32回 【尼崎の税理士が解説】空き家特例Q&A – 他の税制との併用関係 相続関連

税理士法人松野茂是利子事務所 32回 【尼崎の税理士が解説】空き家特例Q&A - 他の税制との併用関係 相続関連

税理士法人松野茂税理士事務所の専門解説シリーズとして、空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)と他の規定との関係について、実務上重要なポイントを整理いたします。

目次

Q1. 同一年中に自己の居住用財産の3,000万円控除と空き家特例を受けることは可能ですか?

A. 可能です。ただし、控除限度額は合計で3,000万円となります。

根拠条文: 租税特別措置法35条3項 同一年中に35条1項(居住用財産の3,000万円控除)と35条3項(空き家特例)の両方の適用を受ける場合、それぞれの特別控除額の合計額は3,000万円が限度となる旨が明記されています。

実務上の留意点:

  • 例えば、自己居住用で2,000万円の譲渡益、空き家で1,500万円の譲渡益がある場合、合計3,500万円のうち3,000万円まで控除可能
  • 配分は納税者が任意に選択できます

Q2. 空き家特例適用後、翌年に自己の居住用財産の3,000万円控除を受けることは可能ですか?

A. 可能です。年度をまたぐ場合の制限はありません。

根拠条文: 租税特別措置法35条2項、36条の2第3項 居住用財産の3,000万円控除には「前年又は前々年に適用を受けている場合は適用しない」という制限規定がありますが(措法35条2項)、空き家特例(35条3項)はこの制限規定の対象から除外されています。

実務上の留意点:

  • 空き家特例→翌年居住用3,000万円控除:制限なし
  • 居住用3,000万円控除→翌年空き家特例:制限なし
  • ただし、居住用財産の買換え特例や交換特例との関係では別途制限あり

Q3. 被相続人の居住用家屋を相続人が共有し、自己も居住していた場合、両特例の併用は可能ですか?

A. 可能です。ただし、控除限度額は3,000万円です。

具体例: 家屋1/2、敷地1/2を相続人が所有していた場合

  • 相続持分1/2:空き家特例適用
  • 自己所有分1/2:居住用財産の3,000万円控除適用
  • 合計で3,000万円が限度(措法35条3項)

実務上の留意点:

  • 適用要件の判定は持分ごとに行う
  • 空き家特例は「被相続人が一人で居住していたこと」が要件のため、相続人の居住部分は対象外
  • 登記簿上の持分割合で按分計算

Q4. 空き家特例と居住用財産の軽減税率(10年超所有)の併用は可能ですか?

A. 併用できません。

根拠条文: 租税特別措置法31条の3第2項 居住用財産の軽減税率の適用を受ける場合、措法35条(3,000万円控除及び空き家特例)の適用を受けることができない旨が規定されています。

実務上の選択:

  • 3,000万円控除(空き家特例):譲渡益から3,000万円控除
  • 軽減税率:6,000万円以下の部分10%、超える部分15%(住民税含む14.21%、20.315%)
  • 有利判定が必要

Q5. 空き家特例と住宅ローン控除の重複適用は可能ですか?

A. 可能です。

根拠条文: 租税特別措置法41条19項、41条の3の2第8項 住宅ローン控除の適用制限は、措法31条の3(居住用財産の軽減税率)、36条の2(居住用財産の買換え特例)、36条の5(交換特例)が対象であり、35条3項(空き家特例)は除外されています。

実務上の留意点:

  • 空き家を売却して3,000万円控除を受け、同年に新居を購入して住宅ローン控除も可能
  • ただし、買換え特例を使うと住宅ローン控除は適用不可

Q6. 空き家特例と相続税の取得費加算の特例の併用は可能ですか?

A. 選択適用となり、重複適用はできません。

根拠条文: 租税特別措置法35条3項、39条1項 空き家特例の適用を受ける場合、同一の資産について相続税の取得費加算(措法39条)の適用を受けることができない旨が明記されています。

実務上の有利選択:

  • 空き家特例:譲渡益から最大3,000万円控除
  • 取得費加算:相続税額のうち一定額を取得費に加算
  • 相続税額、譲渡益の大きさにより有利判定が必要

Q7. 店舗併用住宅で空き家特例を適用する場合、店舗部分の取得費加算は可能ですか?

A. 可能です。

根拠: 措法35条3項の適用除外規定の解釈 空き家特例の対象となる「居住用部分」と、対象とならない「店舗部分」は別個の資産として取扱います。

実務上の計算例:

  • 居住用部分(床面積60%):空き家特例3,000万円控除
  • 店舗部分(床面積40%):取得費加算適用可能
  • ただし、一体として譲渡している場合は按分計算

Q8. 母屋で空き家特例を適用する場合、離れ等の別棟建物の取得費加算は可能ですか?

A. 可能です。

根拠: 措法35条3項の「被相続人居住用家屋」の範囲 空き家特例の対象は「被相続人が主として居住していた一の建築物」に限定されます。別棟の建物は空き家特例の対象外となるため、当該建物及びその敷地については取得費加算の適用が可能です。

実務上の留意点:

  • 「一の建築物」の判定が重要
  • 登記上別個の建物であることが明確な場合は別資産として取扱い可能
  • 敷地の按分計算に注意

Q9. 譲渡価額が1億円を超えることが判明し、空き家特例が適用できなくなった場合、修正申告で取得費加算を適用できますか?

A. 適用できません。

根拠条文: 租税特別措置法39条1項 取得費加算の特例は、確定申告書に措法39条の規定の適用を受ける旨の記載があり、一定の書類を添付した場合に限り適用されます(当初申告要件)。

実務上の重要ポイント:

  • 空き家特例には譲渡対価の額が1億円以下という要件あり(措法35条3項)
  • 当初申告で空き家特例を選択した場合、取得費加算の適用を受ける旨の記載なし
  • 後日、共有者の譲渡等により1億円超が判明しても、修正申告で取得費加算への変更不可
  • 申告時の慎重な判断が必要

【追加Q&A】実務上重要な論点

Q10. 空き家特例と固定資産の交換特例(措法37条)の併用は可能ですか?

A. 併用できません。

根拠条文: 租税特別措置法35条2項、37条8項 居住用財産の3,000万円控除(35条)と固定資産の交換特例は、相互に適用制限があります。空き家特例も35条に含まれるため、同様の制限を受けます。

Q11. 相続開始前に被相続人が老人ホームに入居していた場合でも空き家特例は適用できますか?

A. 一定の要件を満たせば適用可能です。

根拠条文: 租税特別措置法35条3項、措令23条1項 要介護認定等を受け、老人ホーム等に入所していた場合でも、以下の要件を満たせば「被相続人居住用家屋」として認められます:

  • 介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと
  • 老人ホーム等に入所していたこと
  • 家屋が相続開始直前まで事業用等に供されていないこと
  • 被相続人が一人で居住していたこと(入所前)

Q12. 空き家とその敷地を異なる年に譲渡した場合、両方で特例適用は可能ですか?

A. 原則として適用できません。

根拠: 措法35条3項の「一体としての譲渡」要件 空き家特例は、被相続人居住用家屋及びその敷地を一体として譲渡した場合に適用されます。ただし、家屋除却後の敷地のみの譲渡は認められています。

実務上の例外:

  • 家屋を除却→翌年に敷地を譲渡:適用可能
  • 家屋を先に譲渡→翌年に敷地:原則適用不可

本解説は、令和7年10月5日現在の法令に基づいています。

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