非上場会社の株式を相続や贈与で評価する際、まず行うのが「会社規模の判定」です。この判定によって評価方法が決まり、株価に大きく影響します。今回は会社規模判定の実務的なポイントを解説します。
会社規模判定の基本的な考え方
会社規模の判定は、貸借対照表(B/S)の数値に従業員数を加味した判定と、損益計算書(P/L)の数値による判定のいずれか大きい方で、大会社、中会社、小会社の区分を行います。さらに中会社は中会社の大、中会社の中、中会社の小に細分化されます。


B/Sによる判定~直前期末の総資産価額(帳簿価格)
貸倒引当金は資産合計から控除しません。減価償却累計額が資産勘定から控除済み(直接法表示)の場合には、簿価をそのまま使います。圧縮記帳を適用した資産は圧縮後の帳簿価額となります。
帳簿価格の数字を使うのが最大の特徴で、B/Sの規模で判定します。
継続従業員数の計算方法
「評価会社から賃金の支払いを受けて使用されている個人」で、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態や労働時間の長短は問わず含めます。会社の役員などは従業者から除きます。
「直前期末以前1年間」が対象で、その1年間を通じて継続勤務した者(一週間30時間以上など就業規則上のフルタイム基準を満たす者)がまず継続勤務従業員数になります。
パート・アルバイト等の非継続勤務分は、その1年間の総労働時間を1人当たり年間平均労働時間(通達上1,800時間)で除して人数換算し、継続勤務従業員数に加算して「従業員数」とします。
総資産価額と従業者数の判定ルール
総資産価額及び従業者数の区分では、いずれか少ない方となります。
例えば卸売業であれば、総資産価額3億円であっても従業者5名であれば小会社に該当します。従業者が1名増えると5人超になり中会社の小に該当します。
従業者が70人以上の場合は判定は不要で大会社に該当します。
P/Lによる判定~直前期末以前1年間の取引金額
その期間における会社の目的とする事業による収入金額で、一般には損益計算書の売上高が用いられます(本業と無関係な臨時収入は含めない)。
事業年度が1年未満・変更している場合
直前期の事業年度が1年未満でも、原則は「直前期末以前1年間の実際の取引金額」を用います。その1年間の金額を明確に区分できない場合には、該当期間の売上を月数按分で求めます。
B/Sの直前期末の総資産価額(帳簿価格)と従業者数はいずれか小さい判定、直前期末以前1年間の取引金額P/Lの判定は、いずれか大きい方で判定します。
大会社の基本的な評価方法
大会社は原則、「類似業種比準方式」により1株当たり価額を計算します。
大会社の株式は、類似業種比準方式だけでなく、「純資産価額方式」による評価も認められており、どちらか低い方を選択することができます。
実務では、類似業種比準価額と純資産価額をそれぞれ算定し、有利な(低い)評価額を選択することが、相続・贈与時の株価対策として一般的です。
中会社の評価方法
中会社の評価方法は、原則として「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の併用方式(折衷方式)です。
併用に用いる比率は、会社規模に応じて「中会社の大・中・小」に区分されます。
- 中会社の大:類似業種比準価額×90%+純資産価額×10%
- 中会社の中:類似業種比準価額×75%+純資産価額×25%
- 中会社の小:類似業種比準価額×60%+純資産価額×40%
中会社についても、大会社と同様、併用方式より純資産価額方式のみで評価した方が低くなる場合は、純資産価額方式単独の選択が認められます。
実務では、類似業種比準価額・併用方式・純資産価額方式を比較し、最も低い評価額となる方式を選択して株価対策に活用することが多いです。
小会社の評価方法
小会社は原則として純資産価額方式によって評価するとされています。
小会社でも、類似業種比準方式と純資産価額方式の「50%:50%の併用方式」による評価が認められています。
業種の区分判定
非上場株式の「業種の区分」は、類似業種比準価額方式を使う際に、評価会社の売上構成を基に、日本標準産業分類との対応表で判定するのが基本です。
判定の基本ルール
業種区分は、会社規模判定にも用いた「直前期末以前1年間の取引金額(売上高)」を事業別に分解し、その構成比で決めます。
1つの事業の売上割合が50%を超える場合、その事業に対応する小分類(または中分類・大分類)が、その会社の業種目となります。
事業が複数ある場合
複数事業で、特定の小分類が50%超にならないときは、関連する中分類や大分類でまとめて業種目を判定します。
例として、専門サービス・広告・物品賃貸など複数事業を行い、各小分類が50%未満でも、合算した中分類・大分類が50%を超えると、その大分類(例:専門・技術サービス業)が採用されます。
日本標準産業分類との対応
実務では、日本標準産業分類と「類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(国税庁公表)」を使い、自社の事業内容に最も近い小分類・中分類・大分類を選びます。
判定した業種目をもとに、その業種目の「業種目別株価等一覧表」(類似業種別の配当・利益・簿価純資産・株価)から数値を拾い、類似業種比準価額を計算します。
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