目次
はじめに
税理士法人松野茂税理士事務所の松野です。実は私、税理士になる前は銀行員として働いていました。今回は、その経験を活かして「銀行担当者が融資審査で損益計算書のどこを重点的に見ているか」を、実際の審査現場の視点からお話しします。
経営者の皆さまにとって、銀行との付き合いは事業継続に欠かせません。融資を受ける際、決算書のどの部分が重要視されるのかを知っておくことで、より戦略的な資金調達が可能になります。
銀行担当者の審査順序(私の実体験より)
① 最初に見るのは「当期純利益」(損益計算書の一番下)
銀行員時代、私はまず決算書の一番下の「当期純利益」から見ていました。
なぜ最初に当期純利益を見るのか?
- 最終的に利益が残っているかどうかが、返済能力に直結するから
- 赤字の場合、「資金が減っている=返済原資が不足」と判断せざるを得ない
- 黒字であっても、その中身を詳しく見る必要があるかの判断材料
私の心の声(当時):「まずは結果を見て、詳細分析が必要かどうかを判断しよう」
② 次に確認する「経常利益」
当期純利益を確認した後、必ず経常利益をチェックしていました。
経常利益を重視する理由
- 本業+金融取引の成果を示す、会社の実力を測る重要指標
- 特別損益を除いた「通常の事業活動での稼ぐ力」が分かる
- 経常利益が安定して黒字なら、多少の特別損失は許容できる
私の心の声(当時):「本業でしっかり稼げているなら、返済は大丈夫そうだ」
③ 「営業利益」で本業の力を測定
経常利益の次は営業利益です。
営業利益のチェックポイント
- 販売費及び一般管理費を含めた、純粋な本業での収益力
- 営業赤字が続いている場合、事業の継続性に疑問符
- 金融収益に依存していない「真の事業力」を判断
私の心の声(当時):「本業が赤字では、いくら預金利息があっても将来が不安だ」
④ 「売上総利益(粗利)」で収益構造を分析
粗利率の変化を注意深く見ていた理由
- 売上に対してどのくらい利益が出ているかの効率性
- 粗利率の低下は、仕入コスト上昇や値下げ圧力を示唆
- 業界平均との比較で競争力を測定
私の心の声(当時):「粗利率が下がっているなら、その原因と対策を聞こう」
⑤ 最後に「売上高の推移」で安定性を確認
売上高で見ていたポイント
- 急激な増加よりも、安定した成長を評価
- 一過性の大型受注に依存していないか
- 市場環境や競合状況との整合性
私の心の声(当時):「売上が急に増えても、来年も続くとは限らない」
元銀行員として企業にお伝えしたいこと
銀行担当者の本音
- 最終利益が黒字でも、内容が不安定だと融資は慎重になる
- 経常利益がしっかり黒字なら、融資後の返済原資として安心できる
- 売上の大きさより、利益の質を重視する
- 赤字の場合、新規融資より既存融資の条件変更を検討することが多い
融資を受けやすくするポイント
売上の安定成長:急激な変動よりも持続可能な成長
経常利益の安定性を重視:一時的な特別利益に頼らない収益構造
粗利率の維持・向上:原価管理と適正な価格設定
営業利益の黒字確保:本業での確実な収益力