4回 事前確定届出給与のポイント 【尼崎の税理士法人がスタッフ向けに解説】

税理士法人松野4回 事前確定届出給与のポイント 【尼崎の税理士法人がスタッフ向けに解説】茂税理士事務所 

こんにちは。税理士法人松野茂税理士事務所の松野です。

今回は、法人税実務において非常に重要な「事前確定届出給与」について、30年の実務経験を踏まえて詳しく解説いたします。役員賞与を適切に損金算入するためには、この制度の正確な理解が不可欠です。

目次

事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは、役員に対して支給する給与のうち、所定の時期に確定額を支給する旨を定め、事前に税務署に届け出た給与のことです。この届出を適切に行うことで、役員賞与を損金算入することができます。

法的根拠

法人税法第34条第1項第2号に規定されており、法人税基本通達9-2-14において詳細な取扱いが定められています。

届出の提出期限(最重要ポイント)

事前確定届出給与の届出は、提出期限を1日でも過ぎると全額が損金不算入となる非常に厳格な制度です。以下のいずれか早い日が提出期限となります。

通常の提出期限

  1. 株主総会等の決議日から1か月を経過する日
    • 例:定時株主総会が5月25日の場合 → 6月25日まで
  2. 事業年度開始の日から4か月を経過する日
    • 例:4月1日事業年度開始の場合 → 7月31日まで

具体例

  • 3月決算法人で定時株主総会が5月25日の場合
    • 株主総会から1か月:6月25日
    • 事業年度開始から4か月:7月31日
    • 提出期限は6月25日(いずれか早い日)

臨時改定事由による届出

役員の地位に変更があった場合など、臨時改定事由が生じたときは、新たな届出が必要です。

提出期限

臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日と、通常の提出期限のいずれか遅い日までに提出します。

臨時改定事由の例

  • 代表取締役の交代
  • 役員の新規就任
  • 役員の職制上の地位の重大な変更

定期同額給与との関係(重要Q&A)

Q1:定期同額給与と事前確定届出給与は併用できますか?

A:はい、併用可能です。

ただし、それぞれの要件を満たす必要があります。

  • 定期同額給与:毎月同額であること
  • 事前確定届出給与:届出どおりの金額・時期に支給すること

事前確定届出給与は届出と異なる支給をした場合、全額が損金不算入となりますので、特に注意が必要です。

【図:定期同額給与と事前確定届出給与の併用イメージ図を入れる】

実務上のポイント

下記の図は、定期同額給与の改定と事前確定届出給与の関係を示したものです。

事前届け出給与 税理士法人松野茂税理士事務所作成

よくある質問(実務Q&A)

Q2:事前確定届出給与は未払でも損金算入できますか?

A:いいえ、できません。

事前確定届出給与は、届出に記載した支給時期に実際に支給することが要件です。未払計上では損金算入が認められません。確実に資金手当てをして支給する必要があります。

Q3:年2回に分けて支給する届出は可能ですか?

A:はい、可能です。

例えば、夏と冬の年2回、それぞれ異なる金額を支給する届出も認められます。ただし、届出どおりの時期・金額で支給することが絶対条件です。

事前届出給与 支払金額 税理士法人松野茂税理士事務所作成

Q4:翌期の定時株主総会まで支給する届出はできますか?

A:はい、可能です。

事業年度をまたぐ届出も認められます。ただし、判定は事業年度ごとに行います。

事前届出給与 年をまたぐ 税理士法人松野茂税理士事務所作成

判定期間の考え方

  • 当期分:定時株主総会から事業年度終了日まで
  • 翌期分:事業年度開始日から定時株主総会まで

それぞれの期間で、届出どおりの支給がなされているかを判定します。

Q5:やむを得ない事情で提出が遅れた場合は?

A:やむを得ない事情がある場合は、その事情がやんだ日から2か月以内に提出すれば認められます。

ただし、「やむを得ない事情」とは、災害その他これに準ずるような事情に限定されており、単なる失念や多忙などは認められません。 経理担当者などが重篤な病気などの場合は提出が遅れても提出が認められる可能性はあります。

やむを得ない事情に該当するかどうかの判断は慎重に行う必要があり、事前に余裕をもって準備し、確実に通常の期限内に提出することが重要です。

Q6:年の途中で就任した役員の届出期限は?

A:就任日から1か月以内です。

新たに役員に就任した場合や、代表取締役に昇格した場合など、臨時改定事由に該当するケースでは、その事由が生じた日から1か月以内に届出を提出する必要があります。

届出内容を変更したい場合

一度提出した届出内容は、原則として変更できません。

ただし、以下の場合には新たな届出(変更届出)が可能です。

  • 臨時改定事由が生じた場合
  • 業績悪化等による減額(一定の要件あり)

【図:届出内容変更のフロー図を入れる】

実務上の注意点(まとめ)

1. 提出期限の厳守

期限を1日でも過ぎると全額損金不算入となります。余裕をもって準備しましょう。

2. 支給時期・支給金額の厳守

届出と異なる支給は、たとえ金額が少なくても、時期がずれても全額損金不算入です。

3. 資金繰りの確認

未払では損金算入できません。支給時期に確実に資金手当てができることを確認してください。

4. 定期同額給与との整合性

月額給与(定期同額給与)と事前確定届出給与を併用する場合、それぞれの要件を満たす必要があります。

5. 議事録の整備

株主総会議事録、取締役会議事録は適切に作成・保管してください。

おわりに

事前確定届出給与は、適切に活用すれば役員賞与を損金算入できる有用な制度です。しかし、要件が非常に厳格であり、1つでも要件を満たさないと全額が損金不算入となるリスクがあります。

当事務所では、30年の実務経験を活かし、事前確定届出給与の届出から実際の支給まで、トータルでサポートいたします。また、弥生会計やクラウド会計を活用した効率的な給与管理体制の構築もご提案しております。

役員給与の設計でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。


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この記事は2025年11月時点の税法に基づいて作成しています。税制改正により取扱いが変更される場合がありますので、実際の適用にあたっては最新の情報をご確認ください。

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