松野先生と事務所スタッフの会話形式で、少額減価償却資産の特例について分かりやすく解説します。
スタッフA(入社2年目):先生、クライアントの中小企業から「パソコンを買い替えたいけど、税務上有利な方法はありますか?」と相談されました。
松野先生:それは「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を活用するチャンスかもしれませんね。この特例を使えば、30万円未満の資産を一括で経費にできるんです。
スタッフA:30万円未満なら何でも一括償却できるのですか?
松野先生:いえいえ、そう簡単ではありません。まず適用要件を確認しましょう。
適用要件の確認
スタッフB(入社1年目):先生、どのような会社がこの特例を使えるのですか?
松野先生:主な要件は以下の通りです:
- 青色申告者であること(法人・個人事業者問わず)
- 資本金1億円以下の法人(個人事業者は制限なし)
- 取得価額が30万円未満の減価償却資産
- 年間合計300万円までという限度額
- 確定申告書に明細書を添付すること
スタッフB:資本金1億円超の大企業は使えないということですね。
松野先生:そうです。中小企業を支援するための特例ですからね。
スタッフC(入社4年目):先生、「30万円未満」の判定で注意点はありますか?
松野先生:重要なポイントですね。例えば、パソコン本体が28万円、プリンターが5万円の場合、一体として使用するものは合計33万円となり、特例の対象外になります。
スタッフC:では、別々に購入すれば両方とも特例が使えるということですか?
松野先生:理論的にはそうですが、実質的に一体として使用するものを意図的に分割購入すると、税務調査で指摘される可能性があります。常識的な判断が必要ですね。
対象となる資産の具体例
スタッフA:具体的にはどのような資産が対象になりますか?
松野先生:幅広い資産が対象になります:
有形固定資産の例
- パソコン、プリンター、コピー機
- 事務机、椅子、キャビネット
- エアコン、冷蔵庫
- 工場の小型機械、工具類
- 車両(30万円未満の中古車など)
無形固定資産の例
- 市販のソフトウェア
- 特許権、商標権
- 著作権
スタッフB:ソフトウェアも対象になるんですね!
松野先生:そうです。最近はクラウド会計ソフトの年間ライセンス料なども、要件を満たせば一括償却できる場合があります。
年間300万円の限度額管理
スタッフD(入社6年目):先生、300万円の限度額はどのように管理すればよいでしょうか?
松野先生:これは非常に重要な点です。事業年度ごとに取得価額の合計が300万円以内でなければなりません。
例:3月決算法人の場合
4月:パソコン5台 @25万円 = 125万円
8月:エアコン3台 @28万円 = 84万円
12月:事務機器 @20万円 = 20万円
2月:ソフトウェア @15万円 = 15万円
合計:244万円(300万円以内なので全額特例適用可能)
スタッフD:もし300万円を超えそうな場合はどうすればよいですか?
松野先生:その場合は、優先順位を考えて特例を適用する資産を選択します。一般的には取得価額の大きいものから特例を適用し、残りは通常の減価償却を行います。
申告書への記載
スタッフE(入社3年目):先生、申告書にはどのように記載するのですか?
松野先生:確定申告書に「少額減価償却資産の明細書」を添付する必要があります。記載内容は:
- 資産の名称
- 取得年月日
- 取得価額
- 設置場所・使用状況
スタッフE:この明細書を添付しないとどうなりますか?
松野先生:特例の適用が認められません。後から修正申告で明細書を提出しても、原則として特例は使えないので注意が必要です。
実務上の注意点
スタッフA:先生、クライアントからよく質問される注意点はありますか?
松野先生:いくつかありますね:
1. 適用期間の確認 措置法の特例なので、適用期間が法改正により延長・変更される可能性があります。常に最新情報を確認しましょう。
2. 所有権移転外リース取引 リース契約でも、所有権移転外リース取引で要件を満たせば特例適用可能です。
3. 中古資産も対象 新品だけでなく中古資産も対象になります。
スタッフB:決算間近でこの特例を使いたい場合は?
松野先生:決算期末までに「取得」し、「事業の用に供する」ことが必要です。購入しただけで使用していない場合は適用できません。
節税効果の検討
スタッフC:先生、この特例の節税効果はどの程度でしょうか?
松野先生:具体例で見てみましょう:
例:パソコン25万円を購入した場合
特例適用あり
- 当期の損金:25万円
- 法人税等軽減額:約7.5万円(実効税率30%の場合)
特例適用なし(4年償却)
- 当期の損金:約6.25万円
- 法人税等軽減額:約1.9万円
差額の約5.6万円が前倒しで節税できます。
スタッフC:かなり大きな効果ですね!
松野先生:ただし、あくまで「税金の支払時期の繰延べ」であることを理解しておきましょう。トータルの税額は変わりませんが、キャッシュフローの改善には非常に有効です。
まとめ
スタッフD:この特例を活用する際のポイントをまとめると?
松野先生:以下の点を押さえておきましょう:
- 青色申告・資本金1億円以下という基本要件の確認
- 30万円未満・年間300万円以内という金額要件の管理
- 申告書への明細書添付を忘れずに
- 取得と事業供用のタイミングに注意
- 計画的な設備投資で最大限活用
適切に活用すれば、中小企業の設備投資促進と資金繰り改善に大いに役立つ制度です。
ご相談がございましたら、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
税理士法人松野茂税理士事務所 〒660-0861 尼崎市御園町24 尼崎第一ビル7F(阪神尼崎駅徒歩1分) TEL: 06-6419-5140 / FAX: 06-6423-7500 Email: info@tax-ms.jp