福利厚生費か旅費にするか考えるヒント? ただし私見の©なのでご自身の責任で判断
今回は、会社支給の弁当に関する税務上の取り扱いについて、よくあるご質問をQ&A形式で詳しく解説いたします。
はじめに
従業員への食事支給について「福利厚生費で処理できるのか」「給与課税されるのか」といったご相談を多くいただきます。特に建設業や製造業では、現場が山間部にあり近隣に飲食店がない場合や、出張での現場作業において弁当手配が必要なケースが頻繁にあります。
今回は、会社支給の弁当に関する税務上の取り扱いについて、よくあるご質問をQ&A形式で詳しく解説いたします。
Q1. 弁当を全額会社負担で支給した場合、税務上どのような取り扱いになりますか?
A. 原則として全額が現物給与として課税対象となります。
基本的な考え方
会社が従業員に弁当を無償で支給する場合、税務上は「現物給与」として取り扱われ、原則として給与所得として課税されます。これは、従業員が本来自己負担すべき食事代を会社が負担することで、従業員に経済的利益が発生すると考えられるためです。
非課税となる要件
ただし、以下の2つの要件を両方とも満たす場合は、例外的に非課税として取り扱うことができます:
- 従業員が食事価額の半分以上を負担すること
- 会社負担額が月額3,500円(消費税抜)以下であること
実務上の注意点
役員や特定の従業員のみへの支給は、給与や交際費として認定されるリスクがあります
上記要件を一つでも満たさない場合は、差額課税ではなく全額が課税対象となる点に注意が必要です
月3,500円は消費税抜きの金額であり、10円未満は切り捨てて計算します
Q2. 残業や宿日直の際の食事支給はどうなりますか?
A. 残業・宿日直・日直時の食事は、無料支給でも非課税扱いが可能です。
特例の内容
所得税基本通達36-24により、以下の場合の食事支給は課税されません:
- 残業時の夜食
- 宿日直時の食事
- 日直時の食事
これらは通常の勤務時間外における業務に伴う食事として、特別に非課税扱いが認められています。
適用条件
- 通常の勤務時間外の業務であることが明確であること
- 残業や宿日直の事実が客観的に確認できること
- 社内規程等で明確に定められていること
現金支給の場合
現金で夜食代を支給する場合は、深夜勤務者への1食300円以下の支給に限り非課税となります。それを超える場合は給与課税の対象となります。
Q3. 山奥の出張現場での弁当は旅費交通費として処理できますか?
A. 旅費規程を適切に整備すれば、出張手当(日当)として非課税で処理可能です。
旅費交通費での処理方法
山間部での出張作業における食事については、以下の方法で適正に処理することができます:
1. 日当による処理(推奨)
- 旅費規程に基づく日当に食事代相当額を含めて支給
- 合理的な金額設定(日帰り2,000~4,000円、宿泊3,000~6,000円程度が相場)
- 山間部等の特殊事情による加算(1,000円程度)も合理的範囲内なら可能
2. 実費精算による処理
- 出張中の食事を実費として旅費に含めて精算
- 領収書等の証憑保存が必要
- 過大にならない合理的な範囲内での精算
重複支給の回避
重要なポイントとして、日当を支給している場合に別途弁当を現物支給すると「二重支給」となり、給与課税のリスクが高まります。以下のいずれかの方法で整理することが必要です:
- 日当支給時は弁当の現物支給は行わない
- 弁当支給時は当該分を日当から控除する
- 弁当代の半額以上を従業員から徴収する
旅費規程整備のポイント
適正な旅費処理のためには、以下の要素を含む旅費規程の整備が不可欠です:
精算・証憑管理の方法
出張の定義(距離・時間基準、山間部等僻地の定義)
日当の支給基準(職位別、出張区分別の金額)
食事費の取り扱い(日当に含む旨、重複支給の禁止)
まとめ
会社支給の弁当については、以下の原則を押さえておくことが重要です:
通常の職場での弁当支給
- 従業員が半額以上負担し、かつ会社負担が月3,500円(税抜)以下なら非課税
- それ以外は全額課税対象
残業・宿日直時の食事
- 無料支給でも非課税扱い可能
出張時の食事
重複支給の回避が重要
旅費規程に基づく日当または実費精算で非課税処理可能