尼崎の税理士が解説 会社支給の弁当は課税されるの?税務上の正しい取り扱いを徹底解説 節税第11回

尼崎の税理士法人松野茂税理士事務所 山奥のお年頭の取扱い

福利厚生費か旅費にするか考えるヒント?  ただし私見の©なのでご自身の責任で判断

今回は、会社支給の弁当に関する税務上の取り扱いについて、よくあるご質問をQ&A形式で詳しく解説いたします。

目次

はじめに

従業員への食事支給について「福利厚生費で処理できるのか」「給与課税されるのか」といったご相談を多くいただきます。特に建設業や製造業では、現場が山間部にあり近隣に飲食店がない場合や、出張での現場作業において弁当手配が必要なケースが頻繁にあります。

今回は、会社支給の弁当に関する税務上の取り扱いについて、よくあるご質問をQ&A形式で詳しく解説いたします。

Q1. 弁当を全額会社負担で支給した場合、税務上どのような取り扱いになりますか?

A. 原則として全額が現物給与として課税対象となります。

基本的な考え方

会社が従業員に弁当を無償で支給する場合、税務上は「現物給与」として取り扱われ、原則として給与所得として課税されます。これは、従業員が本来自己負担すべき食事代を会社が負担することで、従業員に経済的利益が発生すると考えられるためです。

非課税となる要件

ただし、以下の2つの要件を両方とも満たす場合は、例外的に非課税として取り扱うことができます:

  1. 従業員が食事価額の半分以上を負担すること
  2. 会社負担額が月額3,500円(消費税抜)以下であること

実務上の注意点

役員や特定の従業員のみへの支給は、給与や交際費として認定されるリスクがあります

上記要件を一つでも満たさない場合は、差額課税ではなく全額が課税対象となる点に注意が必要です

月3,500円は消費税抜きの金額であり、10円未満は切り捨てて計算します

Q2. 残業や宿日直の際の食事支給はどうなりますか?

A. 残業・宿日直・日直時の食事は、無料支給でも非課税扱いが可能です。

特例の内容

所得税基本通達36-24により、以下の場合の食事支給は課税されません:

  • 残業時の夜食
  • 宿日直時の食事
  • 日直時の食事

これらは通常の勤務時間外における業務に伴う食事として、特別に非課税扱いが認められています。

適用条件

  • 通常の勤務時間外の業務であることが明確であること
  • 残業や宿日直の事実が客観的に確認できること
  • 社内規程等で明確に定められていること

現金支給の場合

現金で夜食代を支給する場合は、深夜勤務者への1食300円以下の支給に限り非課税となります。それを超える場合は給与課税の対象となります。

Q3. 山奥の出張現場での弁当は旅費交通費として処理できますか?

A. 旅費規程を適切に整備すれば、出張手当(日当)として非課税で処理可能です。

旅費交通費での処理方法

山間部での出張作業における食事については、以下の方法で適正に処理することができます:

1. 日当による処理(推奨)

  • 旅費規程に基づく日当に食事代相当額を含めて支給
  • 合理的な金額設定(日帰り2,000~4,000円、宿泊3,000~6,000円程度が相場)
  • 山間部等の特殊事情による加算(1,000円程度)も合理的範囲内なら可能

2. 実費精算による処理

  • 出張中の食事を実費として旅費に含めて精算
  • 領収書等の証憑保存が必要
  • 過大にならない合理的な範囲内での精算

重複支給の回避

重要なポイントとして、日当を支給している場合に別途弁当を現物支給すると「二重支給」となり、給与課税のリスクが高まります。以下のいずれかの方法で整理することが必要です:

  • 日当支給時は弁当の現物支給は行わない
  • 弁当支給時は当該分を日当から控除する
  • 弁当代の半額以上を従業員から徴収する

旅費規程整備のポイント

適正な旅費処理のためには、以下の要素を含む旅費規程の整備が不可欠です:

精算・証憑管理の方法

出張の定義(距離・時間基準、山間部等僻地の定義)

日当の支給基準(職位別、出張区分別の金額)

食事費の取り扱い(日当に含む旨、重複支給の禁止)

まとめ

会社支給の弁当については、以下の原則を押さえておくことが重要です:

通常の職場での弁当支給

  • 従業員が半額以上負担し、かつ会社負担が月3,500円(税抜)以下なら非課税
  • それ以外は全額課税対象

残業・宿日直時の食事

  • 無料支給でも非課税扱い可能

出張時の食事

重複支給の回避が重要

旅費規程に基づく日当または実費精算で非課税処理可能

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