10回 尼崎の税理士が解説 | 相続税・空き家特例:被相続人が兄弟と同居していた場合は適用できません。

 尼崎の税理士が解説 | 相続税・空き家特例:被相続人が兄弟と同居していた場合は適用できません
目次

はじめに

相続した空き家を売却する際、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下「空き家特例」)を活用することで、最大3,000万円の特別控除を受けることができます。

しかし、この特例には厳格な要件があり、その中でも特に重要なのが「独居要件」です。

今回は、被相続人が兄弟と同居していた場合に、空き家特例が適用できるかについて解説いたします。

事例の概要

被相続人は生前、実の兄弟と一緒に自宅に住んでいました。

被相続人が亡くなった後、相続人がこの空き家となった自宅を売却する際、空き家特例の適用を受けることはできるのでしょうか。

空き家特例の「独居要件」とは

空き家特例の適用を受けるためには、対象となる家屋が「被相続人居住用家屋」に該当する必要があります。

国税庁タックスアンサーNo.3306によれば、「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるものとされています。

  1. 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  3. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

この3番目の要件が、いわゆる「独居要件」です。

独居要件の法的根拠

この独居要件は、租税特別措置法第35条第3項および租税特別措置法施行令第23条に規定されています。

条文では、被相続人居住用家屋の要件として、**「相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと」**と明確に定められています。

本事例における適用の可否

被相続人が兄弟と同居していた場合

本事例では、被相続人は生前、実の兄弟と同居していました。

この場合、相続開始の直前において、被相続人以外に「兄弟」が居住していたことになります。

したがって、上記の独居要件を満たさないため、空き家特例を適用することはできません

独居要件の趣旨

なぜ、このような厳格な独居要件が設けられているのでしょうか。

空き家特例は、「空き家の発生を抑制する」という政策目的のために創設された制度です。被相続人が一人で暮らしていた家屋が、相続後に空き家となることを防止するための特例なのです。

被相続人が家族や親族と同居していた場合、相続後もその家族が引き続き居住する可能性が高く、必ずしも空き家になるとは限りません。そのため、独居要件が設けられているのです。

独居要件が適用されないケース(例外)

ただし、以下のような場合には、独居要件の例外が認められています。

老人ホーム等に入所していた場合

被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合、一定の要件を満たせば、老人ホーム等への入所前まで被相続人が一人で居住していたことを条件に、空き家特例の適用が可能です。

この場合、被相続人が老人ホーム等に入所してから相続開始まで、自宅が以下の状態であったことが必要です。

  • 被相続人の家財道具等の保管に使用されていたこと
  • 事業、貸付、被相続人以外の者の居住の用に供されていないこと

同居していた親族の範囲

独居要件における「被相続人以外に居住をしていた人」には、以下のような者が含まれます。

  • 配偶者
  • 子や孫などの直系卑属
  • 父母や祖父母などの直系尊属
  • 兄弟姉妹
  • その他の親族
  • 親族以外の第三者

つまり、被相続人以外に誰か一人でも同居していた場合には、その人が親族であろうとなかろうと、独居要件を満たさないことになります。

実務上の注意点

一時的な同居の場合

たとえ短期間であっても、相続開始の直前に被相続人以外の者が居住していた場合は、独居要件を満たさないとされる可能性があります。

住民票の記載

独居要件を満たすかどうかは、住民票の記載だけでなく、実態に基づいて判断されます。市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」の申請時に、実態を証明する資料の提出が求められることがあります。

まとめ

空き家特例を適用するためには、相続開始の直前において、被相続人が一人で居住していたこと(独居要件)が必要です。

被相続人が兄弟、配偶者、子、その他の親族や第三者と同居していた場合は、この要件を満たさないため、空き家特例を適用することはできません。

この独居要件は、租税特別措置法第35条第3項および同法施行令第23条に明確に規定されており、例外は老人ホーム等に入所していた場合など、限定的な場合に限られます。

相続不動産の売却を検討される際は、このような要件を事前に確認し、適用の可否を慎重に判断することが重要です。


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