スタッフとの会話で分かる!決算直前でもできる節税と危ない決算書の見分け方
スタッフA:「所長、今期はかなり利益が出そうだという社長から相談を受けました」
所長:「よくあるケースだね。業績予測して役員報酬を決めたけど、社長の予想以上に業績が良かったパターンだろう」
スタッフB:「決算まであと1ヶ月しかないんですが、今からでも節税対策はできますか?」
所長:「もちろん。決算直前でも十分効果のある節税対策はいくつもある。今日は業績が良い時の節税対策を教えよう」
社長の決算対策の基本パターン
所長:「まず、会社の決算スケジュールを確認しておこう」
決算のスケジュール
決算日から2ヶ月以内:
- 法人税の申告書を提出
- 定時株主総会を開催(形式上)
- 今年度の役員報酬や地代家賃等を決定
スタッフA:「毎年このサイクルなんですね」
所長:「そう。そして業績予測して役員報酬を決めるんだけど、予想以上に業績が良い場合は節税対策を行う。社長の行動パターンは大きく2つに分かれるんだ」
社長の2つの選択肢
パターン1:決算対策を行い、法人税の課税を避ける
- 節税対策を実施
- 利益を圧縮して税負担を軽減
パターン2:決算対策を行わず、法人税を支払う
- あえて節税せず
- 収益力の高さをアピール
スタッフB:「どちらが正しいんですか?」
所長:「それは会社の状況次第だね。後で詳しく説明するよ」
決算直前でも効果がある節税対策
スタッフA:「決算まであと1ヶ月で、具体的にどんな節税ができるんですか?」
所長:「決算直前でも十分な効果があるものを挙げるとこうなる」
決算直前の節税メニュー
1. 事前届出確定給与で決算賞与を支払う
- 従業員や役員への賞与
- 事前届出が必要(タイミング注意)
- 大きな節税効果
2. 経営セーフティ共済を年払いする
- 掛金を前納(最大240万円)
- 全額損金算入
- 将来の危機管理にも有効
3. 生命保険を年払いする
- 1年分を前払い
- 保険の種類により損金算入割合が異なる
- 退職金準備にもなる
4. 事務所の地代家賃を月払いから年払いに変更する
- 社長個人の不動産を会社に貸している場合
- 1年分を前払い
- 大家(社長)の了解があれば可能
5. 役員が退職の時期にあれば退職金やみなし退職金を支払う
- 退職金は大きな損金
- みなし退職金(役員の分掌変更)も活用
- タイミングが重要
6. その他いろいろ
- 固定資産の購入
- 修繕費の前倒し
- 在庫の廃棄など
スタッフB:「こんなにあるんですね!」
所長:「そう。ただし、それぞれに注意点があるから、きちんとした税理士に相談することが大切だね」
法人税を多額に支払うことの効果
スタッフA:「所長、さっき『決算対策を行わず法人税を支払う』という選択肢もあるって言いましたよね。なぜわざわざ税金を払うんですか?」
所長:「良い質問だ。実は多額の法人税を支払うこと自体が、強力なアピールになる場合があるんだ」
理想的な会社の姿
スタッフB:「どういうことですか?」
所長:「例えばこんな会社を想像してみて」
超優良企業の例:
- 毎年役員報酬を増額した結果、役員報酬が2000万円を超えている
- 役員報酬の増額や節税対策を施しても、なお利益が出る
- 結果として多額の法人税を支払っている
このような会社の強み:
- ✅ 自社の収益力の高さをアピールできる
- ✅ 取引を有利に行える
- ✅ 銀行からの信用が高い
- ✅ 会社として理想的な姿
スタッフA:「なるほど!『節税しなくても払えるほど儲かっている』というメッセージなんですね」
所長:「その通り。これは本当にうらやましい会社だよ」
無駄に法人税を支払う危険な会社
スタッフB:「じゃあ、法人税をたくさん払っている会社は良い会社なんですね?」
所長:「待って、そうとも限らないんだ。ここが重要なポイントなんだよ」
危険な会社のパターン
法人税は多額に支払っているが、節税対策を行っていない会社は:
特徴:
- 無駄に法人税でキャッシュを放出している
- 無能な経営者である可能性が高い
- 今は業績が良くても危機管理ができていない
- 将来のリスクに備えていない
スタッフA:「同じ『法人税を多く払っている』でも、意味が違うんですね」
所長:「そう。戦略的に払っているのか、無策で払っているのか、ここが決定的な違いなんだ」
危機管理ができている会社の特徴
所長:「優良企業は、法人税を支払いながらも、しっかり危機管理をしているんだ」
危機管理に対応する節税の例:
- 生命保険(退職金準備・経営者保険)
- 経営セーフティ共済(取引先倒産のリスクヘッジ)
- 内部留保の確保
- 設備投資による競争力強化
スタッフB:「ただ払うんじゃなくて、将来への備えも考えているんですね」
所長:「その通り。税金を払いながらも、リスクに備える。これが本当の優良企業なんだ」
危ない会社の見分け方
スタッフA:「所長、逆に危ない会社ってどう見分けるんですか?」
所長:「良い質問だ。実は今期の利益が多額に出ているのに、法人税の支払が少ない会社は危ないんだ」
スタッフB:「えっ、利益が出ているのに税金が少ない?どういうことですか?」
所長:「これは粉飾決算の可能性が高いんだよ」
粉飾決算のメカニズム
所長:「順を追って説明しよう」
ステップ1:過去に赤字があった
- 赤字の会社は損失を7年間繰り越すことができる
- 例:3年前に1000万円の赤字
ステップ2:繰越損失の期限が迫る
- 7年経つと繰越損失が期限切れになる
- 「このままだと損失が使えなくなる」
ステップ3:粉飾決算で赤字を解消しようとする
- 架空の売上を計上
- 在庫を水増し
- 費用を計上しない
ステップ4:見せかけの素晴らしい決算書
- 利益が大きく出ている
- でも実際は利益が出ていないので法人税が少ない
- または繰越欠損金を使って法人税ゼロ
スタッフA:「なるほど!だから利益が出ているのに税金が少ないんですね」
法人税の支払で判断する
所長:「だから私たちは、決算書だけじゃなく法人税を支払っているかも必ずチェックするんだ」
チェックポイント
1. 決算書を確認
- 当期純利益の金額
- 繰越欠損金の有無
- 過去の推移
2. 納税証明書を確認
- 実際に法人税を支払っているか
- 納税額は利益に見合っているか
3. 判断基準
正常な会社:
- 利益500万円 → 法人税約150万円(実効税率約30%)
- 利益と税金のバランスが取れている
危ない会社:
- 利益500万円 → 法人税10万円(または0円)
- 繰越欠損金を使っているか、粉飾の可能性
スタッフB:「決算書と納税証明書、両方見ないとダメなんですね」
所長:「その通り。特にM&Aや融資、取引開始の時は必ず確認するべきだね」
まとめ:業績が良い時の戦略的判断
スタッフA:「所長、結局のところ業績が良い時はどうすればいいんですか?」
所長:「それは会社の状況によるんだ。まとめるとこうなる」
【超優良企業の場合】
状況:
- 役員報酬が2000万円超
- 節税してもなお利益が出る
戦略:
- あえて法人税を支払う
- 収益力の高さをアピール
- ただし危機管理(保険等)は忘れずに
【普通の優良企業の場合】
状況:
- 業績が予想以上に良かった
- 役員報酬は適正範囲
戦略:
- 適度な節税対策を実施
- 経営セーフティ共済や保険で危機管理
- 利益と節税のバランスを取る
【危ない会社の特徴】
状況:
- 利益は出ているのに法人税が少ない
- 過去に繰越欠損金がある
- 節税対策もしていない
リスク:
- 粉飾決算の可能性
- 危機管理ができていない
- 取引・融資は要注意
スタッフB:「会社の状況を総合的に判断するんですね」
所長:「その通り。税理士の仕事は単に節税するだけじゃない。社長のビジョンと会社の状況に合わせた最適な戦略を提案することなんだ」
実務での判断フローチャート
所長:「実際に相談を受けた時は、こういう流れで判断しているよ」
業績好調時の判断フロー
ステップ1:現状確認
- 今期の予想利益はいくらか?
- 役員報酬の水準は適正か?
- 過去の業績推移は?
ステップ2:社長の意向確認
- 税金を払ってアピールしたいか?
- 節税して手元資金を確保したいか?
- 将来のリスクをどう考えているか?
ステップ3:最適な提案
- 超優良企業 → 法人税支払 + 危機管理
- 普通の優良企業 → 適度な節税 + 将来への備え
- 節税志向 → 合法的な節税対策をフル活用
スタッフA:「数字だけじゃなくて、社長の考え方も大切なんですね」
所長:「そう。長年やってきて分かったのは、正解は一つじゃないということなんだ」
取引先の決算書を見る時の注意点
スタッフB:「所長、私たちが取引先の決算書を見る時は、何に注意すればいいですか?」
所長:「良い質問だ。取引先や融資先の決算書を見る時は、こういうポイントをチェックしている」
危険信号のチェックリスト
⚠️ 要注意サイン:
- [ ] 利益が大きいのに法人税が少ない
- [ ] 過去に繰越欠損金がある
- [ ] 在庫や売掛金が不自然に増加
- [ ] 役員報酬が極端に少ない(または多い)
- [ ] 地代家賃や交際費が不自然
- [ ] 納税証明書の提出を渋る
✅ 安心できるサイン:
- [ ] 利益に見合った法人税を支払っている
- [ ] 役員報酬が適正水準
- [ ] 経営セーフティ共済や保険に加入
- [ ] 納税証明書を積極的に提示
- [ ] 過去の決算書が安定推移
所長:「この辺りをチェックすれば、会社の本当の姿が見えてくるよ」
まとめ:業績が良い時こそ戦略的に
所長:「最後にまとめよう」
業績が良い時の3つの戦略:
1. 超優良企業の戦略
- 法人税を支払って収益力をアピール
- ただし危機管理は万全に
- 取引・融資で有利な立場を確保
2. 適度な節税戦略
- 合法的な節税対策を実施
- 手元資金を確保
- 将来への備えも忘れずに
3. 見せかけの利益(危険)
- 粉飾で利益を作る
- 法人税が異常に少ない
- 取引・融資のリスク大
スタッフA:「業績が良い時こそ、冷静な判断が必要なんですね」
所長:「その通り。お客様には、目先の節税だけじゃなく、長期的な視点での最適戦略を提案してほしい。それが私たちの仕事だからね」
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- ✅ 経営セーフティ共済・保険の活用提案
- ✅ 危機管理を考慮した税務戦略
- ✅ 適正な法人税負担のアドバイス
- ✅ 取引先の決算書分析・与信管理サポート
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