はじめに
被相続人が居住していた空き家を相続した場合、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下「空き家特例」)により、最大3,000万円の特別控除を受けることができます。
しかし、この特例の適用には細かな要件があり、特に「家屋と土地の両方を相続により取得すること」という要件を見落とすと、特例が受けられないケースがあります。
今回は、実務上注意が必要な事例をご紹介いたします。
事例の概要
被相続人が所有していた自宅(空き家)について、以下のような相続が行われました。
- 相続人:AさんとBさんの2名
- 被相続人の所有割合:家屋2分の1、土地100%
- Aさんの取得状況:相続により家屋2分の1、土地2分の1を取得
- Bさんの取得状況:
- 家屋2分の1は生前に父(被相続人)から贈与により取得済み
- 相続により土地2分の1のみを取得
空き家特例の重要な要件
空き家特例の適用を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 被相続人が居住していた家屋であること
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物でないこと
- 相続により被相続人居住用家屋及びその敷地を取得したこと
- 相続時から譲渡時まで事業・貸付・居住の用に供していないこと
- 譲渡対価の額が1億円以下であること
この中で、特に重要なのが「家屋と敷地の両方を相続により取得すること」という要件です。
本事例における適用の可否
Aさんの場合
Aさんは相続により家屋2分の1と土地2分の1の両方を取得しています。したがって、他の要件を満たせば空き家特例の適用を受けることが可能です。
Bさんの場合
Bさんは以下の状況にあります。
- 家屋2分の1:生前贈与により取得(相続による取得ではない)
- 土地2分の1:相続により取得
Bさんは相続により土地のみを取得しており、家屋については相続による取得ではありません。空き家特例は「家屋と敷地の両方を相続により取得すること」が要件となっているため、Bさんは要件を満たさず、特例の適用を受けることはできません。
実務上の注意点
生前贈与と相続の組み合わせに要注意
相続対策として生前贈与を活用することは一般的ですが、空き家特例の適用を検討する場合は、贈与と相続の組み合わせによって特例が受けられなくなる可能性があります。
まとめ
空き家特例の適用を受けるためには、相続により家屋と土地の両方を取得することが必要です。
生前贈与により家屋または土地の一方のみを取得し、相続で残りの一方を取得した場合は、この要件を満たさないため特例の適用を受けることができません。
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