尼崎の税理士が解説 | 居住用財産の3,000万円特別控除と転勤のケース

税理士法人松野茂税理士事務所 居住用財産の3,000万円特別控除と転勤のケース

尼崎の税理士が実務経験から解説します


目次

はじめに

マイホームを売却したときの3,000万円特別控除(租税特別措置法35条)は、多くの方が利用される重要な特例です。しかし「転勤で一時的に住めなくなった場合はどうなるのか?」というご質問を頻繁にいただきます。

今回は、転勤のケースを中心に、実務でよくある具体例を交えながら、この特例の適用要件とポイントを整理します。


3,000万円特別控除の基本要件

まず、基本的な適用要件を確認しましょう。

主な要件:

  • 自分が住んでいる家屋を売却すること
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却先が配偶者や直系血族などの特別な関係者でないこと
  • 前年・前々年にこの特例を受けていないこと

重要ポイント:「住まなくなってから3年以内」がキーワードです


転勤のケース別・具体例で解説

ケース1:転勤後すぐに売却を決断した場合

【相談事例】 Aさん(40歳・会社員)は、2023年3月に大阪から東京への転勤を命じられました。尼崎市内のマンションには単身赴任で妻と子供が住み続けていましたが、2024年に家族全員で東京へ移住することになり、2024年10月にマンションを売却しました。

【税理士とのQ&A】

Q: 3,000万円控除は使えますか?家族はずっと住んでいたのですが…

A: はい、適用できます。Aさんご自身は転勤していましたが、ご家族が継続して居住していた場合、「生計を一にする配偶者等が居住している」として、Aさんの居住用財産として認められます。売却時点でもご家族が住んでいたため、問題ありません。

適用可否:◯


ケース2:転勤後、家族も引っ越し、空き家期間がある場合

【相談事例】 Bさん(45歳・会社員)は、2022年4月に福岡へ転勤。当初は単身赴任でしたが、2023年6月に家族も福岡へ転居し、尼崎市内の自宅は空き家になりました。その後、2024年8月に売却しました。

【税理士とのQ&A】

Q: 家族が引っ越してから1年以上経っていますが、控除は使えますか?

A: はい、適用できます。重要なのは「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。Bさんのケースでは、家族が転居した2023年6月が「住まなくなった日」となります。2024年8月の売却は、2026年12月31日までの期限内なので、要件を満たしています。

適用可否:◯

【計算期限】

  • 住まなくなった日:2023年6月
  • 期限:2026年12月31日
  • 売却日:2024年8月 → 期限内で適用OK

ケース3:期限ギリギリでの売却

【相談事例】 Cさん(50歳・会社員)は、2022年10月に転勤で家族全員が東京へ転居。尼崎市内の戸建ては賃貸に出さず空き家のままでした。売却活動が難航し、2025年12月に売買契約を締結、2026年2月に引き渡しが完了しました。

【税理士とのQ&A】

Q: 引き渡しが2026年2月ですが、控除は使えますか?

A: 残念ながら、適用できません。「3年を経過する日の属する年の12月31日」は2025年12月31日です。譲渡の時期は原則として「引き渡し日」で判定されるため、2026年2月の引き渡しは期限を過ぎています。契約日ではなく、引き渡し日が基準となる点に注意が必要です。

適用可否:×

【重要な教訓】 期限が近い場合は、引き渡し時期を明確に確認し、年内に完了させることが重要です。


ケース4:賃貸に出してしまった場合

【相談事例】 Dさん(38歳・会社員)は、2023年3月の転勤で家族全員が名古屋へ転居。尼崎市内のマンションは2023年5月から他人に賃貸し、2024年10月に入居者退去後すぐに売却しました。

【税理士とのQ&A】

Q: 賃貸期間は短いのですが、控除は使えますか?

A: 残念ながら、適用できません。居住用財産でなくなった後(この場合は賃貸を開始した時点)は、たとえ3年以内であっても、居住用財産の特例は使えません。「事業用資産」として扱われるためです。

ただし、賃貸に出す前に売却する意思決定をしていれば、状況は変わった可能性があります。転勤時の資産活用は慎重な判断が必要です。

適用可否:×


ケース5:転勤から戻ってきて再居住後の売却

【相談事例】 Eさん(48歳・会社員)は、2021年4月に東京へ転勤し、家族全員で転居。尼崎市内の自宅は空き家にしていました。2023年10月に尼崎へ戻り、再び自宅に居住を開始。2024年12月に売却しました。

【税理士とのQ&A】

Q: 一度転勤で離れましたが、戻ってきて住んでから売却しました。控除は使えますか?

A: はい、適用できます。売却時点で「居住している家屋」として、3,000万円控除の対象になります。転勤で一時的に離れていても、再び居住を開始すれば、その時点から「居住用財産」として扱われます。この場合、空き家期間の3年ルールを気にする必要はありません。

適用可否:◯


ケース6:単身赴任で本人のみ転勤、週末は帰宅している場合

【相談事例】 Fさん(42歳・会社員)は、2023年6月から大阪本社勤務となり、平日は大阪市内の賃貸マンションに居住、週末は尼崎市内の自宅に帰宅していました。家族は尼崎の自宅に継続居住。2024年11月に自宅を売却しました。

【税理士とのQ&A】

Q: 私は単身赴任で平日は大阪にいますが、控除は使えますか?

A: はい、適用できます。生計を一にする配偶者やお子様が継続して居住している場合、Fさんご本人の居住用財産として認められます。さらに、週末に定期的に帰宅されている実態があれば、Fさんご自身も「居住している」と認められる可能性が高いです。

適用可否:◯


実務上の重要ポイント整理

✓ ポイント1:「住まなくなった日」の特定が最重要

  • 本人が転勤したが家族が残った → 家族が引っ越した日
  • 家族全員で転居 → 最後の人が引っ越した日
  • 賃貸に出した → 賃貸開始日(この時点で居住用でなくなる)

✓ ポイント2:3年の計算は「年単位」

  • 2023年6月に転居 → 2026年12月31日まで
  • 日数ではなく「3年を経過する日の属する年の年末」

✓ ポイント3:譲渡時期は「引き渡し日」

  • 契約日ではなく、所有権移転・引き渡しの日で判定
  • 期限ギリギリの場合は、引き渡し時期の設定に注意

✓ ポイント4:家族が居住していれば基本的にOK

  • 単身赴任で本人が不在でも、生計一の家族が居住していれば適用可能
  • 週末帰宅など、定期的な利用実態があればなお良い

✓ ポイント5:賃貸は致命的

  • 短期間でも賃貸に出すと「事業用資産」となり、特例適用不可
  • 空き家のまま維持するか、すぐに売却するかの判断が重要

✓ ポイント6:再居住すればリセット

  • 転勤後に戻ってきて再び住めば、その時点から「居住用財産」
  • 3年ルールは関係なくなる

よくある質問 Q&A

Q1:転勤の予定が曖昧です。いつまでに売却を決断すべきですか?

A: 税務上は「住まなくなってから3年以内の年末まで」が期限ですが、実務的には以下を考慮してください。

  • 売却活動には通常3〜6ヶ月程度かかる
  • 引き渡しまで考えると、期限の半年前には売却活動を開始したい
  • 例:2026年12月31日が期限なら、2026年6月頃までに売却開始が安全

Q2:転勤先で新居を購入した場合、どちらの特例を使うべきですか?

A: 両方の物件で同時に3,000万円控除を使うことはできません(2年間の適用制限)。どちらで利用するかは、譲渡益の金額や将来の売却予定を総合的に判断する必要があります。詳細なシミュレーションをお勧めします。


Q3:転勤が決まってから売却活動を始めました。転勤後の売却でも大丈夫ですか?

A: はい、問題ありません。転勤前から売却活動を開始し、転勤後に売買契約・引き渡しが完了しても、3年以内であれば適用可能です。むしろ、居住中に売却活動を始める方が、買主への印象も良く、スムーズに進むことが多いです。


Q4:住民票は転勤先に移していますが、大丈夫ですか?

A: 住民票の異動だけで判断されるわけではありません。実際の居住実態(生計一の家族の居住、本人の週末帰宅など)が重要です。ただし、住民票の異動日は「住まなくなった日」の判定材料の一つになります。


まとめ:転勤時の売却タイミング判断フローチャート

  1. 家族は残るか?
    • YES → 家族居住中に売却すれば確実に適用可
    • NO → 次へ
  2. 売却までの期間は3年以内か?
    • YES → 次へ
    • NO → 再居住を検討、または特例適用断念
  3. 賃貸に出す予定はあるか?
    • YES → 賃貸前に売却しないと特例不可
    • NO → 空き家のまま3年以内に売却で適用可
  4. 引き渡し時期は期限内に完了するか?
    • YES → 特例適用可能
    • NO → 売却時期の調整が必要

当事務所でのサポート内容

尼崎第一ビル7階、阪神尼崎駅徒歩1分の松野茂税理士事務所では、不動産売却に伴う税務相談を数多く承っております。

サポート内容:

  • 3,000万円特別控除の適用可否判定
  • 売却時期のシミュレーション
  • 確定申告書の作成・提出代行
  • 買い替え特例との有利判定
  • 相続した不動産の売却相談

転勤が決まった時点で、早めにご相談いただくことで、最も有利な売却戦略を立てることができます。

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最後に

転勤による不動産売却は、タイミングと判断が非常に重要です。「3年以内」という期限がありますが、実際には売却活動期間や引き渡し時期を考慮すると、思っているよりも時間的余裕がないケースも多いです。

また、「賃貸に出してしまった」ことで特例が使えなくなるケースも後を絶ちません。転勤が決まった段階で、まずは専門家に相談することをお勧めします。

当事務所では、30年の実務経験と豊富な事例に基づき、お客様一人ひとりの状況に応じた最適なアドバイスを提供しています。不動産売却のご予定がある方は、ぜひお早めにご相談ください。


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