尼崎の税理士が節税!法人成り後の社会保険料削減と消費税節税スキーム 連載5回目 税理士松野茂

税理士松野茂作 会社設立を思いついた猫のイラスト 法人設立相談承ります

はじめに

会社経営者の皆様にとって、社会保険料の負担は大きな経営課題の一つです。役員報酬に対して厚生年金保険料と健康保険料を合わせて約30%もの負担が発生し、その半分は給与から天引きされます。一方で、個人事業主は国民年金と国民健康保険に加入することになります。

この社会保険制度の仕組みを理解し、適切に活用することで、合法的に社会保険料を削減し、さらに消費税の節税も実現できるスキームが存在します。今回は、30年の経験を持つ税理士として、この複雑な制度を分かりやすく解説いたします。また この方法とは逆の方法  個人事業がメインで法人サブにして役員報酬8万円にして国民年金と国民健康保険を節約する方法も ご紹介していますので 今回は割愛します。【国保負担を抑える不動産管理会社方式】

目次

社会保険制度の基本構造

会社員・役員の場合

  • 厚生年金保険料 + 健康保険料 = 約30%
  • 会社と個人で折半負担
  • 給与所得者は国民年金・国保への加入不可

個人事業主の場合

  • 国民年金 + 国民健康保険に加入
  • 社会保険への加入は不可

重要なポイント: 給与をもらい社会保険に加入している人は、副業収入がいくら大きくても国民年金・国保の追加負担はありません。

社会保険料削減スキームの具体例

従来の方法(役員報酬のみ)

  • 役員報酬:60万円/月
  • 社会保険料負担:18万円/月(30%)
  • 年間負担額:216万円

改善後の方法(役員報酬 + 個人事業)

  • 役員報酬:30万円/月
  • 個人事業収入:30万円/月
  • 社会保険料負担:9万円/月(30万円の30%)
  • 年間負担額:108万円
  • 削減効果:108万円/年

個人事業収入の創出方法

1. 不動産の貸付

自己所有の自宅の一部を会社に事務所として貸し付け

  • 家賃収入例:15万円/月

2. 車両リース

自己所有の事業用車両を会社にリース

  • 営業車、トラックなど複数台の場合
  • リース料例:3万円/台 × 5台 = 15万円/月

合計個人事業収入:30万円/月 

法人成りの場合には 自宅を会社に貸し付け家賃をもらいます。

車両などは設立した法人へ引き継がずに個人事業として残しておきます。

その車両を会社へリースします。

消費税節税効果

  • 車両帳簿価格:200万円
  • 消費税節税額:20万円(10%)
  • 単純な話で法人へ売却する車両を売却しないのですから消費税は節税できます。

インボイス制度下での戦略

会社側のメリット

  • 不動産賃料・リース料は仕入税額控除の対象
  • 法人成り1〜2年目:2割特例が有利
  • 3年目以降:本則課税 vs 簡易課税を選択

個人側の戦略

  • 1〜2年目:本則課税 or 簡易課税を選択
  • 3年目以降:簡易課税を選択
  • みなし仕入れ率:貸家40%、リース50%

個人は法人成りの時に課税事業者ですから個人が会社から受け取った消費税は申告する必要があります。

会社は2025年の消費税法では2特例があるのでシュミレーションする必要があります。

3年目以降は個人は免税事業者になれますがインボイス登録をして簡易課税を選択しておくとよいでしょう。会社側は個人がインボイス登録をしているので仕入税額控除は100% 会社の100%に仕入税額j控除をと個人の簡易課税のみなし仕入率の差額が毎年節税になります。

売上規模別の消費税シミュレーション

会社売上5,000万円超の場合

  • 会社: 100%仕入税額控除
  • 個人: 貸家40%、リース50%負担
  • 結果: 法人+個人の組み合わせが有利

ベテラン税理士なら経験からどうすればよいのか見当は付きますが念の為にシュミレーションしてして確認しておきます。

小規模な場合

  • リース代金が少額なら雑所得扱い
  • 3年目以降は免税事業者が有利

賃料やリース料が 僅少なら個人が免税となった3年目以降は 個人の所得税・消費税の申告料金が 節税できた金額より少ない場合は3年目は免税でもよいでしょう。

注意点とデメリット

消費税の課税事業者期間

個人事業主時代に基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合、約2年間は消費税の納税義務が継続します。

複雑なシミュレーションが必要

  • 最低5年間の中長期的な試算
  • インボイス登録の要否判断
  • 事業所得 vs 雑所得の区分

事業所得か雑所得の議論 会社の役員は副業で取引をする場合は 不動産所得であるなら5棟10室基準で10万円又は65万円控除の判断(事業的規模の判断をしますが、リースの場合には正規の簿記により経理している場合は事業所得として認めらています。(所得税の第35条雑所得関係)で明らかになっています。でも当事務所は金額が小さければ雑所得 大きければ事業所得として青色申告控除65万円を適用しています。

既存法人での実施方法

すでに法人経営をしている場合:

  1. 会社所有車両を簿価で個人に名義変更
  2. 簿価が高い場合は減価償却で簿価が下がるまで数年待機
  3. 適切なタイミングでスキーム実行

すでに法人成りして数年経過している場合には 会社が所有する車両を法人の簿価などで個人に売却して  法人+個人事業の形を作り出しだします。  個人のインボイス登録は必須ですがリース料金が僅少ならそこまでする必要はないでしょう。

専門家による綿密なシミュレーションの重要性

このスキームは高い節税効果が期待できますが、同時に複雑な制度設計となります。個々の事業形態、売上規模、将来計画に応じた詳細なシミュレーションが不可欠です。

税理士法人松野茂税理士事務所では、30年の実務経験を基に、お客様の状況に最適化した社会保険料削減・消費税節税戦略をご提案いたします。

まとめ

社会保険制度と消費税制度を深く理解し、適切に組み合わせることで:

  • 社会保険料を最大50%削減
  • 消費税の節税効果も実現
  • 中長期的な税務戦略の最適化

が可能となります。ただし、制度の複雑性から専門的な知識と綿密な事前シミュレーションが必須です。

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