(今回の事例では相続人の配偶者)に多くの株を遺言で遺贈させることによって可能となります。
この方法のメリット
このように株式を分散させることを嫌う方もいますが、この事例では大がかりな株価の引き下げ対策をしなくても可能であり、株式の評価の総額が数十億円を超える場合には株価の引き下げが困難である場合などでも、遺言を書くだけで可能となります。
次回予告
次回は、同族会社でない会社の配当還元法の利用方法を具体的に説明します。
同族株主のいる会社で5%未満の株式を遺言で分散することによって配当還元法で相続する方法 法 !社長と税理士の相談事例 M&A 4回目|税理士法人松野茂税理士事務所
同族株主のいる会社で5%未満の株式を遺言で分散することによって配当還元法で相続する方法 3回目 M&A 5回目 !社長と税理士の相談事例 M&A 4回目|税理士法人松野茂税理士事務所(お問い合わせ)
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