今回はスタッフ向けに支配関係のある場合を中心に合併の適格要件を確認したいと思います。
組織再編シリーズ 中小企業における合併の基本
第1回は 完全支配関係の合併
第2回は 支配関係・共同事業の合併
第3回は 繰越欠損金の引継について解説します。
合併の原則課税 非適格(時価課税)+株主課税あり
合併とは2つの会社が1つになることです。消滅する会社を被合併法人、存続する会社を合併法人と言います。被合併法人の事業・資産及び負債・契約その他いろいろなものが合併法人に承継されます。適格合併も非適格合併も同じです。会社法では合併法人が被合併法人の株主に対して合併対価を支払います。法人税法上では合併法人が合併対価を被合併法人に支払い、被合併法人の株主に対価を支払処理を行います。
原則は 被合併法人の資産・負債を時価評価して合併法人は時価で受け入れ処理を行います。被合併法人は合併法人から受け入れた対価を被合併法人の株主に支払いますのでみなし配当課税(総合課税)となります。【非適格合併】と言われてます。
法人税法では、一定の要件を満たす場合には 被合併法人の資産・負債を簿価で受け入れ、合併法人は合併法人の株式を(被合併法人を経由して)被合併法人の株主に交付しまうす。 被合併法人の時価課税及び株主のみなし配当課税はありません。【適格合併】と言われています。
原則 非適格合併
① 被合併法人において含み益に対して時価課税(譲渡損益課税)
② 被合併法人の株主側でみなし配当課税+株式譲渡課税
例外 適格合併
① 合併法人が被合併法人の資産・負債を簿価で受け入れる。
② 株主は課税なし 株式の付け替え計算のみ

株主が法人である場合と個人である場合の違い
被合併法人に資産に含み益がない場合は課税が起こらないので非適格合併でもよいと考えがちですが、株主側ではみなし配当課税が生ずるので安易に非適格合併でも構わないと考えるのは禁物です。
①株主が法人の場合は 【受取配当益金不算入】の取り扱いがあります。
②株主が個人の場合は【配当所得】となりますので総合課税で思わぬ高額の税負担になります。
中小企業の合併のほとんどは適格合併に該当します。 次に合併の場合の適格要件を説明していきます。
完全支配関係・支配関係及び共同事業の判定の時期
適格合併の要件は支配関係の有無に分けられ、50%超の支配関係は完全支配関係の場合の適格要件は金銭不交付要件+株式継続保有見込 に緩和されています。 株式の支配関係は株式の議決権数で判定するのではなく単に株式数で支配関係の割合を求めます。(非上場株式の同族株主の判定とは異なります。)
注意 繰越欠損金の引継などの要件は別にありますので 適格要件と繰越欠損金の引継要件の両方を実務では同時に確認します。
この①②③の判定時期は合併直前に判定します。
M&Aで購入した会社であっても通常は①又は②の適格合併に該当します。

① 完全支配関係 (100%支配関係)
金銭不交付要件+株式継続保有見込
② 50%超支配関係 (100%未満50%超 )
金銭不交付要件+株式継続保有見込
従業者引継+事業継続
③ 共同事業(持ち分割合50%以下の法人間)
金銭不交付要件+株式継続保有見込
従業者引継+事業継続
事業関連性+規模要件又は経営参画
支配関係の形
左が 当事者間の支配関係 真ん中は 逆さが合併 右側は 【一の者】の支配による直接(又は間接)による支配関係図です。 非常に重要な図なので覚えてください。
【一の者】が個人である場合には6親等血族及び3親等の姻族などの特殊管駅舎をを含めて支配関係を判定します。この【一の者】の考え方を理解することも非常に重要です。 支配関係の判定は【一の者】を含めますが個人が一者である場合は無対価で兄弟会社を合併させることはNGとなることがあります。
株主が個人である場合の同一の者による完全支配関係について 国税庁
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/42.htm
無対価合併に係る適格判定について(株主が個人である場合)国税庁https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/20.htm

完全支配関係の親子会社の合併は無対価合併
上の左側の図では、合併法人は被合併法人を受け入れた対価そして合併法人の株式を交付することはできませんので無対価合併となります。
Q 1 合併後 合併法人の株主が株式の全部を売却します。 この合併は 適格合併に該当しますか?
A 合併による株式継続保有要件は 当事者間の株式の保有要件であるので 完全支配関係及び支配関係での合併において当事者間の株式保有要求されているだけで、合併法人の株主の保有を要件としていません。適格合併には該当します。

債務超過会社との合併はどうしたらよいですか?

Q2 個人AさんはA社のオーナーです。 個人BさんはB社のオーナーです。 合併を計画しましたがB社が債務超過なのでBさんには対価を支払いたくありません。 どうすればよいですか?
A 非適格合併に該当すると繰越欠損金が消えてしまいますのでA社がB社の株式の全部を1円で購入して無対価合併をすればよいと思います。 【繰越欠損金の引継】は引継要件を確認しますが、まずは支配関係が生じてから5年経過後の合併は繰越欠損金の引継の要件に抵触しないので親子関係を築いたから5年経過するのを待った方が良いように思います。
個人の一の者間での完全支配関係(支配関係)の合併と事業承継の関係(親族間株式の移動)
Q オーナーは 複数の会社を経営しており 会社を合併によりまとめて合理化をしようと思っています。
でも合併後 オーナーご本人の親族に株式を贈与することを計画していいます。 適格合併に該当しますか?
A 適格合併に該当します。 完全支配関係(支配関係)間での合併の場合は 株主と合併法人との株式継続要件があります。 しかし 個人が【一の者】である株主の場合には 6親等血族及び3親等姻族を含みますので適格合併に該当します。 合併により会社の規模が大会社に該当すると非上場株式の評価が下がりますので事業承継が円滑に行えます。
個人又は法人がが【一の者】である場合の兄弟合併を行い上場会社に株式の49%を売却する場合
Q 一の者が株主である場合の完全支配関係での合併を計画していますが合併直後 上場会社に株式の49%を保有して乗らう予定です。 完全支配関係の合併に該当しますか?
A 一の者が株主の支配関係(50%超での支配関係)での適格合併に該当します。 完全支配関係より従業者引継+事業継続の要件が追加されます。完全支配関係の合併の要件は外れますが適格合併に該当するか要件を確かめます。
一の者が株主である場合の支配関係での株式保有要件は合併後の株式の51%を保有していることですので49%の譲渡は株式継続保有見込要件を満たします。
事務所概要
税理士法人松野茂税理士事務所
代表税理士:松野 茂
社員税理士:山本 由佳
所属税理士:近畿税理士会 尼崎支部
法人登録番号:第6283号
法人番号:4140005027558
適格請求書発行事業者登録番号(インボイス番号):T4140005027558
所在地:〒660-0861 兵庫県尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F
TEL:06-6419-5140
営業時間:平日 9:00〜18:00
