相続税対策において重要な「家なき子特例」について、実務で遭遇しやすいケースをQ&A形式で解説します。令和7年10月時点の最新要件に基づいた内容です。
家なき子特例とは
「家なき子特例」は、被相続人と同居していなかった親族でも、一定の要件を満たせば土地の評価額を最大80%減額できる制度です。平成30年改正により要件が厳格化されていますので、注意が必要です。
適用要件の確認
被相続人側の要件
- 相続開始直前に配偶者がいないこと
- 相続開始直前に自宅に同居している法定相続人がいないこと
- 居住制限納税義務者等の制限に該当しないこと
相続人(取得者)側の要件
- 相続開始前3年以内に以下の家屋に居住していないこと
- 自己名義の家屋
- 自己の配偶者名義の家屋
- 自己の三親等内の親族所有の家屋
- 自己と特別関係法人所有の家屋
- ※被相続人居住家屋を除く
- 相続した土地を申告期限(10ヶ月)まで所有し続けること
- 相続開始時に住んでいる家を過去に一度も所有したことがないこと
実務でよくある質問Q&A
Q1. 被相続人が配偶者と同居していた場合、家なき子が取得できますか?
A. 適用不可(NG)
配偶者がいる場合は、家なき子特例の要件を満たしません。配偶者の有無が最初の判定ポイントです。
Q2. 相続後に空き家となったので賃貸に出しました。特例は使えますか?
A. 適用可能(OK)
利用要件は特にありません。相続税の申告期限まで保有していればOKです。
実務上の重要な注意点: 申告期限前に売却するとNGです。これは税理士として最も注意すべきポイントです。申告後に安心していると、知らない間にクライアントが売却してしまうケースがあります。「聞いていない」というトラブルを避けるため、売却しない旨の確認書にサインをいただくことをお勧めします。
Q3. 空き家となったので取り壊しました。特例は使えますか?
A. 適用可能(OK)
申告期限まで土地を継続保有していれば問題ありません。建物の有無は要件に含まれていません。
Q4. 被相続人が相続開始直前に弟(法定相続人でない)と同居していた場合は?
A. 適用可能(OK)
弟は相続人ではないため、「同居法定相続人がいない」という要件を満たします。同居の有無ではなく、同居「法定相続人」の有無がポイントです。
Q5. 被相続人が従弟に遺贈した場合は適用できますか?
A. 適用可能(OK)
相続または遺贈による取得が要件です。配偶者および同居法定相続人がいない場合は、遺贈でも特例の適用が可能です。
【難問】自己所有家屋に関する例外規定
Q6. 長男が被相続人の土地に家を建て同居していたが、2年前に会社都合で社宅住まいとなった。その後、長男が敷地を相続した場合は?
A. 適用可能(OK)
これは非常に重要な例外規定です。
原則として、相続開始前3年以内に自己所有の家屋に住んでいた場合はNGです。しかし、その家屋に被相続人と同居していた場合は例外的に認められます。
厳密には「家なき子」ではなく、「自己の家を出た人」として覚えておきましょう。この例外規定は実務でも見落としやすいポイントですので、必ず確認してください。
まとめ
家なき子特例は相続税の大幅な節税につながる重要な制度ですが、平成30年改正により要件が厳格化されています。特に以下の点に注意が必要です:
- 申告期限までの継続保有要件(売却に注意)
- 3年以内の居住制限の詳細な確認
- 例外規定の適用可否
実務では、クライアントへの丁寧な説明と、売却防止の確認書取得が重要です。
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