同族会社における効果的な節税手法として、家族を非常勤役員に登用し、適正な報酬を支払うことで所得を分散させる方法があります。しかし、税務署の厳しいチェックもあるため、適切な知識と準備が不可欠です。
非常勤役員報酬による節税のメリット
1. 所得分散効果
社長一人で報酬を受け取るよりも、家族に役員報酬を分散させることで、全体の税負担を軽減できます。
2. 社会保険料の節約
非常勤役員の場合、社会保険への加入義務がないため、社会保険料を節約することも可能です。
税務署が注目する4つのポイント
税務署が非常勤役員の報酬を否認する際に争点となるのは、以下の4点です:
1. 役員としての自覚
本人に役員としての責任感と自覚があるかどうか
2. 報酬の実際の支払い
報酬が確実に本人に支払われているかどうか
3. 職務の実行
実際に役員としての職務を行っているかどうか
4. 報酬額の妥当性
支払われる報酬の金額が職務内容に見合った適正な額かどうか
実際の裁決事例から学ぶ
国税不服審判所の事例では、母親を非常勤役員として月額300万円(年額3,600万円)の報酬を支払っていたケースがありました。
結果:
- 母親の具体的な職務内容が不明確
- 税務署により月額15万円に減額査定
- 285万円分が「不相当に高額な部分」として否認
この事例から、職務内容の明確化と報酬額の適正性がいかに重要かがわかります。
適正な報酬額の目安
一般的な水準
非常勤役員の報酬の平均的な月額は15万円程度とされています。
金額設定の考慮要素
- 常勤役員の報酬水準
- 従業員の給与水準
- 非常勤役員の具体的職務内容
- 会社の規模と業績
成功のための重要なポイント
1. 明確な職務内容の設定
非常勤役員に対して具体的な職務を割り当て、その内容を明文化しておきましょう。
2. 定期同額給与の原則
役員報酬は定期同額給与として設定し、期中での変更は避けましょう。
3. 職務実行の事実の記録
実際に職務を行っている証拠を残しておくことが重要です。
4. 報酬額の合理的根拠
報酬額を決定した理由を明確にし、同業他社との比較なども参考にしましょう。
まとめ
非常勤役員への報酬支払いによる節税は、適切に実施すれば効果的な手法です。しかし、税務署の否認リスクを避けるためには、職務内容の明確化と適正な報酬額の設定が不可欠です。
ご相談は専門家へ 同族会社の節税対策については、税務の専門家にご相談いただくことをお勧めします。当事務所では、豊富な経験を基に、お客様に最適な節税プランをご提案いたします。
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