第2回 尼崎の税理士が解説【特定居住用宅地等の取得者別要件】

松野茂税理士事務所 【特定居住用宅地等の取得者別要件】

前回は小規模宅地等の特例の全体像をご説明しました。今回は、最も利用頻度が高い「特定居住用宅地等」について、取得者ごとの要件を詳しく解説します。

目次

特定居住用宅地等とは

被相続人または生計一親族が居住していた宅地について、330㎡まで80%減額できる特例です。一般的なサラリーマン家庭で最も活用される類型といえます。

取得者別の要件

特定居住用宅地等の特例は、誰が取得するかによって適用要件が大きく異なります。

【①配偶者が取得する場合】

要件:なし(無条件で適用可能)

配偶者が取得する場合、居住継続要件も所有継続要件もありません。相続税の申告期限前に売却しても、転居しても特例の適用を受けられます。

実務上のポイント

  • 最も要件が緩やかで確実に適用できる
  • 配偶者の税額軽減との併用も可能
  • 二次相続も考慮した総合的な判断が必要

【②同居親族が取得する場合】

要件:以下の両方を満たすこと

  1. 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住していること
  2. 相続税の申告期限までその宅地等を所有していること

「同居」の判定

  • 被相続人と同一の家屋に居住していたこと
  • 住民票だけでなく、実態として同居していたかが重要
  • 単身赴任、入院、老人ホーム入所等の場合は個別判断

実務上のポイント

  • 相続開始時点で同居していることが大前提
  • 申告期限(10ヶ月)までの居住・所有継続が必須
  • 申告期限前に売却や転居すると特例適用不可

【③家なき子が取得する場合】

要件:以下のすべてを満たすこと

  1. 被相続人に配偶者がいないこと
  2. 被相続人と同居していた相続人がいないこと
  3. 相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内親族または取得者と特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと
  4. 相続開始時に取得者が居住している家屋を過去に所有したことがないこと
  5. 相続税の申告期限までその宅地等を所有していること

実務上のポイント

  • 平成30年改正で要件が厳格化
  • 持ち家のない相続人に限定される
  • 賃貸住宅居住者でも、過去に持ち家があった場合は不可
  • 相続開始前3年以内に親族の持ち家に居住していた場合も不可
  • 所有継続要件はあるが、居住継続要件はない

【④生計一親族が取得する場合】

被相続人と生計を一にしていた親族が居住していた宅地を、その親族が取得する場合です。

要件:以下の両方を満たすこと

  1. 相続税の申告期限までその家屋に居住していること
  2. 相続税の申告期限までその宅地等を所有していること

「生計を一にする」の判定

  • 同居の場合は原則として生計一と判定
  • 別居の場合は、生活費・学費等の送金状況で個別判断
  • 判定が非常に厳格で難易度が高い

取得者の優先順位はありません。

優先順位というのは条文上 存在していません。非常に勘違いしやすいところです。 下記の要件を満たせば特定居住用宅地等の小規模の特例が受けれます。


被相続人の特定居住用宅地等の場合は、(重要)

①【被相続人の配偶者】には取得要件はありません。

②【被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族】相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること(措置法69の4③二イ)(一棟の建物を理解しないと2世帯住宅は判断できません。次回以降で説明します。)

③家なき子 ①と②がいない場合で日本国籍を有し相続開始3年以内に日本国内にある自己、自己の配偶者、自己の3親等の内の親族又は自己と特別な関係がある法人所有する家屋(相続開始直前において被相続人の居住していた家屋を除く。)に居住したことがないこと。相続開始時に取得者が居住している家屋を一度も取得したことがないこと。相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有していること。 が条件となります。(この部分は一言一句が重要な解釈につながります。 事例をこの文面に当てはめて家なき子は判定します。家なき子はすべて該当するとOKとなりますが事例は少ないように思います。)

被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等

【生計一】は税務の関係者では大きな論点です。いろいろな税の解釈で登場してます。(生計一)とは所得税法の基本通達にありますが、通達からは何も判断できません。他のブログで記事にしていますが最高裁の判決が判断基準となっています。

①被相続人の配偶者(取得者ごとの要件はありません。)

②相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を有していること。

①②に優先順位はありません。家なき子はありません。上の被相続人の居住の用に供していた一棟の家屋の表現ではありません。 2世帯住宅の取り扱いが異なってきます。 実務ではめったに出会うことのない事例です。

細かい論点はいろいろ複雑に絡みますが 次は老人ホームに入所した場合を説明します。

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次回は、特定事業用宅地等と貸付事業用宅地等について解説します。実務でお困りの点があれば、お気軽にお問い合わせください。

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