元銀行員が明かす「融資審査で損益計算書のどこを見るか

税理士法人松野茂税理士事務所 元銀行員からの融資判断
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はじめに

税理士法人松野茂税理士事務所の松野です。実は私、税理士になる前は銀行員として働いていました。今回は、その経験を活かして「銀行担当者が融資審査で損益計算書のどこを重点的に見ているか」を、実際の審査現場の視点からお話しします。

経営者の皆さまにとって、銀行との付き合いは事業継続に欠かせません。融資を受ける際、決算書のどの部分が重要視されるのかを知っておくことで、より戦略的な資金調達が可能になります。

銀行担当者の審査順序(私の実体験より)

最初に見るのは「当期純利益」(損益計算書の一番下)

銀行員時代、私はまず決算書の一番下の「当期純利益」から見ていました。

なぜ最初に当期純利益を見るのか?

  • 最終的に利益が残っているかどうかが、返済能力に直結するから
  • 赤字の場合、「資金が減っている=返済原資が不足」と判断せざるを得ない
  • 黒字であっても、その中身を詳しく見る必要があるかの判断材料

私の心の声(当時):「まずは結果を見て、詳細分析が必要かどうかを判断しよう」

次に確認する「経常利益」

当期純利益を確認した後、必ず経常利益をチェックしていました。

経常利益を重視する理由

  • 本業+金融取引の成果を示す、会社の実力を測る重要指標
  • 特別損益を除いた「通常の事業活動での稼ぐ力」が分かる
  • 経常利益が安定して黒字なら、多少の特別損失は許容できる

私の心の声(当時):「本業でしっかり稼げているなら、返済は大丈夫そうだ」

「営業利益」で本業の力を測定

経常利益の次は営業利益です。

営業利益のチェックポイント

  • 販売費及び一般管理費を含めた、純粋な本業での収益力
  • 営業赤字が続いている場合、事業の継続性に疑問符
  • 金融収益に依存していない「真の事業力」を判断

私の心の声(当時):「本業が赤字では、いくら預金利息があっても将来が不安だ」

「売上総利益(粗利)」で収益構造を分析

粗利率の変化を注意深く見ていた理由

  • 売上に対してどのくらい利益が出ているかの効率性
  • 粗利率の低下は、仕入コスト上昇や値下げ圧力を示唆
  • 業界平均との比較で競争力を測定

私の心の声(当時):「粗利率が下がっているなら、その原因と対策を聞こう」

最後に「売上高の推移」で安定性を確認

売上高で見ていたポイント

  • 急激な増加よりも、安定した成長を評価
  • 一過性の大型受注に依存していないか
  • 市場環境や競合状況との整合性

私の心の声(当時):「売上が急に増えても、来年も続くとは限らない」

元銀行員として企業にお伝えしたいこと

銀行担当者の本音

  • 最終利益が黒字でも、内容が不安定だと融資は慎重になる
  • 経常利益がしっかり黒字なら、融資後の返済原資として安心できる
  • 売上の大きさより、利益の質を重視する
  • 赤字の場合、新規融資より既存融資の条件変更を検討することが多い

融資を受けやすくするポイント

売上の安定成長:急激な変動よりも持続可能な成長

経常利益の安定性を重視:一時的な特別利益に頼らない収益構造

粗利率の維持・向上:原価管理と適正な価格設定

営業利益の黒字確保:本業での確実な収益力

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