はじめに
ある日突然、税務署から「税務調査を実施したい」という連絡が入ったら、多くの経営者様が動揺されるのは当然のことです。「何か問題があったのだろうか」「追徴課税されるのでは」と不安になるお気持ちはよく分かります。
しかし、税務調査は決して「悪いことをした会社」だけが受けるものではありません。適切な準備と対応を行えば、過度に恐れる必要はないのです。
税理士法人松野茂税理士事務所では、長年にわたり数多くの税務調査に立ち会い、お客様をサポートしてまいりました。この記事では、その豊富な経験をもとに、税務調査の連絡を受けてから解決までの流れを、実践的にご説明いたします。
1. 税務調査とは?まず知っておくべき基礎知識
税務調査の目的
税務調査とは、納税者が正しく申告・納税しているかを税務署が確認する手続きです。申告内容に誤りがあれば修正を求め、適正な税額を確保することが目的です。
調査の種類
任意調査(一般的な調査) 事前に連絡があり、日程調整が可能な調査です。ほとんどの税務調査がこれに該当します。「任意」とはいえ、正当な理由なく拒否することはできません。
強制調査(査察調査) 脱税の疑いが強い場合に、裁判所の令状を得て行われる調査です。一般的な会社では、ほぼ該当しません。
どんな会社が調査対象になるのか
- 売上が急激に増減している会社
- 設立後3年から5年程度経過した会社
- 前回調査から数年経過している会社
- 業種的に現金取引が多い会社
- 消費税の還付申告がある会社
重要:調査対象になること自体は、不正を疑われているわけではありません。
2. 税務調査の連絡が来たら – 初動対応が重要です
まず落ち着いて確認すべきこと
税務署から連絡があったら、以下の情報を必ず確認してください。
- 調査担当者の所属部署と氏名
- 調査対象期間(何年分が対象か)
- 調査対象税目(法人税、消費税、源泉所得税など)
- 調査予定日(候補日)
- 必要な書類の範囲
すぐに税理士に連絡してください
税務調査の連絡を受けたら、まず顧問税理士に連絡することが最優先です。
顧問税理士がいる場合、税務署は通常、税理士に先に連絡します。もし会社に直接連絡があった場合は、「顧問税理士がおりますので、そちらに連絡していただけますか」と伝えましょう。
顧問税理士がいない、または税務調査の経験が少ない税理士の場合は、税務調査に精通した税理士にセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。
調査日程の調整
調査日程は、一定の範囲内で調整が可能です。以下のような理由があれば、変更を申し出ることができます。
- 決算期末や繁忙期で業務に支障が出る
- 経営者が出張で不在
- 重要な会議や商談が入っている
ただし、無理な延期要求は印象を悪くする可能性があるため、税理士と相談のうえ判断しましょう。
3. 税務調査前の準備 – 成否を分ける重要なステップ
書類の整理と確認
必ず準備すべき書類
- 総勘定元帳、仕訳帳などの会計帳簿
- 請求書、領収書、レシート等の証憑書類
- 預金通帳(会社名義、代表者名義)
- 契約書、覚書
- 株主総会議事録、取締役会議事録
- 給与台帳、源泉徴収簿
- 固定資産台帳
- 売上・仕入に関する資料
整理のポイント
弥生会計やクラウド会計で記帳されている場合でも、証憑書類の原本確認は必須です。以下の点をチェックしましょう。
- 領収書等が月別・科目別に整理されているか
- 金額の大きな取引の契約書等が揃っているか
- 期末在庫の棚卸資料があるか
- 現金出納帳と実際の現金残高が一致しているか
想定質問への準備
税務調査では、以下のような質問がよくあります。事前に回答を整理しておきましょう。
会社概要について
- 事業内容の詳細
- 主要取引先
- 従業員数と組織体制
- 売上の計上基準
経理体制について
- 経理担当者は誰か
- 記帳方法(自社記帳、記帳代行)
- 使用している会計ソフト
- 現金管理の方法
経営状況について
- 売上が増減した理由
- 利益率が変動した原因
- 新規事業や設備投資の有無
社内体制の確認
調査当日の応対者を決める
- 代表者(経営判断について説明)
- 経理責任者(日常の経理処理について説明)
- 顧問税理士(税務的な質問に対応)
従業員への説明
調査官から従業員に直接質問される場合もあります。事前に「税務調査が入ること」「不明な点は答えず、経理担当者または税理士に確認してもらうよう伝えること」を周知しておきましょう。
税理士との事前打ち合わせ
調査の数日前に、税理士と以下の点を確認しておくことが重要です。
- 指摘されやすいポイントの洗い出し
- 説明が難しい取引の対応方針
- 回答すべきこと、回答を控えるべきことの整理
- 当日の役割分担
4. 税務調査当日の流れと対応のポイント
調査1日目:午前(概況説明)
9:00-10:00 調査官の来訪
調査官は通常2名で来訪します。応接室など落ち着いて話ができる場所を用意しましょう。
挨拶と会社概要の説明
まず、代表者が会社の事業内容、沿革、組織体制などを説明します。この段階では、自然体で会社の実態を伝えることが大切です。
対応のポイント
- 質問されたことに簡潔に答える
- 余計な情報を自ら提供しない
- 分からないことは「確認します」と答える
調査1日目:午前~午後(帳簿調査)
帳簿書類の確認
調査官は、総勘定元帳や仕訳帳を確認しながら、気になる取引について質問してきます。
よく確認される項目
- 売上の計上時期と金額
- 外注費と給与の区分
- 交際費の内容
- 役員報酬・賞与
- 貸付金・仮払金などの科目
- 消費税の課税区分
書類提示のポイント
調査官から書類の提示を求められたら、該当する書類を速やかに提示します。ただし、求められていない書類まで出す必要はありません。
調査2日目以降(必要に応じて)
複雑な取引がある場合や、確認事項が多い場合は、調査が複数日にわたることがあります。
追加資料の要求への対応
「○○の資料を見せてください」と言われた場合:
- すぐに用意できるものは速やかに提示
- 作成に時間がかかるものは「○日後に提出します」と約束
- 存在しないものは「ありません」と正直に答える
金庫や引き出しの確認
調査官から金庫や机の引き出しを見せるよう求められることがあります。任意調査なので強制力はありませんが、無用な疑いを避けるため、通常は応じた方が良いでしょう。
税理士立会いの重要性
税理士が同席することで
- 不適切な質問に対してその場で反論できる
- 税務的な専門用語の解説ができる
- 調査官との交渉を代行できる
- その場での不利な発言を防げる
豊富な経験から申し上げますと、税理士の立会いの有無で調査結果が大きく変わることは少なくありません。
5. 税務調査終了後の対応
調査講評(終了時の説明)
調査の最終日に、調査官から指摘事項の説明があります。これを「講評」と呼びます。
講評での説明内容
- 指摘事項とその理由
- 修正が必要な税額の概算
- 今後の流れ
この段階では、まだ正式な処分ではありません。指摘内容に疑問があれば、その場で税理士を通じて質問しましょう。
修正申告か、更正か
修正申告(自主的に訂正)
指摘内容に納得できる場合は、修正申告を行います。この場合、過少申告加算税が軽減されます(10%→5%)。
更正(税務署が処分)
指摘内容に納得できない場合は、修正申告を行わず、税務署の更正処分を待つことになります。この場合、過少申告加算税は軽減されません(10%)。
税理士と相談のうえ判断
どちらを選択すべきかは、指摘内容の妥当性、金額の大きさ、争った場合の勝算などを総合的に判断します。必ず税理士と相談して決定しましょう。
加算税・延滞税の計算
過少申告加算税
- 修正申告の場合:追加税額の5%(一部は10%)
- 更正の場合:追加税額の10%(一部は15%)
重加算税
- 仮装・隠蔽があった場合:追加税額の35%(無申告の場合は40%)
延滞税
- 本来の納期限から修正申告書提出日(または更正の日)までの期間に応じて計算
- 年率:時期により変動(令和6年は8.7%など)
納付方法と期限
修正申告書を提出した場合、同時に追加本税、加算税、延滞税を納付する必要があります。
一括納付が困難な場合は、税務署に相談することで、分割納付が認められる場合もあります。
6. 税務調査でよく指摘される項目
売上の計上漏れ・期ズレ
指摘されやすいケース
- 期末の売上を翌期に計上している
- 着手金や前受金の処理が不適切
- 売上値引きや返品の処理に誤りがある
対策
- 売上計上基準を明確にする
- 期末の売掛金残高と取引先の買掛金残高が一致しているか確認
- 期末の棚卸しを正確に行う
経費の私的使用
指摘されやすいケース
- 社用車を私的に使用している
- 社宅家賃の自己負担額が不足している
- 交際費に代表者の個人的な飲食が含まれている
対策
- 会社の支出と個人の支出を明確に区分
- 社用車の使用記録をつける
- 役員社宅は適正な家賃を徴収する
外注費と給与の区分
指摘されやすいケース
- 実質的には雇用関係にある者への支払いを外注費としている
- 源泉徴収が必要なのに行っていない
対策
- 請負契約の実態を確認
- 指揮命令関係の有無
- 報酬の決定方法(時間給か成果報酬か)
交際費と会議費の区分
指摘されやすいケース
- 1人当たり5,000円を超える飲食費を会議費としている
- 取引先との飲食を会議費としている
対策
- 飲食の参加者、場所、目的を記録
- 1人当たり5,000円超は交際費として処理
- 社内での会議は会議費として区分可能
消費税の課税区分ミス
指摘されやすいケース
- 課税売上と非課税売上の区分が不適切
- 仕入税額控除の要件(請求書等の保存)を満たしていない
- 簡易課税の事業区分が誤っている
対策
- 取引ごとに課税区分を確認
- インボイス制度に対応した請求書の保存
- 事業区分を正確に判定
7. 日頃からできる税務調査対策
正確な記帳と証憑書類の保管
弥生会計・クラウド会計の活用
会計ソフトを使用していても、入力の正確性が重要です。以下のポイントに注意しましょう。
- 取引の都度、速やかに記帳する
- 摘要欄に取引の内容を具体的に記載
- 補助科目や部門を活用して詳細管理
- 定期的に残高確認(預金、売掛金、買掛金など)
証憑書類の保管
法人税法上、帳簿書類は7年間(欠損金がある場合は10年間)の保存義務があります。
- 月別・科目別にファイリング
- 電子帳簿保存法に対応した保存方法の検討
- 契約書等の重要書類は別途保管
定期的な税理士チェックの重要性
毎月の巡回監査
税理士が毎月訪問し、記帳内容をチェックすることで、誤りを早期に発見・修正できます。これは税務調査対策として非常に有効です。
決算前検討
決算の数か月前に、税理士と決算予測や税額シミュレーションを行い、節税対策や資金繰り対策を検討します。
税制改正への対応
税制は毎年改正されます。最新の税制に対応した申告を行うため、税理士との定期的な情報交換が欠かせません。
8. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 税務調査はどのくらいの頻度で来ますか?
A. 一般的には5年から10年に1回程度ですが、会社の規模や業種、過去の申告状況により異なります。
Q2. 調査期間はどのくらいですか?
A. 通常は2日から3日程度ですが、複雑な取引がある場合や規模の大きい会社では1週間以上かかることもあります。
Q3. 税務調査を拒否できますか?
A. 任意調査とはいえ、正当な理由なく拒否することはできません。拒否すると、罰則や不利益処分を受ける可能性があります。
Q4. 修正申告をすると必ず追徴課税されますか?
A. はい。修正申告では本税に加えて、過少申告加算税と延滞税が課されます。ただし、重加算税は仮装・隠蔽があった場合のみです。
Q5. 顧問税理士がいない場合、どうすればよいですか?
A. 税務調査の連絡を受けてから税理士を探すことも可能です。当事務所では、税務調査のみのスポット対応も承っております。
Q6. 過去の申告に不安がある場合、どうすればよいですか?
A. 税務調査の前に自主的に修正申告を行うことで、加算税が免除される場合があります。まずは税理士にご相談ください。
9. まとめ – 税務調査は適切な対応で乗り切れます
税務調査は、多くの経営者様にとって大きなストレスとなります。しかし、以下のポイントを押さえれば、過度に恐れる必要はありません。
税務調査を乗り切る5つのポイント
- すぐに税理士に連絡する – 専門家のサポートが成否を分けます
- 事前準備を徹底する – 書類整理と想定質問への準備が重要
- 調査官の質問に誠実に対応する – 嘘や隠し事は絶対に避ける
- その場で判断しない – 不明点は税理士と相談してから回答
- 日頃から適正な経理処理を心がける – 予防が最大の対策
専門家のサポートが不可欠です
税務調査は、税務の専門知識と実務経験がなければ、適切に対応することが困難です。特に、調査官との交渉、指摘事項への反論、修正申告の要否判断などは、経験豊富な税理士のサポートが不可欠です。
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税理士法人松野茂税理士事務所では、長年にわたる豊富な実績をもとに、税務調査の準備から立会い、解決まで、お客様を全面的にサポートいたします。
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- M&Aや組織再編を行った後の調査で、複雑な税務処理の説明が必要
- 相続税や贈与税の調査にどう対応すればよいか分からない
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【更新日】2025年10月7日
【監修】税理士法人松野茂税理士事務所 代表税理士 松野 茂
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