2024年から贈与のルールが変わりました。あなたはどちらの制度を選ぶべきか知っていますか?
相続対策として贈与を活用したいとお考えの方は多いと思います。しかし、暦年課税と相続時精算課税制度、どちらを選択すべきかは、ご家族の状況によって大きく異なります。30年の経験を持つ税理士が、実務的な視点から解説いたします。当社によく【お問合せがあったものの回答事例】です。
【2024年改正】暦年課税 vs 相続時精算課税制度 完全比較
項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税制度 |
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非課税枠 | 受贈者1名につき 年間基礎控除110万円 | ①基礎控除:年間110万円 ②特別控除:生涯で2,500万円 |
相続財産への加算 | 死亡前7年以内の贈与額 (改正により4年超の贈与から100万円控除) | 基礎控除110万円を超える贈与額 |
申告の要否 | 年間110万円超の場合に必要 | 基礎控除110万円超の場合は特別控除2,500万円利用のために必要 |
対象者 | 贈与者・受贈者ともに制限なし | 贈与者:60歳以上の父母・祖父母 受贈者:18歳以上の子・孫 住宅取得資金贈与の特例は年齢緩和 |
制度の変更 | いつでも利用可能 | 一度選択すると暦年に戻れない |
おすすめの人 | ・若いうちからコツコツ贈りたい ・多くの人に贈りたい ・相続対策の王道です | ・短期間で大きな額を贈与したい ・将来の相続が基礎控除額以下 ・高齢で相続が近い ・将来値上する財産を贈与したい |
まずは贈与税の非課税について知りましょう
贈与税には、そもそも課税されない財産があります。相続税法第21条の3に規定されている扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるための贈与は以下の通りです。
生活費
日常生活を営むのに必要な費用です。治療費や養育費も含まれます。
教育費
義務教育に限らず、通常必要と認められる学資、教材費、文具費などです。
重要なポイント
生活費や教育費として必要な都度贈与を受けた財産は非課税ですが、これを預金に積み上げると贈与税の対象となります。必要な時に必要な額を受け取ることが重要です。
現金と不動産、どちらが有利ですか?
不動産が有利です。
不動産は時価ではなく相続税評価額で計算されるため、時価の2分の1以下になる場合もあります。この評価額の差が、相続対策において大きなメリットとなります。
子供と孫への贈与、どう選ぶべきか?
子供への贈与の場合
将来法定相続人となる子供には、まず暦年贈与を選択すべきです。
年間110万円の基礎控除があります。相続対策として贈与する場合は、贈与税の税率と相続税の税率を比較して贈与金額を決定します。当事務所では年間300万円から500万円程度をお勧めしています。
ただし、高齢者の場合は注意が必要です。暦年課税は相続時に加算されますので、年齢を考慮して相続時精算課税制度を選択し、基礎控除110万円をうまく利用する提案を行います。
孫への贈与の場合
孫は通常、将来相続人になりませんので、暦年課税を選択します。
相続時精算課税制度の選択も可能ですが、選択すると相続人となってしまい、基礎控除110万円を控除した金額を相続財産に持ち戻すことになります。この場合、相続税の2割加算の対象となります。
また、孫を生命保険金の受取人などとしていた場合も相続人になりますので、孫に贈与する場合には生命保険の受取人になっているか確認が必要です。
子供の住宅購入を支援したい場合
住宅資金贈与の特例を使うとよいです。
非課税の限度額があるので、非課税を超えるような場合は相続時精算課税制度の特別控除などを利用します。子供の自己資金や住宅ローンの借入なども考慮して総合的に判断します。
また、親が子供にお金を貸し付ける方法も提案できます。
実務家としての視点
親の名義で子供の自宅を買ってしまうのも相続税対策としては優秀です。例えば7,000万円で買った場合、将来の相続税評価は家屋は下がります。土地も買値を上回る相続税評価になることは少ないです。
父と母から贈与を受ける場合の注意点
相続時精算課税制度の選択について
相続時精算課税制度は一度選択すると暦年課税に戻ることはできません。
親の相続対策の場合には、まず暦年課税での贈与を検討すべきです。父母の相続財産が相続税の基礎控除以下の場合、相続税の申告が不要な場合は、相続時精算課税制度の選択がよい場合があります。
併用も可能です。
父からは暦年課税による贈与を受け、母から相続時精算課税制度による贈与を受けた場合、暦年課税の基礎控除110万円と相続時精算課税制度の基礎控除110万円の両方を受けることも可能です。
基礎控除の考え方
父母2人から相続時精算課税制度による贈与を受ける場合
基礎控除110万円は2倍になりません。110万円を2人の贈与財産で案分します。案分した結果、基礎控除額を超えた贈与は贈与税の申告が必要になります。
父母2人から暦年課税による贈与を受ける場合
暦年課税の基礎控除は、暦年で受贈者一人につき110万円です。基礎控除を超えると暦年課税の贈与税の申告が必要になります。
併用の可否
暦年課税の基礎控除110万円と相続時精算課税制度の基礎控除110万円は、贈与者が異なる場合には併用できます。贈与税の申告の計算は別々に計算するためです。
2024年改正のポイント
2024年の改正により、暦年課税の相続財産への加算期間が従来の3年から7年に延長されました。一方で、相続時精算課税制度には新たに年間110万円の基礎控除が創設され、使い勝手が向上しています。
暦年課税贈与・加算期間の経過措置
完全に7年分の贈与が加算対象となるのは、2031年1月1日以降に発生した相続からです。それまでは段階的に適用されます。
暦年課税贈与・延長4年間の特例
延長された4年間(4年目から7年目)の贈与については、合計100万円までは相続財産に加算されないという特例があります。この特例により、負担が急激に増加しないよう配慮されています。国税庁の贈与贈与税の改正のあらましをご参照ください。
まとめ
どちらの制度が有利かは、ご家族の資産状況や年齢、将来の計画によって大きく異なります。最適な選択をするためには、専門家である税理士への相談が肝心です。
当事務所では、30年の経験を活かし、相続対策、贈与税、組織再編、M&Aなど、幅広い分野で専門的かつ分かりやすい助言を提供しております。相続時精算課税制度と暦年課税、どちらを選ぶべきかお悩みの方は、ぜひご相談ください。
【2024年改正対応】贈与の選択 暦年課税・相続時精算課税制度なのか | 尼崎の税理士が解説|税理士法人松野茂税理士事務所
事務所概要
税理士法人松野茂税理士事務所
代表税理士:松野 茂
社員税理士:山本 由佳
所属税理士:近畿税理士会 尼崎支部
法人登録番号:第6283号
法人番号:4140005027558
適格請求書発行事業者登録番号(インボイス番号):T4140005027558
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