未払残業代で裁判に | 経営者が知らない税金・社会保険の落とし穴 | 尼崎の税理士法人が解説

未払残業代で裁判に | 経営者が知らない税金・社会保険の落とし穴 | 尼崎の税理士法人が解説
目次

和解か判決かで、税金と社会保険が180度変わる

労働問題の相談を受けていると、「裁判になったので、あとは弁護士に任せています」という経営者の方が多くおられます。

しかし、労働事件は税務・社会保険の影響を強く受ける分野です。そして、この税務の視点が抜け落ちているケースが非常に多い。

とくに見落とされがちなのが、**「和解で終わるのか、判決まで進むのか」**という一点です。

この分岐だけで、

  • 未払い残業代が給与になるのか
  • 紛争解決金として非課税扱いになるのか
  • 社会保険が遡及されるのか
  • 会社側が追加で何十万〜何百万円負担するのか

すべてが決まってしまいます。

労働事件は法律だけの世界ではありません。税務と社会保険が必ずセットでついてくる領域です。


【結論】未払い残業代の裁判における5つの重要ポイント

まず、初めに結論を書きます。

  1. 未払い残業代の裁判は、労働者側の勝率が80〜90%と非常に高い
  2. 裁判官から「和解を検討しては?」と言われたら、未払い残業代が認定されつつあるサイン
  3. 和解なら名目を自由にでき、給与扱いにならず、税金・社会保険の負担を避けやすい
  4. 判決になると未払い残業代が賃金として確定し、源泉徴収・社保2年遡りが一気に発生
  5. 税務・社保の視点が抜けた対応をすると、会社は数十万〜数百万円の”隠れ負担”が出る

経営者が未払残業代裁判に直面したとき、「和解か判決か」を税務視点で判断することは、実はとても重要です。


1. 労働裁判は「税務と社保」が必ず動く

残業代が認定されれば、税務も社保も動かさざるを得ません。

  • 残業代
  • 解雇無効によるバックペイ
  • 未払い賃金の追加支給

これらはすべて、法律上賃金=給与所得です。会社は源泉徴収を行う義務があり、社会保険料の再計算も必要になります。

つまり、裁判の結果に税務署も年金事務所も従うという構造です。

ここを弁護士が十分に理解していないことが多く、後から税理士・社会保険労務士が苦労することになります。


2. 裁判官から「和解を検討しませんか?」と言われたときの意味

裁判所でよく出てくるフレーズに、

「一度、和解を前提にお話しできませんか?」

があります。

これは単なる提案ではありません。

多くの場合、裁判官はすでに

  • 未払い残業代がある可能性が高い
  • 労働者の主張に一定の合理性がある
  • 判決に進むと会社側の負担が大きくなる

と**”心証”**を持っています。

裁判官が和解をすすめるのは、

  • 「今なら柔らかい落としどころがありますよ」
  • 「判決になると厳しい結果になります」

というサインでもあります。

つまり、和解を求められた時点で、未払い残業代が認定されつつあると理解するのが実務的です。


3. 和解か判決かで税務が180度変わる理由

●和解の場合

和解は事実を認定しません。だから、名目を自由に設計できます

  • 和解金
  • 解決金
  • 紛争解決のための一時金

このように書けば、**給与ではない(=源泉徴収しない)**という扱いにできます。

社会保険の対象にもなりません。

さらに、和解金は本質的に

  • 損害賠償
  • 精神的損害への慰謝料
  • 紛争終結のための一時金

と位置づけることができ、実務では非課税扱いになるように和解文書を作るようです。

弁護士向けの税法解説書(三木先生の著書)でも「和解金は給与ではなく、非課税となる」と説明されています。

これは**”和解だから成立する理論”**です。 

●判決の場合

一方で、判決はすべて事実認定です。

  • 残業をしていた
  • 賃金が支払われていない
  • その金額を支払え

と裁判所が認定するため、法律上、100%の給与になります。

給与なので:

  • 源泉徴収が必要
  • 年末調整の訂正
  • 社会保険料の遡及(原則2年)
  • 労働保険の是正
  • 経理の修正

など、会社側の負担は非常に大きくなります。

判決になると、名目を変える余地が一切ありません。

労働裁判で”判決は負けに等しい”と言われる理由は、法律の結果だけではなく、税務と社保の負担が一気に出るからです。


4. よくある誤解

「和解を求められた時点で、未払い残業代が認められたのでは?」

結論からいうと、“認められた可能性が高い”と裁判官が見ている場合が多いという意味では正しいです。

しかし、和解はあくまで

「事実を確定させずに終わらせる制度」

です。

だからこそ、未払い残業代の有無を明確にしないまま終了できます。

その結果、

  • 給与扱いにならない
  • 非課税扱いの余地がある
  • 社会保険料の遡及も不要

という会社側にとって非常に大きなメリットが生まれます。


5. 判決になった瞬間、すべてが給与で確定する

判決は事実認定ですので、税務署も年金事務所もこれに従います。

  • 未払い残業代
  • 解雇無効のバックペイ
  • 付加金

これらはすべて給与所得です。

判決後に、

  • 「これは非課税です」
  • 「慰謝料です」
  • 「解決金扱いにしたい」

こうした主張は難しいと思います。


6. 会社を守るための”鉄則”

労働裁判において会社側が特に注意すべきポイントをまとめると:

✔ 和解期限は絶対に破らない

裁判官の心証が悪化し、判決に進んでしまう。

✔ 和解書には「給与ではない」ことを明記する

名目設計がもっとも重要。

✔ 判決までの間に熟慮する

税金・社保の負担が一気に増える。相手も負担が増える可能性・会社負担も増える。

✔ 弁護士は税務に詳しくないことを前提に動く

“税務と社保の落とし穴”まで見ている弁護士は稀。

✔ 早期に税理士へ相談する

判決になる前に税務面の対策を行うことができる。


7. まとめ

労働裁判の税務は、専門家でも見落としがちなポイントが非常に多い分野です。

とくに

  • 和解になるか、判決になるか
  • 未払い残業代が認定されるかどうか

この二つで、税金と社会保険の取り扱いがまったく変わります。

和解であれば名目が自由に設計でき、給与ではない扱いにできるため、源泉徴収や社会保険の遡及といった負担を回避できます。

一方で、判決になるとすべてが給与として確定し、会社側の負担は大きく膨らみます。

労働紛争は、法律・税務・社会保険がまとめて動く特殊な領域です。

経営者は、和解の意味判決のリスクを正しく理解することで、余計な金銭負担を避け、会社を守ることができます。


まずはお気軽にご相談ください。


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