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役員退職金の分割支払いが可能なケース
役員退職金は必ずしも一括で支払う必要はありません。適切な手続きを踏むことで、分割での支払いが可能です。ただし、税務上の取り扱いには十分な注意が必要です。
分割支払いの種類と税務処理
数回の分割で支払う場合
法人税法上の取り扱い
- 株主総会の決議等により退職金の総額が確定した日の属する事業年度で損金算入
- 役員退職金の未払経理が可能
- 確定時に全額を損金として処理
毎年定額の分割払いで支給する場合
法人税法上の取り扱い
- 退職金を支払った都度、損金算入することが認められる
- 支給のタイミングに合わせた損金処理
みなし退職の取り扱いと制限
みなし退職となるケース
以下のような場合は、実際には退職しなくても退職金の支給が認められます:
- 常勤役員が非常勤役員になった場合
- 取締役が監査役になった場合
- 分掌変更等により役員の給与が激変(概ね50%以下)した場合
平成19年改正による重要な制限
みなし退職の場合の未払金処理
- みなし退職給与の場合、未払金等の額は含まれない
- 未払経理は認められない
- 法人税法では、みなし退職金による安易な利益調整を防止
退職年金での支給時の詳細な税務処理
損金算入の方法
方法①:確定時一括計上
- 株主総会等の決議により総額が確定した日の事業年度に未払計上
- 総額を申告調整で益金算入
- 実際の支給時に申告調整で減算して損金算入
方法②:支払時損金算入
- 退職金を支払った都度、損金算入
源泉徴収の具体的方法
- 確定した退職金の総額で源泉所得税を計算
- 実際の支給額で按分計算して、その都度徴収・納付
計算例
- 退職金総額:2,400万円
- 年間支給額:400万円(6年分割)
- 源泉税総額を6分割して毎年徴収
一時払いと分割払いの所得税上の違い
一時払いの場合
- 退職所得として課税
- 退職所得控除の適用あり
- 税負担が軽減される
分割払いの場合
- 雑所得として課税
- 退職所得控除の適用なし
- 毎年の所得として累進税率が適用
退職金財源の確保が重要
分割支払いを選択する場合、以下の点が重要です:
- 長期にわたる支払い能力の確保
- 会社の財務状況の変化への対応
- 適切な資金計画の策定
税務処理上の注意点
高額な退職金のリスク
- 役員退職金は高額になりがち
- 税務処理を誤ると予想外の税負担が発生
- 十分な時間をかけた検討が必要
実務上のポイント
- 株主総会決議の内容を明確にする
- 分割方法と支給時期を具体的に定める
- 源泉徴収の計算ミスを防ぐ
- みなし退職の該当性を慎重に判断
まとめ
役員退職金の分割支払いは、適切に行えば会社の資金繰りと役員の税負担の両面でメリットがあります。しかし、以下の要素を総合的に判断する必要があります:
検討すべき要素
- 会社の資金繰り状況
- 役員の税負担(退職所得 vs 雑所得)
- みなし退職の該当性
- 源泉徴収の正確な処理
重要なポイント
- 一時払いと分割払いの税負担の違いを十分に比較検討
- 適切な株主総会決議と税務処理の実行
- 長期的な視点での財源確保
専門的なサポートが不可欠
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税理士法人松野茂税理士事務所
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