Q1. 医療費控除の基本的な計算方法を教えてください
スタッフ: 先生、確定申告の季節になると医療費控除の相談が多いんですが、基本的な計算方法を改めて教えてください。
先生: はい、医療費控除の計算は以下の流れになります。
医療費控除の計算手順
- 家族全員の1年間の医療費を集計
- 生命保険金や健康保険からの給付金を差し引く
- 10万円(または所得の5%の少ない方)を差し引く
スタッフ: 2番目の「保険金を差し引く」というのがポイントですね?
先生: そうです。ここに多くの人が知らない落とし穴があるんです。
Q2. どんな保険金でも差し引かないといけないんですか?
スタッフ: 保険金をもらった場合は、全部医療費から差し引かないといけないんでしょうか?
先生: 実は、そこが大きな誤解なんです。税務署の職員や税理士でさえ間違えることがあります。
スタッフ: えっ、そうなんですか?
先生: 医療費から控除する保険金は、「医療費を補填するための保険金」に限定されるんです。すべての保険金ではありません。
Q3. 「医療費を補填する保険金」って具体的には何ですか?
スタッフ: 「医療費を補填する保険金」と「そうでない保険金」の違いを教えてください。
先生: 所得税法基本通達73-9に明確に書かれているんです。
医療費を補填する保険金に該当「しない」もの
先生: 以下のようなケースは医療費控除から差し引く必要がありません:
- 死亡したことに基因して支払われる保険金
- 重度障害になったことに基因して支払われる保険金
- 療養のために仕事ができないことに基因して支払われる保険金
スタッフ: つまり、医療費の実費を補償する目的でない保険金は差し引かなくていいということですね?
Q4. がん保険の場合はどうなりますか?
スタッフ: それでは、がん保険の場合はどう判断すればいいんでしょうか?
先生: がん保険には大きく2つのタイプがあります。
タイプ①:入院・通院日数に応じた保険金
先生: 入院や通院の日数に応じて支払われる保険金は、実際の医療費を補填する目的なので、医療費から差し引く必要があります。
タイプ②:がん診断時の一時金
先生: がんになったことによって支払われる生存保険金(診断給付金など)は、医療費を補填する金額ではありません。
スタッフ: ということは、がん診断で100万円もらっても、医療費控除の計算では差し引かなくていいんですか?
先生: その通りです!これが多くの人が知らない重要なポイントなんです。
Q5. なぜこの誤解が生まれるんでしょうか?
スタッフ: でも、なぜこんなに誤解されているんでしょうか?
先生: いくつかの理由があります:
誤解が生まれる理由
- 「保険金は全部差し引く」という思い込み
- 税務署職員や税理士でも詳細を知らないケースがある
- 書籍にもこの詳細が書かれていることが少ない
- 通達の内容が一般には知られていない
スタッフ: 専門家でも間違えることがあるなんて…
先生: そうなんです。だからこそ、正しい知識を持つことが重要なんです。
Q6. 実際の事例で教えてください
スタッフ: 具体的な事例で教えていただけますか?
先生: はい、こんなケースを考えてみましょう。
事例:田中さんのケース
- 年間医療費:50万円
- がん診断給付金:100万円(がんと診断された時点で一括支給)
- 入院給付金:10万円(入院日数×日額で計算)
間違った計算 50万円 – 100万円 – 10万円 = マイナス → 医療費控除なし
正しい計算 50万円 – 10万円(入院給付金のみ) – 10万円 = 30万円の医療費控除
スタッフ: 30万円も控除額が変わるんですね!
Q7. 注意すべき点はありますか?
スタッフ: この知識を活用する際の注意点はありますか?
先生: いくつか注意すべき点があります:
注意点
- 保険契約の内容をしっかり確認する
- 支払事由を明確にする(診断給付金なのか、医療費補填なのか)
- 税務署で質問された場合は、通達73-9を引用できるよう準備
- 不安な場合は専門家に相談する
スタッフ: 通達の条文を知っておくことが大切ですね。
先生: その通りです。根拠を示せることが重要です。
Q8. どうして一般に知られていないんでしょうか?
スタッフ: こんなに重要な情報なのに、なぜ一般的に知られていないんでしょうか?
先生: 実は私も書籍でこの内容を見たことがありません。多くの人が間違って申告していると思います。
スタッフ: それは問題ですね…
先生: だからこそ、正しい情報を発信することが私たち税理士の役割だと思っています。
まとめ
先生: 今日のポイントをまとめると:
- すべての保険金が医療費控除から差し引かれるわけではない
- 「医療費を補填する保険金」のみが控除対象
- がん診断給付金は医療費を補填する保険金ではない
- 所得税法基本通達73-9が根拠条文
- 専門家でも知らないケースがある
- 正しい知識で大幅な節税効果が期待できる
スタッフ: ありがとうございました!これは本当に知らない人が多そうですね。正しい情報をお客様にもお伝えしたいと思います。
先生: ぜひそうしてください。ただし、個別のケースは保険契約の内容によって異なるので、不明な点があれば必ず確認するようにしてくださいね。
医療費控除や確定申告に関するご相談は、税理士法人松野茂税理士事務所までお気軽にお問い合わせください。正しい知識で適切な節税をサポートいたします。