5回 尼崎の税理士が解説|平成26年改正後の小規模宅地特例と二世帯住宅の取扱い

税理士法人松野茂是利子事務所 尼崎の税理士が解説|平成26年改正後の小規模宅地特例と二世帯住宅の取扱い

投稿日:2025年10月7日

相続税の申告において、最も重要な節税制度の一つが「小規模宅地等の特例」です。この特例は数年ごとに取扱いが見直されており、特に二世帯住宅については平成26年1月の税制改正で大きな変更がありました。今回は、この改正内容と二世帯住宅における小規模宅地特例の取扱いについて、条文を参照しながら詳しく解説いたします。

目次

小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例は、租税特別措置法第69条の4に規定されており、被相続人が居住していた宅地等を相続した場合、一定の要件を満たすことで、330㎡まで80%の評価減額を受けられる制度です。

例えば、評価額1億円の土地であれば、特例適用後は2,000万円の評価となり、8,000万円もの評価減を受けることができます。相続税の負担を大幅に軽減できる、非常に重要な制度です。

平成26年改正前の二世帯住宅の取扱い

改正前の問題点

平成25年末までは、二世帯住宅の場合、建物内部で親世帯と子世帯が自由に行き来できる構造でなければ、「同居」とは認められませんでした。

改正前の取扱い:

  • 非分離型(内部で行き来可能) → 同居と認定され、特例適用○
  • 完全分離型(内部で行き来不可) → 別居と判断され、特例適用×

このため、玄関が別々で内部に階段や通路がない完全分離型の二世帯住宅では、実際には同じ建物で生活していても、小規模宅地特例が使えないという不合理な状況が生じていました。

平成26年税制改正の内容

改正の背景

「同じ屋根の下で暮らしているにもかかわらず、建物の構造だけで相続税が何千万円も変わるのはおかしい」という声を受けて、平成25年度税制改正が行われました。

改正後の取扱い(平成26年1月1日以降の相続)

改正により、建物内部で行き来ができない完全分離型の二世帯住宅であっても、一定の要件を満たせば小規模宅地特例の適用が可能となりました。

これを「みなし同居」と呼びます。つまり、実際には各世帯が独立した生活空間を持っていても、税法上は「同居している」とみなされるようになったのです。

【重要】区分所有登記の有無による違い

平成26年改正後も、二世帯住宅で特例を受けるためには、登記の形態が極めて重要です。

区分所有登記なしの場合(特例適用○)

適用可能な登記形態:

  1. 単独登記 – 親または子の単独名義
  2. 共有登記 – 親と子の共有名義

これらの登記形態であれば、建物の構造にかかわらず(完全分離型でも)、土地全体に小規模宅地特例を適用できます。

ポイント:

  • 玄関が別々でも適用可
  • 内部で行き来できなくても適用可
  • ただし、区分所有登記されていないことが必須

区分所有登記ありの場合(特例適用×)

区分所有登記とは: 分譲マンションのように、1階と2階を別々の独立した不動産として登記する方法です。

具体例:

  • 1階部分:父の所有(登記上も独立)
  • 2階部分:長男の所有(登記上も独立)

このように区分所有登記されている場合、同じ建物であっても「別々の住居」とみなされ、小規模宅地特例は適用できません

改正の議論の中で、「一つ屋根の下なら同居とすると、分譲マンションの別の部屋に住んでいる場合も同居になってしまう」という指摘があり、区分所有登記の場合は適用除外とされました。

みなし同居の意味

「みなし同居」とは、実態として各世帯が独立した生活を営んでいても、税法上は同居していると取り扱うという考え方です。

みなし同居が認められる要件

  1. 一つの建物であること(登記上も一戸の建物)
  2. 区分所有登記されていないこと
  3. 被相続人と相続人が同じ建物に居住していること

この3つの要件を満たせば、玄関が別々で内部に階段がなくても、「みなし同居」として小規模宅地特例が適用されます。

みなし同居が認められない場合

  • 区分所有登記されている二世帯住宅
  • 同じ敷地内の別棟に住んでいる場合
  • 渡り廊下でつながっていても、登記上別の建物の場合

実務上の注意点

1. 登記の確認が最重要

建物の構造よりも、登記の形態が決定的に重要です。相続が発生する前に、必ず登記簿謄本を確認してください。

2. 区分所有登記の解消

もし区分所有登記されている場合は、相続発生前に登記を変更する必要があります。ただし、贈与税や不動産取得税が発生する可能性があるため、必ず専門家に相談してください。

主な方法:

  • 一方の所有部分をもう一方に贈与する
  • 区分合併登記を行う

3. 申告期限までの居住要件

小規模宅地特例を受けるためには、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)まで、相続人がその土地に居住し、かつ所有していることが必要です。

4. 数年ごとの改正に注意

小規模宅地特例は数年ごとに取扱いが変更されることがあります。最新の情報を常に確認することが重要です。

まとめ

平成26年税制改正により、完全分離型の二世帯住宅でも小規模宅地特例が使えるようになりましたが、区分所有登記の有無が決定的な分かれ目となります。

チェックポイント:

  • ✓ 建物が区分所有登記されていないか確認
  • ✓ 単独登記または共有登記になっているか確認
  • ✓ 申告期限まで居住・所有を継続する
  • ✓ 相続税の申告書を必ず提出する(税額ゼロでも)

二世帯住宅での相続をご検討の方は、登記の形態によって相続税が数千万円単位で変わる可能性があります。早めに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。


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