スタッフとの会話形式で解説
スタッフ: 先生、相続した賃貸併用住宅を売却する予定のお客様から相談がありました。空き家特例は使えないですよね?
松野税理士: 原則的にはそうだね。空き家特例には「相続開始直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったこと」という要件があるから、賃貸部分に入居者がいた場合は適用できないんだ。
スタッフ: やっぱりそうですか…。でも、このお客様の場合、相続時点ですでに賃貸部分がすべて空室だったそうなんです。
松野税理士: それなら話は別だよ!すべての賃貸部分が空室であれば、「被相続人が一人で住んでいた」という要件を満たすことになるから、空き家特例の適用を受けられる可能性があるんだ。
スタッフ: そうなんですか!でも、建物全体に適用できるんですか?
松野税理士: いや、そこが注意点だね。適用対象は被相続人が実際に居住していた部分の床面積に対応する敷地のみなんだ。
スタッフ: つまり、按分計算が必要ということですね?
松野税理士: その通り。例えば、建物全体が200㎡で、被相続人の居住部分が120㎡、賃貸部分が80㎡、敷地が300㎡だったとすると…
特例の対象となる敷地は:300㎡ × 120㎡/200㎡ = 180㎡
この部分についてのみ、3,000万円の特別控除が適用できるんだよ。
スタッフ: なるほど!ところで先生、もう一つ質問があります。賃貸借契約が更新できずに、入居者が居座っている場合はどうなりますか?
松野税理士: それは重要な質問だね。契約が終了しているのに退去しない、いわゆる「不法占有」の状態だということだね。
スタッフ: はい、正当な理由なく契約更新を拒否されて、でも出て行かない入居者がいるケースです。
松野税理士: この場合は**「居住していた者がいなかった」という要件を満たさない**と判断される可能性が高いね。たとえ契約上は終了していても、実際に人が住んでいる事実がある以上、税務上は「被相続人以外に居住していた者がいた」とみなされてしまうんだ。
スタッフ: 契約が終了していても、実態を見るということですね。
松野税理士: そうなんだ。税務の判断は「形式」ではなく「実質」で行われるからね。相続開始時点で実際に誰かが住んでいれば、その法的な立場に関わらず、空き家特例の適用は難しいと考えた方がいい。
スタッフ: では、このようなケースの場合、どうすればいいですか?
松野税理士: まずは明渡訴訟などの法的手続きを進めて、完全に退去してもらうことが先決だね。その上で、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡できれば、他の要件を満たしている限り特例の適用を検討できる。ただし、時間との勝負になるから、早めの対応が必要だよ。
スタッフ: 分かりました!お客様には実態をよく確認してから、アドバイスさせていただきます。
松野税理士: そうだね。このような微妙なケースは、個別に詳しく状況を確認してから判断することが大切だよ。
まとめ
- すべての賃貸部分が空室 → 空き家特例の適用可能
- 適用対象 → 居住用部分に対応する敷地のみ(按分計算が必要)
- 契約終了後も居座っている入居者がいる場合 → 実態として「居住者あり」とみなされ、適用は困難
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