尼崎の税理士が解説|業績悪化の兆候と経営判断

尼崎の税理士が解説|業績悪化の兆候と経営判断
目次

スタッフとの会話で分かる!中小企業が陥りやすい危険な選択

スタッフA:「所長、業績が良い時の話は勉強になりました。では業績が悪化する時は、どんな兆候があるんですか?」

所長:「それは重要なテーマだ。今日は業績悪化の兆候と、そこから会社が陥りやすい危険な道について話そう」

スタッフB:「危険な道、ですか?」

所長:「そう。善意の社長が、知らず知らずのうちに危険な選択をしてしまう。長年やってきて、そういうケースを何度も見てきたんだ」


売上減少が引き起こす連鎖

所長:「まず基本から。売上が減少すると業績は悪化する。これは中小企業であろうと大企業であろうと万国共通だ」

スタッフA:「当たり前のことですよね」

所長:「でも、中小企業には特有の危険な仕組みが組み込まれているんだ」

中小企業の危険な構造

所長:「思い出してほしい。中小企業は法人税を回避するために、会社の利益が少しだけ出るように役員報酬を設定しているよね」

スタッフB:「はい、前に学びました」

所長:「これが罠なんだ。利益が100万円程度になるように設定しているから、僅かな売上の減少でも赤字になる下地ができあがっているんだよ」

具体例:

  • 売上:5000万円
  • 経費(役員報酬含む):4900万円
  • 利益:100万円

売上が3%減少すると:

  • 売上:4850万円(-150万円)
  • 経費:4900万円(変わらず)
  • 利益:-50万円(赤字転落

スタッフA:「売上が3%減っただけで赤字になるんですね…」

所長:「そう。しかも期中で役員報酬を減額することは、法人税法の規定が邪魔をする。定期同額給与の縛りがあるからね」


社長の苦渋の決断

スタッフB:「じゃあ、社長はどうするんですか?」

所長:「決算期が近づくと、社長は利益を出そうと工夫し始めるんだ」

社長の思考プロセス

ステップ1:現実の直視

  • 「このままだと赤字決算になってしまう」
  • 「銀行からの融資が止まるかもしれない」

ステップ2:銀行対策の必要性

  • 「悪い決算だと融資がスムーズに行われない」
  • 「資金繰りが怪しくなる」
  • 「会社の存続も危うくなる」

ステップ3:苦渋の決断

  • 「前年と同様の利益になるように工夫しよう」
  • 「軽い調整なら問題ないだろう」

所長:「こうして、最終的には前年と同額の利益になるように利益操作が行われることになるんだ」

スタッフA:「利益操作…それって粉飾決算ですよね?」

所長:「その通り。ただし、多くの社長は『これは粉飾だ』という意識がない。あくまで『銀行対策のための軽い調整』と考えているんだよ」


中小企業の粉飾決算の実態

スタッフB:「でも粉飾決算って、犯罪じゃないんですか?」

所長:「上場企業の場合は社会問題となり、会社の存続すら危なくなる。でも中小企業の場合は実務上、何の問題にもならないんだ」

スタッフA:「えっ、そうなんですか?」

所長:「税務署も粉飾決算は見て見ぬふりなんだよ。なぜだと思う?」

なぜ税務署は黙認するのか

所長:「理由は簡単。税務署は税金が取れればいいからなんだ」

税務署の視点:

  • 粉飾で利益を多く見せる → 法人税が増える → 税務署にとってプラス
  • 赤字申告 → 法人税ゼロ → 税務署にとってマイナス

スタッフB:「だから見て見ぬふりなんですね…」

所長:「そう。むしろ税務署は『利益を少なく見せる脱税』を取り締まるのが仕事。利益を多く見せる粉飾は問題視されないんだ」


軽い利益操作から始まる危険な道

スタッフA:「じゃあ、利益操作しても大丈夫なんですか?」

所長:「いや、ここからが本当に危険なんだ。よく聞いてほしい」

社長の計画

当初の計画:

  1. 今期は軽く利益操作して赤字を回避
  2. 翌期の役員報酬を減額
  3. 利益操作を解消させる
  4. 元に戻る

所長:「社長は『翌期には解消するから大丈夫』と考えているんだ」

スタッフB:「計画的なら問題ないんじゃないですか?」

所長:「そう思うだろう?でも実際はそうならないんだ」


粉飾決算の恐ろしい連鎖

所長:「軽い利益操作は翌期に解消されることが多い。財務分析でも発見することは難しく、貸借対照表にも痕跡を軽微にしか残さない」

スタッフA:「じゃあ、翌期には解消できるなら問題ないんじゃ…」

所長:「それが罠なんだ。ここからが本当に危険な話になる」

粉飾決算の恐ろしい連鎖

第1段階:軽い調整から始まる

  • 初めは「銀行対策のため」という正当な理由
  • 在庫を少し多めに計上
  • 売上の計上時期を少し前倒し
  • 「これぐらいなら…」という意識

第2段階:慣れてしまう

  • 翌期に解消できた成功体験
  • 「前もうまくいった」
  • 心理的なハードルが下がる

第3段階:より深刻な時も手を出す

  • 会社の危機に直面
  • 「前回もうまくいったから」
  • より大きな粉飾に手を染める

第4段階:引き返せなくなる

  • 粉飾の規模が大きくなりすぎる
  • 翌期では解消できない
  • 粉飾の上に粉飾を重ねる

所長:「こうして、無理に会社を存続させ、会社をたたむタイミングを見誤ることになるんだ」

スタッフB:「怖いですね…」

所長:「軽い気持ちで始めた利益操作が、会社と社長の人生を狂わせる。長年やってきて、そういう悲劇を何度も見てきたよ」


業績悪化の本当の兆候

スタッフA:「所長、じゃあ私たちは決算書のどこを見れば、業績悪化の兆候が分かるんですか?」

所長:「良い質問だ。実は軽い粉飾は見抜くのが難しいんだけど、いくつかのサインはあるんだ」

業績悪化の兆候チェックリスト

1. 役員報酬の推移

  • 前期と比べて変化がない → 要注意
  • 売上が減っているのに役員報酬が変わらない → 危険信号

2. 在庫の異常な増加

  • 売上が減っているのに在庫が増える
  • 在庫回転率の悪化
  • 架空在庫や評価の操作の可能性

3. 売掛金の増加

  • 売上が減っているのに売掛金が増える
  • 回収期間の長期化
  • 架空売上の可能性

4. 利益率の不自然な安定

  • 売上が変動しても利益率が一定
  • 「前年並み」が続く
  • 調整されている可能性

5. 交際費・経費の急減

  • 大幅なコストカット
  • 本当に苦しい証拠
  • 粉飾でカバーしている可能性

スタッフB:「これらをチェックすればいいんですね」

所長:「そう。特に複数の兆候が重なる場合は要注意だよ」


税理士としての葛藤

スタッフA:「所長、お客様が粉飾しようとしたら、どうするんですか?」

所長:「…これが税理士として一番辛いところなんだ」

スタッフB:「辛い、ですか?」

所長:「社長の気持ちは痛いほど分かる。従業員の給料を払わないといけない、取引先への支払もある、銀行融資も必要だ。『赤字決算は出せない』という気持ちは理解できる」

税理士の役割

所長:「でも私たちの役割は、社長に長期的な視点を持ってもらうことなんだ」

私が伝えること:

1. 短期的な対処より長期的な改善

  • 「粉飾で時間を稼いでも、問題は解決しません」
  • 「本当に必要なのは経営改善です」

2. 早めの決断の重要性

  • 「傷が浅いうちに対処すべきです」
  • 「会社をたたむのも経営判断です」

3. 合法的な選択肢の提示

  • 「役員報酬の減額」
  • 「リスケジュール(返済条件の変更)」
  • 「事業の縮小・選択と集中」
  • 「M&Aによる事業承継」

4. 最悪のシナリオの説明

  • 「粉飾に慣れると引き返せなくなります」
  • 「最後は会社と個人の破産です」

スタッフA:「厳しいことも言わないといけないんですね」

所長:「そう。本当の意味でお客様のためになるのは、耳の痛いことも正直に伝えることなんだ」


正しい業績悪化への対応

スタッフB:「じゃあ、業績が悪化した時、社長はどうすればいいんですか?」

所長:「正しい対応を教えよう」

業績悪化時の正しいステップ

ステップ1:現実を直視する

  • 赤字の事実を認める
  • 粉飾で隠さない
  • 早期発見・早期対処

ステップ2:役員報酬の減額

  • 定期同額給与の規定を確認
  • 適切な時期に減額
  • 合法的に利益を確保

ステップ3:銀行との対話

  • 正直に状況を説明
  • リスケジュールの相談
  • 経営改善計画の提出

ステップ4:経営改善の実行

  • コスト削減
  • 事業の選択と集中
  • 新規顧客の開拓

ステップ5:早めの事業再編判断

  • M&Aの検討
  • 事業譲渡
  • 廃業も含めた判断

所長:「粉飾に手を出すより、こういう正攻法で対処すべきなんだ」


まとめ:善意の社長が陥る罠

所長:「最後にまとめよう」

業績悪化で起こること:

1. 中小企業の構造的リスク

  • 利益を少なく設定している
  • 僅かな売上減で赤字転落
  • 役員報酬の減額は簡単にできない

2. 銀行対策の必要性

  • 赤字決算は融資に影響
  • 資金繰りが悪化
  • 会社存続の危機

3. 善意の利益操作

  • 「軽い調整なら…」
  • 「銀行対策のため」
  • 「翌期に解消すれば…」

4. 危険な連鎖

  • 粉飾に慣れる
  • より大きな粉飾へ
  • 引き返せなくなる
  • 会社をたたむタイミングを見誤る

スタッフA:「善意から始まって、悲劇に終わるんですね…」

所長:「その通り。だから私たちは、お客様が危険な道に入る前に、正しい道を示さないといけないんだ」

スタッフB:「それが税理士の使命なんですね」

所長:「長年やってきて、一番大切なのはお客様を危険な道から守ることだと確信しているよ。時には厳しいことも言わないといけない。でもそれが本当の意味での顧問税理士なんだ」


経営でお困りの経営者の方へ

当事務所では、長年の実務経験をもとに、業績悪化時の正しい対応をサポートしています。

当事務所のサポート:

  • ✅ 業績悪化の早期発見と対策
  • ✅ 役員報酬の適切な減額アドバイス
  • ✅ 銀行との交渉サポート(リスケジュール等)
  • ✅ 経営改善計画の策定支援
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業績悪化、資金繰り、銀行対応でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。早めのご相談が、より多くの選択肢を残します。


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弥生会計・クラウド会計対応|経営改善・事業再生・M&Aの専門家


※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、違法行為を推奨するものではありません。経営判断は必ず専門家にご相談ください。

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