尼崎の税理士が解説:青色申告の特典と損失が出た場合の対策 (Q&A形式)

尼崎の税理士法人松野茂税理士事務所 青色申告の特典

事業を営んでいると、好調な年もあれば厳しい年もあります。青色申告には様々な特典があり、特に損失が出た場合の純損失繰越控除・繰戻還付制度は事業継続の強力なサポートとなります。尼崎の税理士が、よくあるご質問にお答えします。

目次

青色申告の主要特典

Q1: 青色申告特別控除はどのくらいお得なの?

A: 記帳方法により最大65万円の控除が受けられます。

控除額と条件

  • 65万円控除:電子申告または電子帳簿保存で複式簿記
  • 55万円控除:複式簿記で貸借対照表・損益計算書を添付
  • 10万円控除:簡易簿記の場合

節税効果例(所得500万円の場合)

  • 白色申告:所得500万円 → 所得税約51万円
  • 青色65万円控除:所得435万円 → 所得税約38万円
  • 年間約13万円の節税

Q2: 家族への給与はどこまで経費にできるの?

A: 青色事業専従者給与なら、適正な金額であれば制限なく全額経費計上できます。

青色 vs 白色の比較

  • 青色申告:配偶者月25万円、子月15万円 = 年間480万円経費化
  • 白色申告:配偶者86万円、子50万円 = 年間136万円のみ

実際の節税効果(税率20%の場合)

  • 青色:480万円×20% = 96万円の節税
  • 白色:136万円×20% = 27万円の節税
  • 差額:年間69万円

Q3: 設備投資した年の特典は?

A: 30万円未満の資産を年間300万円まで一括償却できます。

具体例:美容院の設備投資

  • 施術椅子25万円×8台 = 200万円
  • 青色申告:初年度に200万円全額経費 → 約60万円の節税効果
  • 白色申告:10万円未満のみ一括償却、25万円の椅子は減価償却

資金繰りと税負担の両面で大きなメリットがあります。

Q4: 貸倒引当金って設定できるの?

A: 青色申告なら売掛金等の5.5%を貸倒引当金として経費計上できます。

建設業の例

  • 売掛金残高:2,000万円
  • 貸倒引当金:2,000万円×5.5% = 110万円
  • 節税効果:約33万円

白色申告では実際に貸倒れが発生するまで経費計上できません。

損失が出た場合の特別な仕組み

Q5: 純損失の繰越控除って何ですか?

A: 青色申告者が赤字(純損失)を出した場合、その損失を3年間にわたって翌年以降の黒字から差し引ける制度です。

具体例:飲食店の場合

  • 令和3年:コロナ禍で純損失400万円
  • 令和4年:回復して所得150万円 → 課税所得0円(損失残250万円)
  • 令和5年:所得200万円 → 課税所得0円(損失残50万円)
  • 令和6年:所得100万円 → 課税所得50万円

この3年間で約110万円の所得税が軽減されます。

Q6: 繰戻還付とはどんな制度ですか?

A: 当年に純損失が生じた場合、前年の黒字と相殺して前年に納めた所得税の還付を受けられる制度です。現金が手元に戻ってくるのが最大のメリットです。

具体例:製造業の場合

  • 令和5年:所得600万円、所得税約62万円を納付済み
  • 令和6年:設備故障で純損失300万円発生
  • 還付税額:300万円分の所得税約31万円が現金で戻る

Q7: 白色申告だと損失はどうなるの?

A: 白色申告では損失の繰越も繰戻もできません。赤字はその年限りで消滅してしまいます。

比較例:個人事業主の場合

  • 青色申告:3年間の損失繰越で総額100万円以上の節税
  • 白色申告:損失は切り捨て、節税効果なし

この差は経営への影響が非常に大きいです。

Q8: 青色申告にするにはどうすればいいの?

A: 青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。重要なのはタイミングです。

  • 新規開業:開業から2ヶ月以内
  • 既存事業者:適用を受けたい年の3月15日まで
  • 例:令和7年分から適用 → 令和7年3月15日までに申請

注意:損失が出てからの事後申請はできません!

複雑なケースについて

Q9: 複数年にわたって大きな損失が出た場合は?

A: 繰戻還付と繰越控除を組み合わせて最大限活用できます。

IT事業者の事業拡大失敗例

  • 令和2年:所得300万円(税額9万円納付済み)
  • 令和3年:純損失1,200万円発生
  • 即座の処理:令和2年分と繰戻 → 9万円還付
  • その後3年間:毎年の黒字と相殺で大幅節税

合計で200万円以上の節税効果が期待できます。

Q10: 家族経営の場合、どんなメリットがあるの?

A: 青色事業専従者給与との併用で絶大な効果を発揮します。

比較例:年間所得800万円、配偶者・子が従事

  • 青色申告:専従者給与420万円+特別控除65万円 → 所得税約32万円
  • 白色申告:専従者控除136万円のみ → 所得税約97万円
  • 年間節税効果:約65万円

さらに損失が出た年は、これらの効果が将来に繰り越されます。

Q11: 事業をやめる時の損失はどうなるの?

A: 他に所得があれば、3年間の繰越控除が活用できます。

小売業廃止の例

  • 廃止年:在庫処分損等で純損失800万円
  • 不動産所得:年間300万円継続
  • 3年間:不動産所得から毎年300万円ずつ控除
  • 4年目以降:通常の課税に戻る

実務上の注意点

Q12: 繰戻還付の申請はいつまでに?

A: 損失が生じた年の翌年3月15日までです。

還付時期の目安

  • 3月15日申告 → 5月末頃還付
  • 2月中の早期申告 → 4月中旬頃還付

資金繰りが厳しい時期だからこそ、早めの申請がおすすめです。

Q13: 税務調査は受けやすくなるの?

A: 繰戻還付を申請すると調査対象になる可能性が高くなります。しかし適正な処理であれば全く問題ありません。

事前準備のポイント

  • 損失の合理的な説明資料
  • 適正な帳簿書類の整備
  • 領収書等の完全保存

当事務所では調査対応も含めてサポートいたします。

Q14: どちらを選ぶべき?繰戻還付 vs 繰越控除

A: 基本的に繰戻還付がおすすめですが、将来の所得見込みによって判断が変わります。

繰戻還付が有利なケース

  • 前年の税率が高い(高所得)
  • 将来の所得見込みが低い
  • 資金繰りが厳しい

繰越控除が有利なケース

  • 前年の所得が少ない
  • 将来大きな所得が見込める

まとめ

青色申告のその他の主要特典

Q15: 青色申告にするとトータルでどのくらいお得?

A: 業種や規模により異なりますが、年間数十万円から数百万円の節税が可能です。

総合事例:個人事業主(年間所得800万円、家族経営)

青色申告の場合

  • 青色申告特別控除:65万円
  • 専従者給与:420万円(配偶者240万円、子180万円)
  • 一括償却:50万円(設備投資)
  • 貸倒引当金:30万円
  • 課税所得:800万円-565万円 = 235万円
  • 所得税額:約23万円

白色申告の場合

  • 専従者控除:136万円のみ
  • 課税所得:800万円-136万円 = 664万円
  • 所得税額:約97万円

年間節税効果:約74万円

青色申告を始めるための準備

Q16: 記帳はどの程度大変なの?

A: 現在はクラウド会計ソフトにより、格段に簡単になっています。

当事務所のサポート体制

  • 弥生会計での記帳代行
  • クラウド会計(freee、マネーフォワード等)への移行支援
  • DXを活用した効率的な記帳指導

専門知識は私たちにお任せいただき、事業主様は本業に集中していただけます。

Q17: 今からでも青色申告に変更できる?

A: 来年分からの適用であれば、今年の3月15日までに申請すれば間に合います。

申請スケジュール例

  • 令和7年分から青色申告希望 → 令和7年3月15日まで申請
  • 令和7年1月から記帳開始 → 令和8年3月15日に初回青色申告

早めの準備で、来年から大幅な節税効果を享受できます。

まとめ

青色申告は単なる損失処理だけでなく、事業経営全般にわたって強力なメリットをもたらします。特に尼崎エリアの中小企業や個人事業主の皆様にとって、厳しい経営環境を乗り越える重要な武器となります。

主要メリットのまとめ

  • 最大65万円の特別控除
  • 家族への給与を全額経費化
  • 損失の3年繰越・1年繰戻
  • 設備投資の一括償却
  • 貸倒引当金の設定

これらを合計すると、年間数十万円から数百万円の節税効果が期待できます。

ただし、制度の適用には適正な青色申告が前提条件です。また、複雑なケースでは専門的な判断が必要になることも多々あります。


免責条項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。具体的な適用については税理士にご相談ください。

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