21回 尼崎の税理士が解説 | 空き家特例の敷地区分【基礎編】母屋と離れがある場合の床面積按分方法

税理士法人松野茂税理士事務所21回 尼崎の税理士が解説 | 空き家特例の敷地区分【基礎編】母屋と離れがある場合の床面積按分方法
目次

はじめに

相続した実家を売却する際、空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)を適用できれば、最大3,000万円の特別控除が受けられます。

しかし、母屋と離れが同一敷地内にある場合、実務上どのように敷地を区分すべきか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。

今回は、税務実務において最も一般的に用いられている床面積割合による按分方法について詳しく解説します。


母屋と離れの敷地区分が必要な理由

空き家特例は、被相続人が居住していた家屋とその敷地のみが対象となります。

母屋に被相続人が居住し、離れは物置や倉庫として使用していた場合:

  • 母屋とその敷地 → 特例適用可能
  • 離れとその敷地 → 特例適用不可

このため、同一敷地内で母屋部分と離れ部分を合理的に区分する必要があります。


床面積割合による按分方法(最も一般的)

計算式

母屋の敷地面積 = 全体敷地面積 × 母屋床面積 ÷ (母屋床面積 + 離れ床面積)

離れの敷地面積 = 全体敷地面積 × 離れ床面積 ÷ (母屋床面積 + 離れ床面積)

具体例で理解する

【前提条件】

  • 敷地全体:400㎡
  • 母屋(被相続人居住):床面積120㎡
  • 離れ(物置使用):床面積40㎡
  • 売却価格:5,000万円(土地・建物一括)

【STEP1】敷地の按分計算

母屋の敷地面積:

400㎡ × 120㎡ ÷ (120㎡ + 40㎡) = 400㎡ × 120㎡ ÷ 160㎡ = 300㎡

離れの敷地面積:

400㎡ × 40㎡ ÷ 160㎡ = 100㎡

【STEP2】空き家特例の適用対象となる譲渡対価の計算

母屋部分(特例適用対象)の譲渡対価:

5,000万円 × 300㎡ ÷ (300㎡ + 120㎡) = 5,000万円 × 300㎡ ÷ 420㎡
= 約3,571万円

【STEP3】特別控除の適用

3,571万円(母屋部分の譲渡対価) – 3,000万円(特別控除) = 571万円

この571万円から取得費・譲渡費用を差し引いて課税所得を計算します。


この方法が一般的な理由

1. 客観性が高い

床面積は登記事項証明書や固定資産税評価証明書で明確に確認できるため、恣意性が入りにくく、税務署も受け入れやすい方法です。

2. 計算が簡便

複雑な実測や評価を必要とせず、既存の資料で計算できます。

3. 合理性がある

建物の規模に応じて敷地を配分するという考え方は、建築基準法上の建ぺい率の考え方とも整合性があります。


実務上の注意点

確定申告時の添付書類

  • 譲渡所得の内訳書(按分計算の明記)
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 登記事項証明書(建物の床面積確認用)
  • 固定資産税評価証明書
  • 按分計算の根拠資料

計算根拠の保存

税務調査時に説明できるよう、按分計算の過程を書面で残しておくことが重要です。

特例要件の確認

床面積按分はあくまで敷地の区分方法です。空き家特例の適用には、以下の要件を満たす必要があります:

  • 相続開始直前に被相続人が一人で居住していたこと
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされていないこと
  • 相続時から譲渡時まで空き家であること
  • 耐震基準を満たすこと(または取り壊すこと)
  • 譲渡対価が1億円以下であること

まとめ

母屋と離れがある場合の敷地区分は、床面積割合による按分方法が最も一般的で実務的です。

ポイント

  • 客観的で税務署に説明しやすい
  • 計算が簡便で誰でも算出可能
  • 登記情報で根拠が明確

ただし、個別の事案によっては別の区分方法が適切な場合もあります。実際の適用にあたっては、必ず税理士にご相談ください。


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