3回【尼崎の税理士が解説】老人ホーム入居後も小規模宅地等の特例は使える?相続税の実務上の注意点

尼崎の松野茂税理士事務所 】老人ホーム入居後も小規模宅地等の特例は使える

相続税の申告において、自宅の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」は非常に重要な制度です。しかし、被相続人が老人ホームに入居していた場合、この特例が適用できるのか迷われる方も多いのではないでしょうか。今回は、老人ホーム入居時の小規模宅地等の特例について、実務上の重要なポイントを詳しく解説します。

目次

老人ホーム入居者への特例適用の法的根拠

老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば「みなし居住用宅地」として特例の適用が可能です。この取扱いは、租税特別措置法施行令第40条の2第2項第1号ロに明示されています。

条文の要旨: 被相続人が心身の障害のために居住していた家屋に住めなくなり、その家屋に居住しなくなった場合でも、当該家屋及びその敷地が引き続き被相続人の所有に属していたものについては、居住用宅地等として扱われます。

国税庁の取扱い

国税庁の質疑応答事例および相続税基本通達24の4-6では、以下のように示されています。

被相続人が要介護認定を受け、特別養護老人ホーム等に入所したために居住していなかった場合であっても、当該家屋が引き続きその者の所有に属し、かつ他人の居住に供されていない場合には、被相続人の「居住の用に供されていた宅地」として取り扱われます。

適用のための具体的要件

要件①:施設入居の事実

被相続人が要介護認定・要支援認定・障害者支援などにより施設に入居していたこと。

重要な点:

  • 相続開始直前の判定で足ります
  • 空き家特例のように「入居直前」に要介護認定を受けている必要はありません

要件②:家屋の使用状況

その建物を事業の用又は被相続人等(被相続人と生計を一にし、かつ、その建物に引き続き居住している親族を含む)以外の者の居住の用にしていないこと。

解釈のポイント: そのまま同居親族がいる、または新たに他人が住み込んでいないことが条件となります。なお、家財などを残している、住める状態であることは空き家特例や居住用財産の3千万円控除と同様の考え方です。

実務上最も注意が必要なところ

老人ホームの生計一の判定相続開始前ではなく入居直前と記載があります。)

個人的には入居直前の判定は生活の実態を考慮した救済措置と考えています。

被相続人が老人ホームに入居する具体例の判定

通達を覚えてもなかなか理解ができないところです。 小規模宅地等での判定で一番難しいと思ってます。

同居の場合 老人ホームに入居直前は同居です。すべてOK

老人ホームの入居で同居のまま時間が止まる感じかな?

ケース1:同居親族が被相続人と別居後も生計一。

判定:○ 被相続人の居住用宅地等(生計一親族の居住用宅地等にも該当します。)

ケース2:同居親族が被相続人と別居後 生計別。

判定:〇   被相続人の居住用宅地等

ケース3:同居親族が別居となりその家屋から引っ越し 生計一。

判定:〇   被相続人の居住用宅地等

ケース4:同居親族が別居となりその家屋から後引っ越し。

判定:〇   被相続人の居住用宅地等

一人で住んでいた場合は 要注意です。生計一の難しい判定 必要

ケース1:被相続人が1人で住んでいた家屋に他から生計一親族が住みついた。

判定:〇  被相続人の居住用宅地等(生計一親族の居住用宅地等にも該当します。)

これは難問 老人ホームの入居直前で生計一の判断+相続直前はみなし同居なのかな?と思われます。生計一親族の居住用宅地等の方が理解しやすいです。 小規模宅地等の適用を受ける相続人の範囲が両者は異なります。

ケース2:被相続人が1人で住んでいた家屋に他から別生計親族が住みついた。

判定:× 老人ホームに入所直前の判定で弾かれますね。覚え方はいろいろあると思います。

空き家は 通達にある通り 住んでいるものとする。です。

 しかし 配偶者も同居親族もいないから難しそう?検討の余地はあるのかな?と思います。

ケース:被相続人が1人で住んでいたので空き家となった

判定:○  被相続人の居住用宅地等を検討することになります。

賃貸に出すと 貸家になりますね。

ケース:被相続人が1人で住んでいたので賃貸にした場合

判定:要検討 貸家としての小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の適用可能性を検討することになります。

貸家も改正があったので難しそうですね?

まとめ

実務では複雑な事例が多くその都度事例集での確認と通達の読み込みが必要になります。小規模宅地は数年ごとに改正が入り、改正後は小規模宅地等が使いえないケースが多くあります。令和7年の措置法や通達を整理しました。他の先生や税務署とは解釈の違うこともあります。改正により変わることもあります。現在の通達を読んで理解を深めてください。

この記事は一般人向けに説明しておりすべてを書いているものではありません。個々の事案は専門の先生の指導において正しい小規模宅地等の判定を行ってください。

令和7年10月8日 投稿記事作成


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