インボイス制度により余計な仕事が増えた。
インボイス制度の導入により、会計業界全体に大きな影響が生じています。弊事務所でも日々の記帳業務において、従来とは異なる対応が必要となっております。今回は、インボイス制度下での実務上のポイントについて解説いたします。
インボイス制度の基本原則
原則:登録番号なしでは仕入税額控除不可
インボイス制度の根幹は、適格請求書(インボイス)に記載された登録番号の確認です。登録番号が記載されていない請求書等については、原則として仕入税額控除を受けることができません。
適格請求書発行事業者と区分記載請求書の違い
- 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者):税務署に登録申請を行い、登録番号(Tから始まる13桁)を取得した課税事業者
- 区分記載請求書:従来の請求書に軽減税率対象商品の明記などを追加したもの(インボイス制度導入前)
適格請求書発行事業者からの仕入れのみが仕入税額控除の対象となるため、取引先が登録事業者かどうかの確認が重要です。免税事業者や未登録事業者からの仕入れは、原則として仕入税額控除を受けることができません。
少額特例による緩和措置
ただし、以下の条件を満たす場合は少額特例が適用されます:
- 基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者
- 税込支払対価の額が1万円未満の課税仕入れ
この少額特例により、1万円未満の少額な取引については、インボイスの保存がなくても仕入税額控除が可能となります。
経過措置の段階的縮小に注意
インボイス登録事業者以外からの仕入れに関する経過措置
インボイス登録事業者以外(免税事業者や未登録事業者)からの仕入れについては、経過措置が設けられていますが、段階的に縮小されます:
- 令和5年10月1日~令和8年9月30日:仕入税額相当額の80%控除
- 令和8年10月1日~令和11年9月30日:仕入税額相当額の50%控除
- 令和11年10月1日以降:0%控除(控除不可)
実務上の注意点
この経過措置により、同じ取引先(免税事業者等)でも取引時期によって仕入税額控除の割合が変わります。会計システムでは、取引日に応じて自動的に適切な控除率を適用する設定が必要となり、手動での区分コード設定や定期的な見直し作業が発生します。
また、取引先が途中でインボイス登録事業者になった場合や、逆に登録を取り消した場合の処理についても注意が必要です。
実務上の課題:カード明細の限界
目視確認が不可欠
クレジットカード明細には、以下の重要な情報が記載されていません:
- インボイスの登録番号
- 消費税率区分(標準税率10%・軽減税率8%)
- 税込・税抜の区別
そのため、請求書や領収書など、これらの情報が記載された書類での確認が必須となります。特に軽減税率対象商品(食料品・新聞等)を含む取引では、税率区分の正確な把握が重要です。適用で判断できる場合もあります。
これまで以上に、原始証憑の保管と確認作業が重要になっています。
アマゾン取引の特殊事情
アマゾンでの購入は特に注意が必要です:
- カード明細には「アマゾン」とのみ記載
- 具体的な商品名や勘定科目が不明
- 複数商品の一括決済により内容の特定が困難
効率化ツールの活用
Googleアドインの活用
アマゾン取引については、一括でインボイス番号を調べることができるGoogleアドインが提供されています。このようなツールを活用することで、作業効率を向上させることができます。
自動仕訳システムの限界と対策
最終チェックは人の目で
弥生会計をはじめとするクラウド会計ソフトでは、自動仕訳機能やCSV連携機能が充実しています。しかし、以下の点については自動化に限界があります:
1. 勘定科目のチェック(正確性約70%) 同じ取引先でも購入内容により「消耗品費」「会議費」「交通費」など異なる科目になるため、人による判断が必要です。
2. 金額のチェック(正確性ほぼ100%)
3. 消費税の課税区分チェック
- 課税取引(10%・8%)
- 非課税取引
- 不課税取引
- 免税取引
- 適格事業者 区分記載
これらの判定は取引内容を理解した上での専門的判断が必要です。
4. 区分記載から適格請求書への消費税区分コード修正 従来の区分記載請求書時代の消費税区分コードから、インボイス制度に対応した新しいコード体系への修正作業が発生しています。特に、適格請求書発行事業者以外からの仕入れについては、経過措置に応じた区分コードの設定が必要です。
5. インボイス番号の確認 最も重要なのは、適格請求書に記載されたインボイス登録番号(Tから始まる13桁)の目視確認です。この作業は完全に人の手による確認が不可欠となります。
まとめ
インボイス制度の導入により、従来の自動化だけでは対応できない部分が増加しました。適切な税務処理のためには、システムの活用と人による最終確認を組み合わせたアプローチが重要です。
最後は 会計ソフトに起動入力された仕訳は 科目 金額 適用 消費税の課税区分(適格・区分記載)を人が見て修正することになります。